プレイ時間:30時間〜
プレイ時間:30時間〜
再ログインして中央広場が視界に広がる。
22時が近いけれど、出入りする人は多い。新規のプレイヤーではなく、ベテラン風のプレイヤーが多い。どういう理由があるかは、すぐにはわからない。
歩きながら、そういえば他のプレイヤーの衣装は様々だな、と気付いた。
武器のことじゃなくて、純粋な服装のことだ。
セントラルには衣類を扱う商店がいくつかあるし、そういう場所で服が買えることは僕も知っている。
でも服は防御力を向上させない、全くの飾りだし、何より古びることがない。
だから僕が今、着ている初期服のまま押し通すこともできる。
しかし、うーん、何か、違うのかな。
鉄鎧で少しは隠れているし、それで格好も付いているけど。
服の問題を脇に置いて、僕はデギオン武具店に足を踏み入れた。
「おお、来たか、坊や」
本を読んでいるアバターを見て、やっぱり服装かな、などと思う僕である。
デギオンのアバターは、今日は和風な服装をしている。初めて見る服装だ。着流しというのだろうか。
そのデギオンが席を立ち、目の前にやってくると、「騎兵槍を、素材系アイテムに変えていないな」と首を傾げた。
ああ、そうか、忘れていた。
「まぁ、俺でもできるが、時間が必要だな。5分くらいか。余裕あるかい、坊や?」
あります、と申し訳ない思いでテキストを打つ。
騎兵槍を武装から外して、デギオンに手渡すと、彼の手元に前も見た格子の球体が浮かび上がる。
彼がそこに騎兵槍を突っ込むと、大きさの比率を無視して、格子の中に槍が消えた。
「レベル10になったな、おめでとう」
こちらを振り向いたデギオンが笑みを見せる。その表情にこそばゆいものを感じて、現実では少し頬が上気したけど、それはアバターには反映されない。
「お二人のお陰です。ありがとうございます」
これからアカリアも来るぞ、と言ってデギオンが僕のアバターの肩を叩いた。
5分はあっという間に終わり、槍は素材系アイテム五つに分割された。一つ一つが球体だけど、大きさが違う。
デギオンが新しい球体を取り出し、それと、槍から取り出した素材のいくつかを格子の球に戻す。
「終わるのは15分後だな」
その言葉と同時に、鈴が鳴る音がして、アカリアが現れた。
「遅れてごめん。ちょっと寄り道した」
「別にいいさ。こちらも今、仕込んだところだ」
流暢にボイスチャット同士でやりとりしている二人が、急に羨ましくなった。
僕もボイスチャットを使うべきだろうか。
でも二人は、僕の声やしゃべり方に、どういう感じを受けるだろう。
笑われるだろうか。
それとも、自然と受け入れてくれるのか。
答えが出ないまま、僕は二人が会話するのを眺めていた。
(続く)




