プレイ時間:123時間〜
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あんたも噂は聞いているだろう、とウォールェンが言った。
「例の、パーティの初期メンバーじゃないと攻略できない、っていう奴?」
「そうそう。新月騎士団もだいぶ苦労しているらしい」
「人工知能が判定しているようだけど、抜け穴はないのかな」
どうかねぇ、とウォールェンが唸る。
トシナも話に加わってくる。
「別に新月騎士団が初めての攻略者になる必要はないわけだし、今回はよそに任せて、その次で戦えばいいんじゃないか?」
「それが正しい認識なんだろうが、トシナ、あんたも知っているだろう。最上層をクリアしている連中の半分以上が、新月騎士団に関係している」
「つまり、今のトップランカーは排除されちまって、後に続く奴がいない、そう言いたいのか?」
そうなるな、とウォールェンがこちらを見やる。
「ハルハロン、あんたのパーティはどうだい」
「え?」
思わず目が点になったが、アバターは無表情だっただろう。
「僕の仲間はそこまで強くない」
「今、どの辺りにいる?」
答えづらい質問だけど、正直に答えるしかない。
「第13層を攻略したところだよ」
「はぁ?」
ウォールェンが体を震わせる。コントローラーのスティックを揺らしてしまったようだ。
「でも、あんた、その身なりは」
僕の服と鎧のことを言っているんだろう。鎧はデギオンがくれたものを使い続けている。真銀の鎧は更新を繰り返しているけど、そもそも耐久度はかなり高い。一級品のアイテムだった。
「僕は一人で攻略を先に進めている。今、第50層が終わった」
「その割には、あんた、落ち着いて見えるな」
ウォールェンはまだ疑っているようだった。
「一人で攻略するのがあんたのスタイル?」
「そうでもないけど、ただ、仲間を育てるのは得意じゃないかも。それよりも、早く先に行きたいんだ」
「だったらパーティを組んで、仲間と戦えよ」
それが普通なんだろうけど。
どう答えていいか、初対面の相手にどこまで話せるか、少し考えた。
決め手は、ウォールェンがどことなく信用できる、という勝手なイメージしかなかった。
「昔、組んでいた人たちが、トップレベルの使い手で、それを追いかけている。早く追いつきたい一心で」
へぇ、というのがウォールェンの反応で、僕は少し拍子抜けした。
もっと根掘り葉掘り聞かれたり、呆れられると思ったのだ。
まあ、頑張りな。それがウォールェンの言葉だった。
それから三人ともがよく知らない第103層に関する情報と意見を交換し、先にウォールェンが武器を受け取った。やっぱり短剣で僕は無言で現実の口元を緩めていた。
少しの間の後、僕の手元に盾がやってくる。
盾の名称は「武王の盾レオンハルト」というものだった。
「一点ものだから、大事に使ってくれよ」
礼を言って、僕はトシナの店を出た。
これでとりあえずは先へ進めそうだ。
しかし今日はもう時間が遅い。ログアウトして、明日の楽しみにするとしよう。
(続く)




