再び現れた少年
また夜が来た。玲奈はその日も夢を見た。玲奈は傘を差して、雨が降る森の中に立っている。それは、玲奈が死出山から帰ってきた後に見た夢と同じだった。足元が悪い中、玲奈は森の中を歩いていく。
しばらく歩いていると、開けた場所に出た。そこには、朽ち果てた墓地になっていて、その中の墓石から、誰かの泣き声が聞こえる。玲奈がそこを覗くと、あの時の少年が俯いて泣いていた。
「玲奈…?」
「また会ったね」
玲奈は、その少年に傘を差して、笑い掛けた。
「どうして、玲奈は俺の夢の中に来るんだ…?」
「これは、君の夢なの?」
玲奈がそう聞くと少年は頷いた。
傘を差されているはずの少年の肩が震えていた。そんな少年を心配して、玲奈はこう尋ねる。
「何か怯えてるの?」
「別に怯えてなんか…」
少年は強がってるようだったが、その声は小さく、震えていた。
「実は、私、ずっと怯えてるんだ。信じてもらえないかもしれないんだけどね、私、死神に狙われてるんだ。何でかは私にも分からないんだけどね。それと、私には、私も知らない私が居るんだ。それは、いつの間にか現れて、その時は何もかも分からなくなって、理性も効かなくなる。私は一生、狂気を、もう一人の私を持ちながら生きていかないといけないのかな…。」
「あっ…」
「君は、何に怯えてるの?」
「本当の自分を周囲に知られるのが、怖いんだ…。だけど…」
少年はフードで顔を抑え、小さく震えていた。
「俺は…、寂しかっただけなんだ。ずっと胸が苦しかったんだ…、自分を偽り続けるのも、誰かをずっと騙すのも、もう嫌なんだ。誰かに本当の自分を受け止めてほしい。でも、そんな人は現れないんだろうな…。」
玲奈はそんな少年を胸に寄せ、そっと抱き締めた。
「どうして…」
「私が、本当の君を受け止めるよ。だから…」
少年は、玲奈の事を拒もうとしたが、夢で気持ちが偽れないのか、縋るようにしがみついていた。
「そういえば、何でずっと顔を隠しているの?」
玲奈はそう言って少年のフードに手を掛けようとすると、少年は慌ててフードを押さえた。
「嫌だ!玲奈に正体を見られる訳には!」
玲奈は慌ててフードから手を外した。すると、少年はこんな事を言い出す。
「俺が、お前が恐れている死神だって言ったら、同じ事が言えるか?」
少年の姿はいつの間にか消えていて、その代わりに、あの時の死神が目の前に立っていた。
「どうして…」
死神は玲奈の胸に鎌を突きつけた。
「俺はお前に見込みがあると思ったんだ。渡辺茂の孫娘なら、本を拾って俺の言う通りにしてくれると思った。それなのに、俺の正体を暴こうとするとか、俺の気持ちを揺さぶろうとか、するな」
玲奈の目は一瞬赤く光ったが、どういう訳かすぐに正気を取り戻した。それに構わず、死神は鎌を振り下ろそうとする。
「お前なんか、消えろよ!」
「それが君の本当の気持ちなの…?」
鎌を突きつけた死神の手は震えていた。きっと死神も本心で言っている訳ではないのだ。
仮面越しだったが、死神が泣いているというのが分かった。涙が溢れているのが見えたからだ。
そして、死神は玲奈の魂を奪うのを諦めたのか、鎌をしまい、立ち上がった。
「今度会った時は、覚えとけよ」
そう言って、死神は雨の中に消えてしまった。
そして、玲奈が目覚めると自分の部屋に戻っていた。玲奈はいつもと同じように学校に行く為支度をしていたが、昨夜の夢が気になる。
「あの子は…、死神はなんで私の夢に出てくるんだろ…」
玲奈は、学校が終わったら梨乃に聞いてみようと思い、今日も学校に向かっていった。




