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七月三十一日(金曜日) (2)

七月三十一日(金曜日) (2)



 東京に到着するとまだ昼前で、事前の真澄の計画の通り、昼食までグループ行動になる。

 脇坂くんは秋穂と桂木姉妹、真澄と一緒に渋谷へ行くが、僕と高木くん、小宮くんは神保町へ行く。

「予定変更」

 急に横で声がして、そちらを見ると真澄がいる。

 ぎょっとして他の渋谷組の方を見ると、脇坂くんが顔をしかめ、秋穂は残念そうにしている。桂木姉妹はなぜか僕を睨んでいた。

「渋谷で服でも見てきなよ、真澄」

「私も欲しい本があるのよ。いいでしょ、ついていっても。案内、よろしく」

 まったく、こういう気まぐれなところがあるよなぁ。

 中央線でお茶の水まで行き、そこで降りる。

 神保町と神田界隈を1時間半でうろうろする計画を、僕たち男子三人で立てていた。

 真澄が来ても、表面上は誰も動揺せず、計画通りに動き出した。

 古本屋を見て回り、裏道にまで踏み込んでいく。

 どういう営業の仕方をしているかわからない路地裏の昭和テイストな古本屋や、雑居ビルの中途半端な階にある不思議な店、品揃えがマニアックな書店、全てが事前調査通りにあった。

 1時間が過ぎた時には、男子三人はおおよそ予定を消化し、大荷物を抱えていた。僕が一番控えめで、紙袋一つだった。

「さて、昼食の待ち合わせに行きましょうか」

 真澄の号令で、ぞろぞろとお茶の水駅へ戻る。

「何を買ったわけ?」

 真澄に確認すると、「画集」という返事だった。

 画集? なんの画集だろう。

 向かう先は上野で、総武線で秋葉原、そこから山手線で上野だ。

 上野駅で下車して、案内を頼りに上野公園の方の改札に出た。そこには想像より大勢の人がいるけど、女子三人と男子一人はちゃんと発見できた。

「兄貴、遅いよ。だいぶ待ったよ」

 時計を確認。ほぼ予定通りだ。真澄は平然としているし、男二人は無言。

 秋穂が真澄の腕をとり、並んで歩き出す。桂木姉妹がそれについていく。その段になって、秋穂も双子も大きな袋を手に提げているのに気づいた。

 ぞろぞろと食事を取るつもりのドラマで取り上げられた食堂を目指す。

「なんで真澄ちゃんはそっちへ行ったわけ?」

 こっそり脇坂くんが訊ねてくるけど「知らないよ」と答えるしかなかった。実際、知らない。聞いてもいない。

 まぁ、渋谷は面白かったけどな、と脇坂くんはまんざらでもないようなので、僕はちょっと安堵した。

 食堂は昼過ぎなこともあって混んでいたけれど、幸運にも八人揃って店内に入れた。

 やっぱり二つのテーブルに分かれての食事の間に、僕たちは午後の行動を確認した。

 午後は全くの自由なのだ。なのでそのやりとりは確認というより、ほとんど牽制だった。

 男たちによる、抜け駆けするなよ、という圧力がぶつかり合った。




(続く)

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