プレイ時間:119.5時間〜
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一晩と半日考えても、答えは出ない。
ビッグ・フォールの滝の群れを見ていると、たまにプレイヤーが流されてくる。
しかしどこかにきっかけがあるはずで、それは僕の頭の中で隠れているようだ。
あのモンスターを倒すことが目的か?
いや、全体像の見えないモンスターを相手に、しかも逃げる余地もない場所で、さて、倒せるのか。
攻撃してもそのまま飲み込まれて、噛み砕かれるのではないか。
うーん……。
少し考え、アバターに腕組みさせてみたけど、それで何かが変わるわけもない。
あのモンスターについて調べるか。
開放掲示板を開いてみるけど、例の如く検閲されたようで、実際的な対処法や答えは載っていない。さすがに第50層なので、そこまで運営も甘くない。
あのモンスターの名前で、それでも検索してみよう。
名前は……。
名前は、出ていなかった。
これは本来的にありえないことじゃないか? TWCにおいて、全てのモンスターは出現と同時にその名前が表示される。それは第1層からここまで、例外のない仕様だった。
まさかここまで来てバグではない。
こちらが察知されていないわけでもない。モンスター出現の効果音が流れた。
逆のことは以前もあった。モンスター出現の効果音が出ないモンスターで、その奇襲が成功してからやっと効果音が鳴った。
後出しだったけど、そういう形で効果音を使えるとなると、仮に、効果音だけを出してモンスターを出現させない、ということもできるのか。
そんなことをしても意味はない。
でも、あの迷宮の通路では、モンスターがすぐそこにいたのは事実だ。
あれがモンスターなのははっきりしているけれど、名前が出ない。名前が出ないのなら、モンスターではない。
あのモンスターにどういう意味がある?
長い間、中央広場で立ち尽くして、やっと答えのようなものが見えた。
あのモンスターはモンスターではなく、別の意味を持っている。
意を決して駆け出して、地下市街に入り、迷宮に飛び込む。
案の定、通路を噛み砕くモンスターが出現した。名前は出ない。
逃げるべきではない、それをまず確かめる。
足を止めた僕のアバターがモンスターに噛み砕かれる。
即死だった。
しかし、僕のアバターの死体はその場に残らず、巨大ミミズとでも呼ぶべきそれと一緒に水路に転落し、吐き出されたような演出があり、僕の死体だけが水路を流れていく。
滝をいくつも超えて、僕の死体はいつも通り、中央広場の池に浮かぶことになった。
まさしくドザエモンだけれど、仕方がない。
一つの可能性が消えた。
なら次を確かめるべきだ。
6時間のペナルティを甘受しなくちゃいけないけど。
「少しは近づいたかな」
唐突に声がして、三人称視点でそちらを見ると、例の姿を消していた情報屋が、池のほとりに立っていた。
(続く)




