表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/365

プレイ時間:5.5時間〜

プレイ時間:5.5時間〜



 ハルハロンです、と名乗ると、男が鷹揚に頷く。

 これも決められたモーションのはずが、変に板についている。

「俺はデギオン。この店の店主で、職人だ」

 職人というのは、武具職人ということらしい。

 TWCでは本来のステータスとは別に、アートステータスというものがあり、それはとりあえずは「練度」という数値が大事になる。

 そして「属性」を決めるのだけど、武具職人も属性の一つだ。

 ただし、アートステータスの練度はレベルと同時に向上するから、目の前の男性プレイヤーはただの職人ではなく、戦士、それも相当な使い手と理解するべきだろう。

 こちらが内心、尊敬の目を向けているのにも気づかず、デギオンはあらぬ方を見て、それからこちらへ向き直った。

「金はあるのかな、坊や」

 どうやら僕のことを年下と認識しているようだけど、まぁ、現実でもそうだろうから、気にしないでおこう。

「あります。どれくらい必要ですか?」

 そう返すと、器用に表情をキョトンとしたものにしてから、彼ははっきりと答えた。

「1500ダラーは欲しいが、あるかい?」

 さすがにまだ90000ダラーはあるとは打ち明けられないので、払えます、と返事をする。

 ニカッとデギオンが満面の笑みを見せる。

「こいつを売ってやる。使えるはずだ」

 目の前に二つの武具がにじみ出るように出現した。

 カーソルを合わせると、刃が針のような武器は「細剣」、小さな円盤の盾は「円盤盾」となっている。そのままの名前だけど、レベル1なのだから、しっかりと名前のある武器なんて使えるわけもない。

 システムに弾かれるかと思ったが、使用可能らしく、すぐに購入の意思を確認する表示が出た。

 もちろん、拒否する理由はない。

「細剣は斬るモーションだとあまり威力が出ない」

 デギオンが解説してくれる。

「突きのモーションで使ったほうがいい。耐久度もほとんど減らないしな。円盤盾は防御可能な範囲が小さいから、慣れるまでは辛抱が必要だ」

「耐久度って何ですか?」

 素朴な疑問をテキストで返すと、デギオンは無反応だった。少しの間の後、呆れの表情を作り、「そんなことも知らんのか?」と本当に呆れている声が発せられた。

「武具が壊れるまでの数値だよ。使えば使うほど、耐久度は下がる」

 え? そうなのか。

 それでダガーも木の盾も壊れたってわけだ。

 素早く細剣と円盤盾のステータスをチェックする。耐久度は細剣は40、円盤盾は60だ。なめし革の鎧は35になっている、表示の上では35/50だから、15ほど消耗したようだ。

「武具職人じゃなくて、修繕職人とか修理工に持っていくか、鍛冶職人に持っていけば、耐久度を元に戻せる」

 そういう仕組みなのか。

「じゃ、細剣が800ダラー、円盤盾が500ダラー、合わせて1300ダラー。200は負けておくよ。支払いを頼む」

 目の前に表示されっぱなしだった購入決定ボタンを押す。

「毎度あり」

 デギオンが笑う。

「また利用してくれ、坊や」

 礼を言って、僕は店を出た。



(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ