七月二十三日(木曜日) (3)
七月二十三日(木曜日) (3)
ケーキとパフェが運ばれてきて、僕の前にはハンバーグがやってきた。秋穂がドリンクーバーに立ったところで、案の定、真澄が身を乗り出した。
「真面目に勉強しないで、大洋に入って、そこでも適当に流してゲームに必死ってこと?」
そこまでいい加減ではないけれど、説明が難しいな。
「勉強は努力しているし、部活は入っていないけど、家で本を読む時間を作ったりはしている。そんな趣味の一環で、ゲームがあるわけ」
「じゃあ、大洋で学年一位の成績を出してみてよ」
「おいおい、それはさすがに無理だよ。知っているよね、僕の頭の出来は」
「もっとまともだと知っている」
買いかぶりなんだよなぁ。
「真澄は勉強が第一なの?」
「もちろん」
「それでどうなる」
「どうなるって、何が?」
まぁ、こんな話をしても仕方がないのだけど。
「例えば、東京大学に現役合格するとか、そういうことを目指しているの?」
「そこまで現実が見えていない、おめでたい奴じゃないわ」
「じゃあ結局、どこかで妥協するわけだ。でもそれは妥協じゃないと反論するだろうけど、それと同じ反論を僕は真澄にしようかな、という感じ」
口だけは達者ね、と真澄が言った時、グラスを手に秋穂が戻ってきた。
「なんでこんな険悪なムードなわけ?」
怪訝そうに言いながら、真澄の隣の席に秋穂が腰を下ろそうとすると、飲み物を取りに行く、と今度は真澄が先に席を立った。
今度は秋穂と二人だ。さっきの真澄とそっくりの動作で、秋穂が身を乗り出す。
「真澄ちゃん、兄貴のことを気にかけているんだから、少しは応えてあげなよ」
「学年一位の成績を取れ、って言われたよ」
「できないの?」
……こういうところで似ているから、秋穂は真澄と、真澄は秋穂と、気が合うんだろうなぁ。
真澄が帰ってきて、「成績は努力するよ」と僕の方から諦めて声をかけると、「当たり前」と素気無く返されてしまった。
ひどい……。
「ゲーム友達は大事にしなさいね」
一転してそんなことを言われても、皮肉かと思うが、そうでもないらしい。表情には、やっぱり何か含みがある。さっきからこればっかりだ。
真澄が不適と言っていい笑みを見せる。
「友情っていうのは、アナログもデジタルもないからね」
「かもしれないな。真澄も、脇坂くんをあまりいじめるなよ」
「あの男子は好きになれない」
反射的にそう答えた真澄に秋穂が詰め寄り、「真澄ちゃんはどんな男が好きなの?」と問いただし始めたので、僕としてはいい様だとニヤニヤしてみせることができる。
そのはずが、真澄もニヤニヤと笑うと、
「秋穂ちゃんのお兄さんは真っ先に除外されるわね」
と、やり返された。
ひ、ひどい……。
(続く)




