本当の気持ち
智を呼び止めた玲奈は、胸を押さえてこう言った。
「智君、夢で私に明かしてくれたでしょ?今までずっと寂しかったって、誰かに本当の自分を受け止めて欲しかったって。」
「ああ…、そう言ったよ。でも…、もう良いんだ。誰も死神と一緒に居たいとは思わないだろうから。」
諦めて開き直ったようにそう答える智に、玲奈は少し考えてから、こう話した。
「もしかして、私達と友達になりたいのかなって思ったんだ。だけど、作り方がよく分からなかったからそんなやり方をとったんだろうって。」
それを聞いて、罰が悪いと思った智は顔をしかめ、フードで顔を覆った。
「実は、私も同じ事を思っていたんだよ。今は友達が居るけど、昔、私はクラスの中で一人ぼっちだった。私は死神じゃなくて人間だけど、智君の気持ちはよく分かるよ。だから、今度は私がそんな智君に手を伸ばすよ。」
「玲奈も同じ事を思ってたのか…?」
智はフードを外して玲奈の事をじっと見つめた。
そして、玲奈は、それに続いて智にこう伝えた。
「それと、さっきはありがとね。狂気、断ち切ってくれたんでしょ?智君が斬らなかったら私あのまま一生過ごすのかと思ってたよ…。」
すると、智の身体が震え出した。
「何だよ…特に玲奈、お前は何なんだよ?!お前、俺がどんな酷い目に遭わせたのか分かってるのか?!俺は、お前を脅して、利用して、最後には斬りつけたんだぞ?!それなのに…、どうしてお前は笑って許して、しかも感謝までしてくれるんだよ?普通怒るだろ…、むしろ怒って見捨ててくれた方が気が楽なんだよ!」
智の目の前の地面が濡れだしたと思うと、智は涙を流していた。
「それなのに、どうして…。俺、なんで泣いてるんだろ、お前らと居ると胸が苦しいんだよ。思い通りにはいかないし、自分もだんだん分からなくなっていく。こんな苦しみ、お前らと会わなかったらきっと感じなかったんだろうな。」
今まで抑えていた智の感情が、堰を切ったように溢れ出していた。智は涙を必死に抑えようとしたが、溢れ出て、止まらない。
すると、玲奈は智を抱き締めた。死神と言っていた智の身体は温かく、鼓動も聞こえる。自分は死神だと言っていたが、実は人間とそこまで変わらない存在なのかも知れない。
「俺…人間を裁くから感情なんて持たないようにしてたのに…。」
「温かい…、死神の身体も温かいんだね。」
「ああ…、死神って名前なだけで死んでる訳じゃないからな。それに、俺は火の死神だからむしろ熱いくらいだと思うけど…。」
玲奈は智を自分の胸に寄せた。
「智君って優しいんだね。だってさ、そうして香澄さんの事助けようとしてたんでしょ?やり方はちょっとあれだったけど…、智君必死だったな。」
智は頬を赤らめ、それを隠すように玲奈のシャツを顔に当てた。
「俺に、優しくするなよ…。」
智は声を上げて泣き始めた。涙で玲奈の白いシャツも、オレンジのベストもびしょびしょに濡れてしまったが、それでも智は泣き続けた。
「強がってるだけが、強みじゃないよ。今まで苦しかったんだよね?これからは、私達の事、もっと頼って良いよ。」
玲奈の優しさに思わず智は、玲奈の胸にしがみつき、顔を擦り寄せた。
「ありがとう…、それと、玲奈、香澄さん、それからみんな…、本当にごめんなさい…」
そして、智は涙を拭って頭を下げた。それを見て、誰も智の事を責めようとは思わなかった。ようやく、智の真意を知る事が出来たからだ。
そして、泣き止んだ智は、皆にこう伝えた。
「俺は、誰かに死神である自分を受け止めて欲しかった。自分を必要としてくれる人を守り、一緒に過ごしたかった。それは、嘘偽りのない本当の気持ち、だから信じてよ。」
それを聞いて、皆は優しい眼差しで智を見つめていた。智の気持ちを受け入れるという事だろう。
「ずっと一緒には居られないけど、智君とも仲良くなりたいわ。」
香澄が真っ先にこう伝える。それに続いて、探偵団のメンバーもそれぞれの気持ちを智に伝えた。
「智君の事、そして死神の事を知りたい。そして、今度何かあったら一緒に戦おう!」
「俺もそうだ、同じ探偵団同士、クラス同士仲良くなろうな!」
「ねぇ智君、またみんなと一緒に死出山怪奇少年探偵団をやろうよ!」
智は、探偵団のメンバーを一人一人見て、こう答えた。
「あぁ…、これからも、よろしくな!」
智は眩しい笑顔を見せた。空はいつの間にか晴れ渡り、澄み切った青空が広がっていた。




