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プレイ時間:124.5時間〜

プレイ時間:124.5時間〜



 日付が変わって、七月三十日。

 僕たちは顔を合わせながら、明日に備えて今日は穏やかに過ごそうということになっていた。

 場所は第14層の薄暗い街並みの一角にある酒場だった。

 酒場は食堂の位置付けのショップの中では、最も安価なアイテムを提供する一方、最も小さな回復しか提供しない。

 今の僕たちはただ雑談の場所が欲しいだけなので、こういうところで事足りる。

「彼女もこのゲームに誘いましょうよ」

 ユンリーがそう言ったのは、僕たちが最近のライトノベルについてあれこれと話をして、ガルケスが話をまとめた直後だった。

 彼女というのは真澄のことだと、すぐわかった。

「ハルハロンの知り合いでしょ? 誘えばいいんじゃない?」

 アンリーもそう言って、その時には全員の視線がこちらを向いていた。

「前も話した気がするけど、彼女はゲームがたぶん、好きじゃない」

「じゃあ、何が好きなんだい?」

 ガルケスの質問に思わず僕は斜め上を見た。ヘッドギアを付けているから、アバターも上を向いただろう。

「勉強じゃないかな」

 そいつはついていけないな、とデイロードが低い声で言う。

 ここにいるのは大洋高校の生徒だから、自然と同意してしまうが、これは不思議な心理作用ではある。

 大洋高校の生徒は、どことなく卑屈と言ってもいい気持ちを共有していて、例えば青峰、例えば四葉と比べると、自分たちは知能で劣っていて、二流高校の生徒で、という風に、変に下手になってしまう。

 今もそうだ。

 真澄は青峰の生徒で、自分たちとはどこか違う。真澄が優れているという思いよりも、自分たちが劣っている、という発想の方が強いのだ。

 そして僕もそう思っている場面が多い。

 こういう上下関係が、ある側面では僕と真澄を遠ざけ、ある側面では変に結びつけているようだ。

 結びつけると言っても、真澄の方から僕を引っ張り上げようとする、その行為の原動力になる、という形だけど。

「誘うだけ誘ってみようぜ」

 ヴァルナヴァルが提案すると、いやらしい男、下品な男、とアンリーとユンリーがやり返す。ヴァルナヴァルは「ハルハロンだけ特別かよ」とぶつぶつと呟いた。

「明日が楽しみだね」

 ガルケスがその一言で話題を切り替えてくれて、助かった。

 それから僕たちは東京旅行の計画や目当てなどを話題にして、30分ほどを酒場の一角で過ごした。

 予定の時間に全員がほぼ同時にログアウトする。

 毎日のようにゲームをするとはいえ、僕たちの話題の中には必ず学校の課題の話があって、まるでお互いに思い出させようとするかのように、その進行を確認したりもするのだ。

 この日は明日は遅刻しなようになどという会話をして、ログアウトしたのだった。

 僕はヘッドギアを外し、時計を見た。

 22時前。

 早く寝るとしよう。

 明日は、東京旅行だ。




(続く)

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