プレイ時間:118時間〜
プレイ時間:118時間〜
寝るまで考えて、不意に気づいた。
第50層にだけあるもので、見つかりづらいイベントの始発点。
すぐには気づけず、しかし何かの時には気づける。
答えらしいものに当たりをつけた頃に眠り、翌日、昼食前に僕はTWCにログインして、第50層へ移動した。
向かう先は宿だ。一泊でも超高額といってもいい値段設定の宿である。
思い切って、一番高額の宿を選んで、チェックインした。
部屋に入って少しすると、イベントが始まった。NPCアバターがやってきて、「食事の時間です」というのに、一人でに僕のアバターが動き出す。
連れて行かれた先は大広間で、他に客は数人だけ。
丸テーブルの一つについて、ステージの方に視界が移動する。
少しするとそのステージで何かの演劇が始まった。
それはどうやら、この街の小さな滝の奥に隠れている地下市街地のさらに奥から、こっそりと危険地帯の迷宮に探索へ向かう、冒険者の演劇だった。
短い劇が終わり、自然とアバターが拍手をする。
そうしてからNPCに連れられて部屋に戻り、「チェックアウトしますか?」という声とともに、テキストでこのまま休むか、店を出るかの選択が可能になった。
長居する理由はない。店を出るを選択すると、NPCがうやうやしく頭を下げた。
街頭に出て、足早に演劇であったように、小さな滝をくぐって地下へ入った。
イベントを経たからだろう、マップの中に新しい道筋ができている。
まっすぐにそこを目指すと、人気のない区画の先に、薄暗い通路がある。
体力は万全、生命力も減っていない。武器の具合も整備済みで問題ない。
通路に踏み込むと、BGMが変わり、危険地帯に踏み込んでいる表示が出た。
危険地帯をセーブポイントにはできない。僕は足を戻して、この地下通路から危険地帯へ入る入り口を一度、セーブポイントに変えた。
ここから先に進めば、今度こそ迷宮という危険地帯の攻略を始められそうだ。
でも今は現実で昼食の時間になる。午後は出かけるようだし、攻略するのは夜になるだろう。
まぁ、焦る必要はない。
少しずつでも前に進めればいい。
一人きりでも。
いつか誰かが横に並んでくるとして、それはデギオンか、アカリアか、それとも別の誰かか。
ガルケス、デイロード、アンリー、ユンリー、ヴァルナヴァルの誰かかもしれない。
でも今はまだ、その時じゃない。
今は一人で、先へ進むことだ。
ログアウトを選択し、視界にはトップページが表示される。
息を吐いて、ヘッドギアを外す。
どうやら、僕は夏休みを遊びで潰してしまいそうだ。
一日一時間の誓いも、一日二時間ですら、とっくにどこかに消え去っているのだった。
やめたくてもやめられない。
僕はどうやら何か、やや尋常じゃないほど本気になっている。
真澄が言うことも、ある側面では正しそうだ。
この本気が別のことに発揮されれば、また何かが変わるんだろう。
(続く)




