プレイ時間:108.5時間〜
プレイ時間:108.5時間〜
僕は一人でログインして、第13層から第49層に向かった。
吹雪が吹き荒れるイン・ブリザードで、やっと防寒着を試すことができた。
アバターが真っ白い防寒着を着て、体力がじわじわと減るのがピタリと止まった。
ちゃんと機能するようだ。
それからかまくらを模したショップでアイテムを買いあさり、僕は雪原に踏み込んだ。
スノー・ベアを倒しながら先へ向かう。他にも真っ白い狼のアイス・ウルフも襲いかかってくる。
戦いに次ぐ戦いで、集中力が奪われる。何より、この危険地帯では吹雪が止むことがないので、視界が悪く、耳障りな音も止むことがない。その上で不意打ちを避けようとすると極端な集中を強いられる。
少しのダメージでも甘受できないのだ。
それにこの層の危険地帯のマップが表示されていないのは、やはり撹乱するための仕様か。ほとんど目印のない吹雪の中を彷徨い歩いて、その上でボスを見つけろという趣向のようだった。
その前にモンスターに殺されるかもしれない。
マップにはイン・ブリザードの位置は表示されているので、帰りに迷うことがないのが救いだ。
15分ほど、あてどなく放浪した後、唐突に視野の隅に何かが見えた。
そちらを見ると、杭が立っている。
罠かもしれないが、今は罠にもすがりたい。それくらい手がかりがなかった。
杭は距離を置いて、数本が打たれている。
一歩、一歩と慎重に進む。
杭が見えなくなった。それを探して何歩目かを踏み出した時、唐突に足場がなくなる。
アバターが倒れかかるのを、コントローラーのスティックを倒して静止させる。
目の前にあるのは、崖のような切れ目だった。
これじゃあ北極圏横断の旅みたいだな。
杭の方を改めて確認すると、杭が二本並び、そこから綱で作られた橋がかけられている。
この断崖の向こうが、あるいはボスの居場所かもしれない。
橋に踏み出し、バランスが崩れそうになるのを調整して、ついに渡りきった。
吹雪は吹き続けている。
どこかで何かが唸った気がした。
真っ白い氷雪の向こうから、大きな熊が進み出てくる。
それは熊には違いないが、腕が四本ある。
体毛は真っ白ではなく銀が混ざっていて、硬そうだ。
これがボスモンスターらしい。
名前は、「ヘヴィ・ベア」だった。
変なジョークみたいだけれど、それに構っている暇はない。
轟くような吠え声をあげ、突っ込んでくる。
僕の背後には綱の橋がある。しきり直せるだろう。
そう思った時、背後で何かがちぎれる音がした。
反射的に振り返ると、橋が切れて、無くなっていた。
今までにも何回かある、ボスに挑むと脱出不可能になる設定。
こうなれば、あとは僕が死ぬか、ボスが倒れるかだ。
横っ跳びにヘヴィ・ベアの攻撃を回避して、僕のアバターは騎兵槍を構え直した。
(続く)




