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三月二十五日(月曜日) (1)

三月二十五日(月曜日) (1)



 この日は大洋高校で入学生向けのガイダンスだった。

 初めて制服を着て外へ出たけど、変な感じだった。ネクタイを何度も確認しながら、買ったばかりのデイバックを背中に、自転車で駅まで行った。駐輪場に止めて、切符を買って電車に乗った。

 田舎なので、Suicaが使えない。まあ、あまり憧れもないけれど。

 一駅だけで降りて、あとは歩きになる。結構な坂を25分は登らないといけない。車が通れるようにアスファルトで舗装されているし、途中には住宅が建っていたりするけど、辺鄙な場所だ。

 僕が歩いているように、真新しい制服の男子女子が何人も同じ方向へ進んでいく。

 みんな新入生で、一人きりが多い。

 まだ誰も友達を作っていないんだと、変に安心したりした。

 山の上にある学校の校舎は古びている。どこかで声が聞こえ、野球部か何かがすでに練習をしているらしい。春休みはないのだろうか。

 案内の紙を持った教師らしい男性が何人かいて、その紙の矢印に従って昇降口に辿り着く。

 上履きは制服と一緒に買っていたので、それに履き替えた。学校指定の白い上履きだ。

 教室に辿り着くと、半分くらいは埋まっていた。もう親しげに会話しているグループもある。同じ中学校の出身かもしれない。

 その中で目立つのは、金髪の少年で、どこかで見たことがあると思ったら、つい数日前に家の近くの書店にいた少年だ。

 既に四人ほどの男子と二人の女子の集まりの中心になっている。

 あまり関わらないようにしよう……。

 自分の席についてみると、あいうえお順で席が決められたようで、僕はドアから一番遠い窓際の列の、一番後ろだった。苗字がおから始まるから、ありそうなことだ。

 前の席にいるのは女子で、でもまだ名前は知らない。

 右の隣には、本を読んでいるメガネをかけた細身の少年がいた。こちらを気にするようでもなく、本を読んでいる。一心不乱というより、話しかけるな、という感じだ。

 ドアが開き、がっちりとした体つきの生徒が入ってきて、一瞬だけ視線を集め、すぐに興味の対象ではなくなる。

 僕は彼にも見覚えがあった。

 コンビニにいた、エプロンをつけて手伝っている風の少年だ。

 同い年とは思えない体格と落ち着きの雰囲気だった。

 彼は僕の横の本を読んでいる少年の向こうの席に腰掛けた。



(続く)

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