プレイ時間:107.5時間〜
プレイ時間:107.5時間〜
武器「細剣ダイアロンド」を一振りして、アイアニダの大剣を受け流す。
激しい火花のエフェクトが舞い、攻守が逆転する。
僕は単発の突きと二連撃の突きを織り交ぜ、さらに細かい照準の調整とステップも活用し、攻勢に出た。
細剣の先が次々とアイアニダにヒットし、赤いエフェクトが散る。
白い閃光はやがて光の雨になり、アイアニダを滅多刺しにした。
彼が倒れこんだのはダメージの判定が大きすぎるため、足がもつれたというシステム上の処置だ。
倒れれば動きをは止まる。
僕の中でも最速の四連続攻撃「四連星」が起動し、四発ともがアイアニダに吸い込まれた時、彼の生命力はゼロになった。
彼の仲間がぽかんとこちらを見ている。
「ち、チートだ!」
ひとりが叫ぶ。現実世界でも大きすぎる声だろう。
「実力です」
細剣を構え直すと、彼らの戦意も失せたようだ。
この程度で引っ込めるとは、立派な戦意である。
「教えてもらいますよ、アイアニダさん。ドグドリンに何をしたか」
そう言った時だった。
目の前に倒れている死体となったアイアニダが消える。
しまった、と思った時には彼の仲間二人も消えている。
強制的にログアウトしたのだ。
くそ、と思わず悪態が口をついて漏れる。
迂闊だった。
しかしこうなってはどうしようもない。
僕のレベルが82に上がったことが表示されるけど、それもどうでもよかった。
まったく、愚か。相手が卑怯なことくらい、いくらでも想像できたのに。
息を吐いて、僕は細剣を携行アイテムに戻し、いつも通りの騎兵槍と盾を装備した。
どちらも耐久度が削られている。近いうちに修繕しないといけない数値だ。
本当に、損しかなかった。
僕はため息を吐いて中央広場へ向かった。
途中で体力を回復させるために食堂に寄るけど、何かここでの支払いさえも損に思えて、そんな自分にがっかりした。
ゲームなんだ。割り切ることにしよう。
体力が回復し、失われた生命力が回復するのを横目に、僕は中央広場で第12層のパスワードを入力した。
周囲の光景が一変し、ジャングル地帯のど真ん中の街のようになる。
喫茶店へと歩きながら、頭の中では武器のメンテナンスについて考え、次に新月騎士団の実際について、想像を巡らせることになった。
簡単に足抜けできない組織で、昔のメンバーを探し、そのメンバーは必死に逃げている、ように見える。
レベルやステータスを他言するようなことは、まだ可愛い方なのではないか。
そうなると、レアアイテムか、ダラーが関わるか、もっと別の何かか。
メンバーを本当に破滅させる理由。
いや、違う。
破滅させる必要はないし、さっき、アイアニダたちがしていたのは、「探す」ということだ。
探す、とは、集める、だろうか?
新月騎士団が、再結集する?
過去のメンバーを集める必要のある、何か……。
しかしまさか、攻略条件に関することだろうか。
何もわからないまま喫茶店が見えてくる。
これから第13層へ行く約束が、いやに高潔に思えて、逆に自分が何か汚れたような気がした。
決闘なんて、するもんじゃないな。
(続く)




