プレイ時間:107時間〜
プレイ時間:107時間〜
鎧を見るだけでおおよそのレベルはわかる。
100から150の間だろう。武装の質は一級品である。
「ドグドリンを探しているのはお前か?」
真ん中のアバターが強い口調で言った。
「人に頼まれた」
「セグドリンか? 奴はどこにいる?」
「教える理由はありません」
素っ気なさを意識して、突っ撥ねる。
想定通り、両脇の二人が息を飲み、次には激昂したのがわかった。アバターにモーションをとらせなくても、些細なことでわかるものだ。
「俺がお前に勝てば、教えろ」
真ん中のアバターが言う。彼が一番、冷静だ。
決闘で白黒つけようというのだ。
「僕はレベルが高くないから、決闘をする理由はない」
「二度と遊べないようにすることもできる」
右側の男のアバターが恫喝してくる。
「たかがゲームだ」
「それにお前は必死になっている、そうだろう?」
ああ言えばこう言うって奴だ。
まったく、この手の不愉快なプレイヤーとは、関わりたくない。
「僕が勝ったら」
交換条件を出すくらい許されるだろう。
「新月騎士団の悪事について、話してもらう」
「悪事などない」
「では、ドグドリンに何をしたのか、を教えて欲しい」
勝てればな、という言葉と同時に、決闘を受けるか拒否するかの表示が出る。
僕の頭の中で、デギオンのことが浮かび上がった。
彼のように、強くなりたい。
決闘を受諾すると、10秒のカウントダウンが始まる。
僕は鋼鱗の盾を左手に、右手では騎兵槍を抜いた。
相手のアバターの名前は、アイアニダ。
武器は、剣を一振りだけ。両手で持つ大剣だ。
カウントダウンがゼロになり、しかしお互いに動かない。
その程度には警戒してるのだ。
間合いを計り、隙を探る。
動いたのは、僕の方だった。
攻撃モーションと移動モーションの合わせ技で間合いを潰す。
騎兵槍の一撃をアイアニダの剣が受け流す。
交錯する斬撃を、背を逸らして避け、間合いを取ろうとするが、そこを詰められる。
鋼鱗の盾で弾き、跳ね除けようとするが、一撃が重い。
それでも距離を取り、不自然な隙に気づき、しかしそこを突くと決断し、突撃。
円錐の穂先に、アイアニダが大剣をぶつけ、武器同士が弾き合う。
なるほど、わかったぞ。
このアイアニダというプレイヤーの決闘のスタイルは、壊し屋、と呼ばれるやり口だ。
それはプレイヤーのアバターの生命力を削るのではなく、武装を破壊し、その上で仕留める戦法である。
禁止事項ではないが、好まれるやり口でもない。
僕が後退しようとすると、今度は騎兵槍ではなく鋼鱗の盾が狙われる。
考えている余地はない。
大きく跳んで後退し、騎兵槍と鋼鱗の盾を携行アイテムに移動。
丸腰の間にもアイアニダの攻撃は続く。
基礎的な回避モーションの組み合わせを直感的に組み上げ、連続攻撃に対処。
一方でコントローラーを複雑に操作し、やっと武装を取り出すことができた。
それは、半透明の細剣だった。
(続く)




