プレイ時間:5.5時間〜
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ハルハロンです、と名乗ると、男が鷹揚に頷く。
これも決められたモーションのはずが、変に板についている。
「俺はデギオン。この店の店主で、職人だ」
職人というのは、武具職人ということらしい。
TWCでは本来のステータスとは別に、アートステータスというものがあり、それはとりあえずは「練度」という数値が大事になる。
そして「属性」を決めるのだけど、武具職人も属性の一つだ。
ただし、アートステータスの練度はレベルと同時に向上するから、目の前の男性プレイヤーはただの職人ではなく、戦士、それも相当な使い手と理解するべきだろう。
こちらが内心、尊敬の目を向けているのにも気づかず、デギオンはあらぬ方を見て、それからこちらへ向き直った。
「金はあるのかな、坊や」
どうやら僕のことを年下と認識しているようだけど、まぁ、現実でもそうだろうから、気にしないでおこう。
「あります。どれくらい必要ですか?」
そう返すと、器用に表情をキョトンとしたものにしてから、彼ははっきりと答えた。
「1500ダラーは欲しいが、あるかい?」
さすがにまだ90000ダラーはあるとは打ち明けられないので、払えます、と返事をする。
ニカッとデギオンが満面の笑みを見せる。
「こいつを売ってやる。使えるはずだ」
目の前に二つの武具がにじみ出るように出現した。
カーソルを合わせると、刃が針のような武器は「細剣」、小さな円盤の盾は「円盤盾」となっている。そのままの名前だけど、レベル1なのだから、しっかりと名前のある武器なんて使えるわけもない。
システムに弾かれるかと思ったが、使用可能らしく、すぐに購入の意思を確認する表示が出た。
もちろん、拒否する理由はない。
「細剣は斬るモーションだとあまり威力が出ない」
デギオンが解説してくれる。
「突きのモーションで使ったほうがいい。耐久度もほとんど減らないしな。円盤盾は防御可能な範囲が小さいから、慣れるまでは辛抱が必要だ」
「耐久度って何ですか?」
素朴な疑問をテキストで返すと、デギオンは無反応だった。少しの間の後、呆れの表情を作り、「そんなことも知らんのか?」と本当に呆れている声が発せられた。
「武具が壊れるまでの数値だよ。使えば使うほど、耐久度は下がる」
え? そうなのか。
それでダガーも木の盾も壊れたってわけだ。
素早く細剣と円盤盾のステータスをチェックする。耐久度は細剣は40、円盤盾は60だ。なめし革の鎧は35になっている、表示の上では35/50だから、15ほど消耗したようだ。
「武具職人じゃなくて、修繕職人とか修理工に持っていくか、鍛冶職人に持っていけば、耐久度を元に戻せる」
そういう仕組みなのか。
「じゃ、細剣が800ダラー、円盤盾が500ダラー、合わせて1300ダラー。200は負けておくよ。支払いを頼む」
目の前に表示されっぱなしだった購入決定ボタンを押す。
「毎度あり」
デギオンが笑う。
「また利用してくれ、坊や」
礼を言って、僕は店を出た。
(続く)




