プレイ時間:25.5時間〜
プレイ時間:25.5時間〜
訓練施設に一時間もこもっていて、しかしその一時間は今までの僕の成長の中で最大のものだった。
訓練施設からアカリアの店へ行き、武器の耐久度を戻してもらった。
「レベル9なら、武器を作り直さなくちゃな」
デギオンがそんなことを言って、わずかに首をひねって時計を確認したようだ。
「今、17時半か。二人は夕食はどうなる。現実の、だが」
「18時からです」
僕がそうテキストを書くと、僕もだよ、とアカリアが同意する。
「それじゃあ、風呂はどうなる? 何時だ?」
「20時くらいです」
「僕は夕飯の後だね」
オーケー、オーケーとデギオンが不自然なモーションを取らせる。何かをなだめるような動きだろうか。
「21時に草原へ繰り出すとしよう。あそこにしかない稀少アイテムが欲しい」
「またあれか。あれは面倒なんだってば」
アカリアは何かを知っているようだけど、僕は何も知らない。
二人の間で視線を行ったり来たりさせたからだろう、デギオンが不敵な笑みをアバターに取らせる。
「心配するな、坊や。俺とアカリアがいれば、まず何も困難はない」
本当かなぁ……。アカリアが黙っているのも気になる。
「とりあえず、坊やは生命力と体力を回復させろ。約束まで三時間以上あるから、適当な宿で50ダラーも払えば問題ないな。金には困っているかい?」
「困ってないです」
そうテキストを打ちながら、いつ二人に10万ダラーの話をするべきか、ちょっと考えた。
でも二人とも、特に気にした様子ではない。
パーティのメンバーの間ではいくつかの項目の数値を共有できて、もちろん、非表示も選べる。僕の都合ではなく、デギオンもアカリアも、それぞれの所持しているダラーの総額は隠している。僕もその設定を受けていて、非公開だ。
あるいはそれがマナーなのか、二人にも秘密にしたい何かがあるのか、それも僕には不分明だった。
誰からともなく声を掛け合って解散になり、僕は言われた通りに宿へ向かい、50ダラーを支払ってログアウトした。
トップ画面が表示され、カウントダウンと現実時間を確認して、21時前にはもう一度、ログインできるのを理解した。
ステータスを見る気になり、レベル9がいかほどか、確認した。
生命力が600、体力が550、筋力が310、回復力が250、敏捷性が950。
最初と比べると隔世の感があるけど、こうなるとデギオンやアカリアはとんでもない数値になっているだろう。
何せ僕のレベルはまだ一桁で、二人はたぶん、三桁のレベルだ。
しかし今は、とりあえずこれで良しとしよう。
僕はスマートフォンをヘッドギアごと外して、もう一度、時計を確認した。
部屋の掛け時計がかすかに滲んで見えた。目が疲れている。
(続く)




