プレイ時間:101時間〜
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双子のアバター、といっても髪型が違う二人が、密林に踏み込む境界線で待っていた。
「その間抜けがいると、ややこしいけど」
「無駄に手間がかかるし」
くだけた口調の二人に、ひでぇ言い方だ、とヴァルナヴァルが呻く。
それでも四人一かたまりで密林に踏み出した。体力は万全だ。
入ってすぐに、モンスターが出現する。
サブステータスの中に索敵に関する項目があり、この数値は例えば弓矢を使い続けると、自然と伸びる。
今、離れたところにジャイアント・タイガーが出現したのも、アンリーとユンリーがいるからだ。二人は弓矢を使うのである。
「ヴァルナヴァル、接近させないように抑えよう」
「合点承知の助」
僕よりも先に、ヴァルナヴァルが飛び出していく。
彼の武器は二本の剣で、双剣士と呼ばれるスタイルだ。
攻撃に特化していて、防御にはテクニックが必要だ。
そして、ヴァルナヴァルのそのテクニックは、まだまだ未熟である。
というわけで、僕がフォローしないと、彼はあっさりと死んでしまう。
矢が降り注ぐ中で、ジャイアント・タイガーが間合いを詰めようとする。
真っ先にヴァルナヴァルが襲われる。彼は器用にかわして、二振りの剣で連続攻撃を始める。
ジャイアント・タイガーが転がるように間合いを取る。
そこへ僕が突っ込む。
騎兵槍の突きに高速で前進する運動モーションを合わせ、ダメージを増加させる。
騎兵槍に貫かれ、さらにジャイアント・タイガーが転がる。
ここぞとばかりに、ヴァルナヴァルがさらに突出して、それはダメだともやめろとも言う間もなく、低く姿勢を取り戻したジャイアント・タイガーの方からも、ヴァルナヴァルに飛びかかる。
モンスターによる囮、見せかけの不自然な動きで、何度も実際に見ているはずが、こういう時にヴァルナヴァルは学習しないのが、はっきり見える。
結果としては、ヴァルナヴァルが大ダメージを受けて後退し、矢の集中攻撃で、ジャイアント・タイガーは倒された。
ドロップされたアイテムを確認する前に、僕はヴァルナヴァルの様子をチェックした。
生命力がレッドゾーンだ。鎧も耐久度を落としたはずだけど、まだアバターには存在する。
「死ぬかと思った」
平然と、何度目かわからないことを口にするヴァルナヴァルの横にやってきたアンリーが神官としての癒しの力を作用させる。効果音とエフェクトともにヴァルナヴァルの生命力がじわじわと回復する。
その間に僕とユンリーはアイテムで自分の体力を回復させている。弓矢を使うプレイヤーは体力の減りが小さいけれど、無ではない。
「今月中にレベル29にはなりたいな」
ユンリーがそんなことを言う横で、ボスに一発でも食らわせればすぐ上がるだろうさ、と癒しを受けていて動けないヴァルナヴァルが口を挟む。
「雑魚の言うことは無視よ」
「不真面目で、チャラチャラしている男の言うことは特に」
取りつく島もない双子の言葉に、ウエェ、とヴァルナヴァルが呻く。
僕はそんなやりとりを見ながら、まぁ、これはこれで悪くないな、と思っていた。
楽しいというのは、実はいろいろなところにその欠片が散らばっているのかもな。
そんなことを思いながら、僕はしばらく三人の仲間を眺めていた。
(続く)




