狂気の正体
皆に注目された智は、正体が知られたのに、どういう訳か不敵な笑みを浮かべてこちらを見た。
「智、玲奈が言う通り死神だったのかよ…」
「お前が怖がってる顔、中々見物だったよ?」
「なっ…!」
勤は怒って智に掴みかかろうとしたが、梨乃がそれを止めた。
「勤君!やめてよ。智君、あなたはどうしてこんな事をしたの…?」
智は目の色を元に戻して、俯いた。
そして、小さな声で今までの事を明かし始めた。
「香澄を助けたかったんだ。俺はあの『死神の書』で香澄が死ぬのを知った。だが、俺の力ではどうする事もできない。だから、玲奈にそれを拾わせて、お前らを利用したんだ。」
「お前…俺達を利用したのかよ?!」
智は悪びれもなくこう言い放った。
「ああ、そうだよ。本当なら、お前らを利用するだけ利用して、捨てるつもりだった。計画は完璧だったはずなんだ。思い通りにいくはずだった、だけど…玲奈の狂気と梨乃さんの能力については全く予想してなかった。そして俺の正体が暴かれてしまうこともな。俺が馬鹿だった、お前らに頼まなきゃ良かった…。」
智はこのまま立ち去ろうとする。それを止めようと梨乃はこう言った。
「そんな事なら、もっと早く言えば私達も協力したのに…なんで一人で溜め込もうとするの?」
「言いたきゃ勝手に言えよ、俺の気持ちはお前らには分からないさ。」
智は鎌を縮めてポケットの中にしまった。そして、何事もなかったかのように立ち去ろうとする。
その時、守が智の前に立った。どうやら、守は智に見覚えがあるらしく、こんな事を尋ねた。
「君は…、ひょっとして廉の息子か?」
「父さんの事、知ってるのですか?」
「ああ…、幼い頃に仲良くしていたんだ」
智は、父親の名前を聞いて驚いたが、すぐに諦めた顔になった。
「あなたが父さんの理解人、でも、そんな人居る訳ない。」
勤と梨乃は憐れみに似た表情で智ずっと心配そうに見つめていた。それを見た智は、突然顔をしかめた。
「何だよ…そんな顔で見るなよ!怒れよ…それか憎めよ。俺はお前らを利用して、脅して、捨てようとした。それなのに…、なんで心配そうに見てるんだよ?!」
智は現実から目を背けるように目を瞑り、梨乃達に背中を向けた。
香澄は、今までのやり取りを信じられない話だと思いながら聞いていたが、智が自分を助けようとしていた事に気づくと、智にこう言った。
「智君、私を助けようとしてくれてありがとう。でも、玲奈ちゃんを傷つけたのはどうかと思うけど…」
香澄の声に智は思わず振り向いた。そして、落ちていた仮面に気づき、それを拾いながら独り言のように呟いた。
「玲奈の狂気を断ち切ったんだ。俺の鎌ではこの世のものは斬れねぇよ」
智はポケットの中にしまった鎌に手を触れた。
「玲奈が狂気にも陥っていたのは自分の力の暴走だ。それを解くには何らかの力で狂気を断ち切らなければならない。」
「じゃあ、玲奈ちゃんは無事って事…?」
「命を奪わなかっただけ感謝するんだな、本当はそうしたい程恨んでたけど」
智は、フードを被って皆の前から立ち去ろうとした。その時、智を呼び止める声が聞こえる。
「待って!」
智の背後には、鎌で斬りつけたはずの玲奈が居た。玲奈は立ち去ろうとする智の腕を掴み、こう言い放つ。
「それは智君の本当の気持ちじゃないんでしょ?」
「玲奈…、どうして」
智は気が動転して、思わず足を止めてしまった。




