プレイ時間:17.5時間〜
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椅子とテーブルが用意されて、お茶とお菓子も出てきた。
少年店員が目の前の席に座り、僕も空いている椅子を指定し、座る、と選ぶ。アバターが静かに腰かけた。
「あなた、名前は?」
そう訊ねられ、ハルハロンです、とテキストを打ち込む。
「僕はアカリア。あの武器はデギオンの作だってステータスにあったけど、どういう関係ですか?」
少し考えて、慎重にテキストを打った。
「たまたま、低レベルプレイヤー向けの店で、知りました」
ため息をついてみせる少年が次には天を仰ぐ。
「まだそんな慈善事業をやっているのか。まあ、人のことも言えない立場だけど」
僕が黙っているのは、何か、本当に些細なものが引っかかるのだ。
このアバターの声が、どこかで聞いたような声だけど、思い出せない。
もしかして芸能人だろうか。テレビか何かで声を聞いた、とか。
そうとも思えないけど。
僕の逡巡も知らず、少年は手元のお茶の入ったカップを手に取る。
僕も場をつなぐために、カップをカーソルで指定し、表示された飲む動作を選ぶ。
「ああ、持って帰ってもいいですよ。少しは体力が回復しますから。水筒、持ってますか?」
水筒というのはアイテムの一つだけど、僕はまだ飲料の形をした回復系アイテムを使ったことがなかった。それにもうボタンを押していて、自然とアバターがお茶を飲んでいた。
僕のせっかちさがおかしいのか、くすくすと笑いながらアカリアが言う。
「帰りがけにサービスで差し上げます。お菓子の方は持ち帰ってください、焦らずに」
現実世界の僕は冷や汗をかいているけど、アバターは平然としている。とりあえず、頷くモーションを選び、それからお菓子、というか、パウンドケーキみたいなものを今度は「食べる」ではなく「包む」という項目で、ちゃんと手元に確保した。
「あの騎兵槍は」
アカリアがお茶を飲む間に声を発する。器用で、優雅なアバターの操作だった。
「いつから使っているのですか? ハルハロンさん、レベルは10はありますよね。それがなんで、まだセントラルに?」
さすがにポカンとしてしまった。
レベルが10、って、まだ3になったばかりだ。
いやいや、まずは僕のステータスを開示するべきなのかな。こういう時の対処法が、正直、分からない。
現実世界であたふたしている僕と裏腹に、アバターは平然としたものだ。正確には固まっているわけだけど。
「僕、ちょっとあなたに興味があります。デギオンとのつながりもありますし。誰かとパーティ、組んでますか?」
ぱ、ぱ、パーティ!
一瞬、頭の中が真っ白になり、次にどうにか悠然としている風を装って、しかし僕が全く答えないのでアカリアが首を傾げているところに、どうにか返事をした。
「組んでません。組んでもらえますか」
にっこりとアカリアのアバターが笑みを見せる。
(続く)




