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前世の記憶


 智は、香澄の目の前に立って、こう言い放った。

「覚えていないかもしれませんが、僕と香澄さんは前世で恋人同士だったんです。」

そう言って、智は自分の前世の事について突然話し出した。



 生前、智と香澄は人間で、付き合う程の仲だった。二人は仲が良く、結婚の約束もしていた。

 ところが、前世の香澄が病気になってしまった事で、その約束が叶えられなくなった。そのショックのあまり、全然の智は、香澄を突き放すような態度をとってしまうが、その事を後悔していた。

 ところが、結局謝る事が出来ずに、二人とも離れ離れになったまま亡くなってしまったのだ。



 その事を思い出した智は、ずっと香澄を探していた。そして、出会った時に香澄が死にかけている事に気づいた。智は、そんな香澄を助けて、よりを戻そうと考えていたのだ。

「もう一度、やり直しませんか?実は、あの時の事をずっと悔いてて、だから…」

「智君…、ごめんなさい!」

そう言って、香澄は深々と頭を下げた。一同は開いた口が塞がらず、智は呆然と立ち尽くしていた。

「前世とか、そういうのよく分からないんだけど…、智君、私は私であって前世の私じゃない。だから、あなたにはそういうのにこだわらず、自由に生きて欲しいんだ。だから、こういう答えになってしまった…。」

智は鋭い眼光で香澄を睨みつけた。

「香澄さんは僕よりも大切な人が居るんですか…?そういえば、香澄さんの横に居た男の人って…」

「豊君とは仲良くしてくれてるだけで、付き合ってる訳じゃないの。私は、智君の事も大切に思ってるけど…」

「そうですか…」

智は俯いてその場を去ろうとする前、玲奈にポツリとこんな事を呟いた。

「僕、探偵団辞める事にするよ」

玲奈が呼び止める前に智は消えてしまった。




 智が居なくなってから、香澄はぽつりとこう呟いた。

「これで、良かったのかな…」

智を振った事を香澄は悔いていた。智の為とはいえ、冷たく突き放して良かったのだろうか。

「良かったんじゃない。前世で繋がりがあるからといって、必ずしも結ばれる訳じゃないし。」

「だといいんだけど…」

香澄はそう言って、公園から出ようとした。その時、香澄の身体が突然縛られたように動かなくなった。



 そして、空に暗雲が広がり、遠雷が聞こえた。夕立だろうか、天気予報では晴れだというのに急に天気が悪くなった。

「何か近づいて来る…」

玲奈の顔色が急に悪くなった。普段は気配に鈍感なはずの勤も何かに気づいて怯えている。

「梨乃さん…」

勤は梨乃の袖を掴んで震えていた。

「梨乃、言い忘れていたが死神は本当に居る。現に僕は会った事がある。」

梨乃は震える勤の背中に手を当てながら、守の話を聞いた。守が言うなら本当の事なのだろう。

「近づいて来ているな…」

梨乃は玲奈達を守ろうと、ポケットの中にお札を入れていた事を確認し、気配がある方を睨んだ。

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