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八月二日(日曜日) (1)

八月二日(日曜日) (1)



 朝、目が覚めて体が痛いような感覚があった。

 昨日、午後にデギオンとアカリアの猛特訓を受け、夕食後にお風呂に入ってから、またログインして二人との訓練が再開された。

 結局、深夜になって開放されて、レベルは100を超えて、108に達した。

 明日は少しモンスター相手にやるとしよう、とデギオンが提案して、アカリアも同意して、それで昨日は解散になった。

 ヘッドギアを外した時、全身が重くて、両手はコントローラーを激しく動かしすぎたようで、今にも指がつりそうだった。

 相当に疲労したことを証明するようにベッドに横になって明かりを消すと、すぐに眠ってしまった。

 起きた時の方が疲労が濃いとは、体の芯から僕も疲れているようだ。

 ベッドに横になったまま両手をほぐし、上体を起こして肩を回した。

 まったく、これがゲームの結果とは、我ながら情けない。

 時計を確認。六時半前だった。今日も秋穂はラジオ体操をするだろう。

 一階へ降りると、まさに秋穂がラジオを手に庭へ出るところだった。

 僕はなんとなく室内で、聞こえてくるラジオの音に合わせてラジオ体操をした。動きがわからないところは、秋穂の見よう見まねだ。

 ラジオ体操が終わると秋穂が戻ってくる。

「どういう気まぐれ?」

「体をほぐしたくてね」

「例のゲームのせいで? 学生の本分は勉強だ、という年寄りくさいことを言いたい気分ね」

「確かに年寄りくさい」

 鼻を鳴らして、秋穂はラジオを定位置に置きに行った。

 僕が食卓に着くと、すぐに秋穂も来る。父さんも遅れてやってきた。

「何か室内でドタバタしていたようだけど?」

 父さんに言われて、ラジオ体操の話をすると「できれば外でやってくれよ」と苦笑いで言われた。たぶん、ジャンプする部分があってうるさいんだろう。

 母さんが配膳をして席に着いてから、一斉に「いただきます」と言って食事になった。

 父さんも母さんもまだ東京旅行のことを聞きたがるけど、昨日で十分に話しているので、僕としてはあまり話題もない。

 一方の秋穂はアレヤコレヤと、見聞きしたことを話している。

 主に服装のことで、それも店頭で見た服のことではなく、通りで見た、すれ違った見知らぬ他人のファッションについて話している。

 このままだと通りにいる全員を分析していたのでは、と思われるほど言葉が続く。秋穂は色々と、膨大な情報を記憶したようだ。

 食事が終わり、今日は日曜日、本屋へ出かけようと父さんと母さんが話しているのに、僕はTWCをやる時間を取りたいな、と思っていたけど、うまく切り出せなかった。

 秋穂の言葉じゃないけど、他人からすれば僕はゲームにありとあらゆるものを浪費している、愚か者だろうから。

 もっと何か、役に立つことをするべきかもしれない。

 それでももう僕にとって、TWCはただのゲームじゃない。

 それは友情であり、信頼であり、解放だと思う。

 あの世界の僕と現実の僕は、同じ人間でも、少し違う。

 それは家庭にいる時と社会にいる時で人間が変わるような、そんなものだろうか。

 部屋に戻ると、スマートフォンにメールが届いていた。

 誰かと思ったら、脇坂くんだった。





(続く)

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