病院の中で
その日の帰り、玲奈は中学校の校門で梨乃の事を待っていた。しばらく経って、制服の梨乃が、玲奈に気づいてやって来る。
「梨乃姉ちゃん!お〜い!」
「玲奈ちゃん!」
梨乃は玲奈の側に来て、一緒に歩き出した。道の途中で、玲奈は梨乃に探偵団の事についた話した。
「私ね、卓さんみたいに死出山怪奇少年探偵団を結成する事にしたの、梨乃姉ちゃんも一緒にやろうよ!」
「良いね!部活が無い日だったら参加するよ」
「やった、ありがとう!」
「それで、どんな事件があるの?」
「それは…」
玲奈はランドセルに仕舞っていた本を取り出して捲った。だが、今日の日付には何も書かれていない。
「今日はないみたい…」
「そうなの…」
玲奈は、事件がない事にホッとしながらも、何もない事にがっかりして、本を閉じた。
今日の梨乃は真っ直ぐ家に戻った後、荷物を持って戻って来た。そして、玲奈を連れて住宅街を抜けて、バスに乗る。
「今日は香澄のお見舞いに行こうと思ってね」
「香澄さん、どうなったのかな…」
梨乃の荷物の中には、着替えや替えの生活用品が入っていた。どれも、香澄の母親から預かったものだ。娘が大病を患っているというのに、両親は忙しくてお見舞いに行けない。そこで、その代わりに梨乃がお見舞いに行っているのだ。
梨乃は受付に行った後、看護師の案内で病棟に向かい、扉を開けた。
「香澄、来たよ」
「ごめんね、心配かけて…」
「そんな事ないよ」
梨乃は、荷物を置いて香澄の側に来た。香澄は以前に比べたら様態は落ち着いているようだが、まだ退院するまでには至らないらしい。香澄は、梨乃が持って来た荷物の中身を見て、安心したようだった。
そして、玲奈と梨乃は香澄の病棟を後にした。広い病院を歩いていると、すれ違った人の中に、見知った顔を見かける。
「あれ?智君?」
智は玲奈達に気づかず横切る。そして、行き着いた先は、先程玲奈達が居た香澄の病棟だった。
「智君、香澄と知り合いなの?」
「分からない…、そんな事は言ってなかったと思うけど」
玲奈は智の事を気にしながら、病院を後にした。