プレイ時間:105.5時間〜
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僕はどこまで話すべきか、だいぶ迷った。
しかしセグドリンと彼が兄貴と呼ぶグリドリンというアバターのために、何かする気になった。その友情に尊いものが見えたからだ。
「僕にこの服をくれた人は、アカリアという人だ」
「アカリア? そいつは、鎖鎌を使う、あのアカリアか?」
やっぱりセグドリンはアカリアを知っている。そこまでは僕も想像が付いていた。
「同じアカリアだと思う」
「あの女とどこで会った?」
「彼女は第1層で武器を修繕する店を開いていて、そこで出会ったんだ」
「……そうか。あの女もまだ、遊んでいるのか」
あの女、というわけだから、アカリアが少年の形をして少年を演じているということを知っている程度に、セグドリンとアカリアは親しいらしい。
「アカリアがお前に服を用意したのか?」
「そう。でも店がセントラルにあるのか、それとも別の層にあったのかは、知らない」
「アカリアに連絡が取れるか?」
返事に窮する僕に、嫌か? と、セグドリンがわずかに上目遣いになる。
「僕たちは、その……」
どう言葉にして説明するか、思案して、やや的外れな言葉を選ぶしかなかった。
「今は、バラバラになった」
「トラブルか?」
トラブルではない、と答えて、思い切って全部をさらけ出すことにした。
そうするのが、セグドリンの切実さに対して誠実だろうと思ったからだった。
「僕は初心者だった。それをアカリアともう一人のプレイヤーが鍛えてくれた。でも、二人は僕を高レベルまで鍛え上げるより、僕が自分で自分を高めるように、という趣旨のことを言って、それで、もう会っていない。連絡もこないし、していない」
「いつのことだ?」
「三ヶ月前」
セグドリンが溜息を吐き、首を振った。
「あんたの話は信じるよ、ハルハロン。引き止めて悪かった」
彼のアバターが手を振ると、真っ白い毛皮でできた上着が出現した。
防寒着だ。
「また何か情報があれば、教えてくれ」
空中を横切ってきた防寒着に僕のアバターが触れ、それをとりあえず、携行アイテムに追加する。
「僕からも聞きたいことがあるんだけど」
これくらいは許されるだろう、と思った僕に、セグドリンは「なんだ?」と促してくる。
「新月騎士団っていうのは、どういうパーティなの?」
セグドリンが顔を歪めるモーションをする。有料のモーションで、基礎的なしかめっ面をより酷くしたような顔を作れる。
「関わらないほうがいいぜ。あそこははっきり言って、地獄だ」
地獄?
セグドリンのアバターが店にある何も置かれていないカウンターに腰掛けた。
僕がじっと見ていると、ため息を吐く音の後、セグドリンが語り始めた。
(続く)




