プレイ時間:17時間〜
プレイ時間:17時間〜
職人街を歩いて、店頭のマークを確認する。
金槌のようなマークが修繕職人の店の示しているらしい。それに武具店と同様、数字の表示がある。
数が大きいので、レベルではなく、その店をやっている職人の練度のことだろう。
しかしなかなか、練度30を超える店がない。
もしかして一つ上の階層の街に行く必要があるのだろうか。
デギオンに相談するべきかな。
そんなことを思っていると、やっと視界に「35」の数字のある店が目に入った。他が5や10であることもあってか、店構えは立派だった。
店名は「メンテナンス・メディスン」。どういう意味だろう。
とりあえず、中に入る。
NPCではなく、少年のようなアバターが近づいてくる。他に客はいなかった。
「いらっしゃいませ。何をご所望ですか?」
澄んだ高い声をしている。デギオンと共通した、高レベルを感じさせる余裕のある発声だった。
僕はテキストで武器のメンテナンスを依頼した。
「ではこちらへ」
手を伸ばす動作は形だけで、目の前にはテキストで「騎兵槍キツツキを鑑定してもらう」という表示があり、僕はそれを選択した。
目の前に槍が現れ、それを少年の店員が手に取る。
わざとだろう、顔をしかめるそぶりをする。
「これはあの男の作品じゃないか」
あの男? デギオンを知っているのだろうか。
モーションを取らせることを忘れて、ぼんやりと店員のアバターを見ていると、彼は器用に片方の眉を持ち上げるモーションをして、首を振った。
「あの男はまだこんなところで商売しているわけ?」
急に砕けた口調になるのに、やや驚きながら、どう返すべきか逡巡する。こういう時もボイスチャットなら間を繋げるけど、テキストを打つとなるとそうはいかない。
どうやらこちらのテキストでの会話の不自由に気づいたらしく、店員は一度、強く頷いた。
「料金は650ダラーほどになりますけど、よろしいですか?」
650ダラーか、さっきの収入よりも大きいけど、背に腹は変えられない。
「よろしくお願いします」
そうテキストを入力すると、店員が「三十分ほどお時間をいただきます」と言った。
総合フォロー商会は即座に修繕したけど、ここではそうはいかないのか。
こちらが黙って動きを止めたからだろう、店員がもう一度、頷いた。
「ビギナーの方ですね。プレイヤーが経営する修繕職人の仕事は時間が必要です。どうされますか? 650ダラー、払えます? 後払いでもいいですよ」
ここ以外では受け付けてもらえそうもないし、僕は今払うことにして、650ダラーを支払う入力をした。
店員のアバターがさっと手で騎兵槍キツツキをなぞると、それが消える。
「じゃ、三十分ほど、お話しでもしましょうか」
店員の言葉に、もしそんなモーションがあれば、目を白黒させたいところだった。
お話し?
(続く)




