プレイ時間:21時間〜
プレイ時間:21時間〜
デギオン武具店から三人で移動した先は、料理屋街の一角にある中華風の店だった。
NPCの店ではなく、人間のプレイヤーの店だという。しかし応対するのはNPCで、プレイヤー自身は料理を作っている。
席について料理を食べても味も食感も何もないけど、とりあえずアバターの体力が回復する。生命力もわずかに回復し、あとはそもそものステータスの回復力で、時間とともにゲージが満たされていくことになる。
僕がプランツロードと戦っている間、デギオンとアカリアはプランツスレイブを撃退していて、今の席上で、それぞれの収穫が確認された。
千年樹の根がだいぶドロップされていて、二人はボス戦の間だけでも40個ほどを手に入れていた。
あそこに至るまでの間に、古い根も千年樹の根も手に入れていて、合算するとダラーで9000ダラーになるようだ。
「僕の分のダラーで、アカリアさんに僕の武器を修繕してもらえますか?」
そう提案すると、さっとアカリアが手を振る動作をした。
「パーティの仲間には無料で仕事をすることにしているから。それほどダラーにも困っていないし」
「甘えておけよ、ハルハロン」
デギオンがそう言ってくれるので、甘えることにした。
「二人の武器の修繕はいいのですか?」
礼儀かと思って二人を確認すると、それぞれに軽く頷いている。
「あの程度のモンスターを相手にして、耐久度が落ちるような武器じゃないな。アカリアも、俺も」
「二人はどこで戦っていたのですか?」
二人が視線を交差させ、すっと離す。
そして何も言わない。
聞いちゃいけないことだったかな。
「忘れてください、すみません」
そうテキストを入力すると、別に気にもしていない、とアカリアが小さな声で言う。
「この男は新月騎士団の三番隊長だった。私はその副官」
新月騎士団、というのは前にアカリアが口にしていた。
でもすっかり忘れていて、情報を調べていなかった。これから暇なときに調べよう。
「第90階層くらいでやっていたな」
お茶を飲む動作をしながら、デギオンが言う。
第90階層……?
「トップランカーじゃないですか」
そうテキストにすると、今じゃ落ちこぼれさ、とデギオンが苦笑いをアバターにさせた。
「今はただの、第1層の武具店の店主だ。今の方が気ままでいいがね」
「アカリアさんはデギオンと一緒に抜けたのですか?」
抜けちゃいないよ。
アカリアがやっぱり不機嫌そうな声で応じる。
「そこの男だって、抜けてはいない。ただ、距離を取っただけ」
それは新月騎士団にある掟みたいなものによるんだろうか、と勝手に想像したけど、実際はわからない。
会話がデギオンとアカリアによる、僕を鍛える効率的な手法に移り、二日後に訓練施設で会うことになった。今日は金曜日だから、日曜日に会うことになる。
解散になった時には、僕のアバターの生命力、体力はともに全回復していた。
(続く)




