プレイ時間:110.5時間〜
プレイ時間:110.5時間〜
廃墟に入って、僕はひたすらフォローに徹した。
攻撃を受けそうになる仲間を守り、仲間が仕留め損ねたモンスターにとどめを刺す。
廃墟にいるモンスターは、機械人形とでも呼ぶべきものが多い。
名前も似ていて、「バトル・メカ」とか「ポリス・メカ」とか、そんな感じだ。
このステージにおける最大の問題は、これらのモンスターを攻撃するとよそのモンスターと違って、大幅に武器の耐久度が落ちる。モンスターの攻撃を防いた盾やダメージを受けた鎧も同様だ。
戦いを継続したがるのはヴァルナヴァルだけで、他の四人は一時撤退を訴えている。
「俺はまだ戦えるぜ」
「次の戦闘の後には武器がなくなるよ」
冷静にガルケスが言いながら、今、やっと最後の一体まで減らしたバトル・メカの攻撃を、盾で受け止める。
その隙に容赦なくデイロードが突っ込み、やや遅れてヴァルナヴァルが飛び込む。
モンスターを倒したのはデイロードだった。
僕たちのパーティではドロップされるアイテムは山分けだし、経験値も平均的に割り振られる措置を取っている。経験値にはちょっとした例外で、僕への経験値の配分は抑えられてはいるけど。
最後のモンスターが消えて、しかし周囲ではサイレンのBGMが鳴っている。
「うるさい効果音だな」
ヴァルナヴァルがうんざりした顔で言う。
「これが鳴っている限り、モンスターが押し寄せてくるよ」
助言すると、さっさとずらかろう、とヴァルナヴァルも前言撤回した。
そうしてロスト・シティに戻り、武具職人の場所を仲間に教えて、僕は一人で別の店に行った。
僕の武器だけは、レベルにあった店じゃないと修復されないのだから、仕方がない。
その店は人間のプレイヤーが経営していて、こちらには槌を預けるつもりである。
大槌イグニテーアを治せる武具職人は珍しい。ここに店があるのは、たぶん、木を隠すには森の中、ということだと思う。
店に入ると、他に客はいない。
「おお、ハルハロン。久しぶり」
少年のアバターが出迎えてくる。服装は作業着だけれど、うまく汚れが演出されていた。
「元気? アッソン」
武具修繕職人のアッソンが「アバターは風邪もひかないからね」と応じる。
「イグニテーアを任せたいんだけど」
「あれか。一日は欲しいよ」
「構わない。ちょっと休憩したいしね」
僕はアイテムを取り出し、アッソンに預けた。
「新月騎士団の噂を聞いているかい?」
修繕職人のプレイヤーが、珍しくそんなことを言った。
ゲームのトッププレイヤーの噂話は、世間話としては悪くないテーマだなと思いながら、「どんな噂?」と聞き返す。
アッソンは声をひそめた。
「今の層は奴らには攻略できないらしい」
どういう意味だ?
(続く)




