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プレイ時間:99時間〜

プレイ時間:99時間〜




 僕のアバターの姿は第49層にある。

 街の名前は「イン・ブリザード」だ。この街は街というよりは中央広場に当たる広場があるだけで、あとは雪の山が無数に連なっている。その一つ一つが、かまくらのようなもので、店になる。

 それとイン・ブリザードにおける他と違うところは、安全地帯でもじわじわと体力が下がる。寒さの演出らしい。

 なので、危険地帯である「氷原」に出る前に回復してから、やっと戦場へ出て行くことになる。そのために安全地帯と危険地帯の境界にはその手の店も多くあるのも、やはり独特だ。

 馴染みの人間プレイヤーの店で補給をして、僕は氷原に出た。

 上着のアイテムを武装に追加する。これで体力の減りを軽減できる。もっとも、僕のアバターの足が遅いのはそれとは無関係だ。

 デギオンとアカリアと別れてからも、僕は荷物を大量に持ち続けた。

 とにかく、ステータスを向上させたかった。僕だって、強くなりたいのだ。より早く、より高みに達したい。

 氷原はそもそも雪が積もっている設定で、どんなアバターでも足が遅くなる。

 僕の歩みは遅々として進まない。

 そこへモンスターが出現する。名前は「スノー・ベア」。真っ白い熊である。

 向こうは俊敏に動けても、こちらは鈍足。

 ただし、足回りだけがこのゲームの全てじゃない。

 熊の叩きつけるような攻撃も、嚙みつきの攻撃も、騎兵槍で弾きかえす。

 僕はここのところ、盾を持たずに戦う術を見極めようとしていた。

 デギオンには、まだ憧れがある。

 彼くらいの使い手には、まだ出会っていないし、あの芸術的なアバターの操作は、色あせることなく記憶されている。

 10回も攻撃を跳ね返した時には、こちらの逆襲の積み重なりでスノー・ベアは倒れ、アバターが消滅。アイテムがドロップされる。

 回復系アイテムで、自然と減ってしまう生命力と体力を回復させる。

 ここまでほとんど一人で上の層へやってきた。

 でもこの第49層はさすがに難しいかもしれない。

 かといって、今のパーティの顔ぶれでは、荷が重すぎる。

 それがここのところの僕の悩みだった。

 回復中にモンスターがやってくる。先ほどと同じスノー・ベア。

 熊の吠え声の効果音が鳴り、突っ込んでくる。

 回復のモーションを中断して、騎兵槍を構え直す。

 負けることはない。

 モンスターには。

 しかしステージには殺されるかもしれない。

 自分の中の迷いを捨てるように、コントローラーを素早く操作して、こちらからもスノー・ベアにぶつかっていった。

 攻撃が交錯する。

 この世界では、戦いは終わることがないのだ。



(続く)

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