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四月六日(月曜日) (2)

四月六日(月曜日) (2)



 授業が終わってから、一年生は体育館に移動し、新入生歓迎会と部活説明会が始まった。

 僕はとにかく眠くて、あまり覚えていない。

 でも、印象的な場面はあった。

 部活説明会で、男子バスケ部が新入生と三対三、スリー・オン・スリーでミニゲームをすると、提案したのだ。

 誰が応じるかと見ていると、急に脇坂くんが立ち上がった。そして顔見知りらしい二人の一年生を呼んで、前に進み出た。

 新入生が見ている前でゲームが始まったけど、脇坂くんはそれほどの技量ではないように見えた。

 目立ちたかっただけかな、と思った。

 しかし、実際はそうじゃなかった。

 彼は一度、ゲームを中断すると、すぐそばにいた一年生の女子からヘアゴムを借り、自分の長い髪の毛をひとつに結んだ。

 何か、人が変わったような気がした。

 ゲームが再開された後は、劇的だった。

 先輩から脇坂くんがボールを奪い、攻守が交代。

 一年生から脇坂くんにボールが渡り、短いドリブルとステップで一人を交わし、パス。

 ボールを受けた一年生が、先輩の背後にボールを投げると、狙い澄ましたように走り込んだ脇坂くんが滑り込み、引っ掛けるようにボールを確保する。

 すでにそこはゴール下だ。

 先輩が防ぐために跳ぶ横で、シュートの姿勢をフェイントにして、体をひねり、今度こそシュート。

 ボールは鮮やかにリングを抜けた。

 シンとしていた新入生から拍手が起こり、先輩は居心地が悪そうに脇坂くんに何か話しかけていたけど、脇坂くんはニコニコ笑いながら、なんでもないように戻ってきた。

 ヘアゴムを女子に返し、僕たちのクラスの列の最後尾へ行く彼は、はっきり言って、スターにしか見えなかった。

 きっとバスケ部に入って、活躍するだろう。

 行事が終わって、帰り道は高木くんと一緒だったけど、意外だったのは小宮くんもいることだ。

 この時に僕と小宮くんは初めてちゃんと話をした。

 どうも高木くんとは読書の趣味が近いらしい。

 話していても、小宮くんはぼそぼそと喋って、あまり顔を上げない。

 そういうところは、僕には特に気にならないし、高木くんも気にしていないようだ。

 高木くんは別にしても、僕と小宮くんなんかは、脇坂くんのようなスターとはまるで違う場所で、生きているわけだし。

 日陰というか、ジメジメした暗いところだ。いや、これは小宮くんに失礼か。

 ともかく僕は、そういうところから抜け出すことが、今はできる気がする気持ちが、我知らずに膨らんでいた。

 自分を新しくするチャンスが、今なんだと思う。

 まあ、そう思いながらもまずはTWCだ。

 僕には一つの決着をつける必要がある。




(続く)

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