プレイ時間:17.75時間〜
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パーティというものは知っていたけど、いつか誰かに誘われるだろう、と淡い期待があった。
それは僕がレベルを上げて、どんどん世界樹の上に向かって進む中で、自然とそうなる、という、まぁ、期待というか、理想だった。
その時の僕は結構、頼りになるプレイヤーで、信頼できる仲間と一緒に強敵に挑む、みたいなイメージだった。
それがレベル3で誘われるなんて。
ただ、不安も急に沸き起こってきた。
目の前の少年店員は間違いなく僕より、段違いに高いレベルだ。
僕の返事に、アカリアはパーティを組むかどうか、確認する手続きをしてくれた。
目の前に「アカリアとパーティを組みますか?」という表示が出る。
だいぶ緊張しながら、それを選択すると、急に、ああ、とアカリアが声を発したので、こちらが驚いた。それこそ現実世界で椅子から飛び上がるほど。
「私は新規のパーティを設定したけど、名前はどうしようか」
名前。
「あなたが決めてください」
今までパーティを組むことを夢見ながら、名前を決めることまでは考えなかった。
迂闊、というか、あまりにも遠い先のことと思っていたこともある。
「どんなのがいいですか?」
確認すると、アカリアがちょっと頭上を見上げるそぶりをした。これはモーションではなく、彼が現実でHMDか何かをつけた頭で頭上を見たようだ。
「よくあるのは、なんとか団、とか、なんとか隊、とか、なんとか結社、とかかな。外国人はまた別だけど」
団、隊、結社……。
「アカリアさんは、どんなパーティに属しているんですか?」
少し答えづらそうな沈黙の後、ささやくような声があった。
「新月騎士団、それと、初心者を助ける会、の二つかな」
思わず笑い声が漏れてしまったけど、ボイスチャットがオフで助かった。
平静を装って「初心者を助ける会、って、本当ですか?」と質問してみた。からかうつもりもなく、本当に気になったのだ。
顔をしかめたアカリアが声も不機嫌そうに答える。
「デギオンだって入っているよ、あそこには」
デギオンが? そういう知り合いだろうか。
「じゃあ、僕たちのパーティの名前は、ニューカマーズ、にします」
返事はすぐにはないけど、別にいいか、と呟いて、何かを手続きしたアカリアがこちらに笑みを見せる。
すると僕の眼前にテキストが現れ、「ニューカマーズに登録しました」とそこにはある。
画面の隅の表示をチェック。
パーティメンバーは僕とアカリアだけだ。
「いっそのこと、デギオンも巻き込もうか」
いきなりそう言った少年に、思わずじっと視線を向けるけど、少年はそっぽを向いて急に話し始めた。
僕ではない誰かに話しているのだ。
本当にデギオンと知り合いなんだ。
(続く)




