プレイ時間:5時間〜
プレイ時間:5時間〜
一時間も訓練施設で剣を振り続けた。
変化らしい変化もなく、ただ技術を確認したようなものだけど、ステータスに変化があった。
三十分ほどの反復で、いきなりポップアップがあったのだ。
そこには「経験時間によりステータスが向上しました」とあった。
レベルが上がったわけではないけど、とにかく、ステータスは上がったので良しとしよう。
ちなみにこのゲームにおけるステータスは、生命力、体力、敏捷性、筋力、回復力の五つとシンプルだ。
ややこしいのは体力で、これは行動すればするほど減っていく。体力が切れると動けなくなるが、時間の経過とともに回復もする。これは緑草を筆頭にした回復系アイテムでも回復を促進できる。
生命力が切れると死がやってくる。
今回の訓練で僕のステータスで向上したのは俊敏性だった。
最初の数値は30だったのが、いきなり20も上がって50になった。
ただし、何が変わったのかはよくわからない。俊敏性はどういう時に意味を持つんだ?
後半の三十分の訓練では何も起こらず、そろそろやめるか、と飽きもあって訓練施設を出た。
今日はもうプレイする時間がないので、先に次に備えて装備を整える気になった。
商店街へ行き、新しい店を開拓すると、裏道の奥に「デギオン武具店」という店を発見した。表示されているマークはビギナーズショップと同じだ。ただデギオン武具店の方が、明らかに寂れている。
それでもこういう隠れ家にこそ良いものがある、とわけのわからない理屈で、思い切りを発揮して入ってみた。
「何が欲しい?」
店の奥の椅子で何かの本を読んでいたアバターが立ち上がる。びっくりすることに、NPCじゃない。音声でわかる。声色も、抑揚も、人間なのだ。
僕はボイスチャットをまだ切っているので、テキストを入力した。
「武器が欲しいんです。あと盾もください」
ふぅんとつぶやいたアバターは、抹茶色の髪の毛を刈り上げていて、背丈もあるし、顔の作りは中年男性のそれだ。その作り込まれた風貌は自分でデザインする以外にないわけで、それだけの自由度があるということは相当なレベルだろう。
いやいや、そもそも店を持っているのがすごい。
「レベルは?」
答えづらい質問だったけど、「 1です」と答えるよりない。
男性が笑顔を見せる。設定している表情バリエーションを使ったにしては、人間臭い笑みだ。
「ステータスを開示してくれ。金さえ払えばいい奴を揃えるよ」
言われるがままに、ステータス開示を選択。
男性は何度か頷き、それから思い出したように訊ねてきた。
「坊やの名前は?」
坊や?
(続く)




