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死神との戦い


 翌日、玲奈は久々に梨乃と一緒に登校していた。玲奈は昨日死神に出会った話を、早速梨乃に話した。

「そっか…、そんな事があったんだね」

「うん…、怖かった。死神は正体暴こうとしたから、私の魂抜き取るって言ってたんだ。魂抜かれたら死んじゃうんでしょ?!どうしよう…、何で私は若いはずなのに死神に目を付けられてしまったんだろう…」

梨乃は、妙だなと思った。竜神の事件に巻き込まれた時、死神は生きた人間である梨乃を助けてくれた。



 それなのに、玲奈と会った死神は、玲奈を殺そうとしているのだ。同一人物だとは到底思えないが、それにしても不思議な話だ。

「玲奈ちゃんが出会ったのは、どの死神なの?」

「私に最初この本を渡した死神だよ」

玲奈はランドセルの中から本を取り出して梨乃に手渡した。すると、和綴じになった本が梨乃の手の中で分厚い洋書のような見た目になった。

「この本は、持ち主の霊力で見た目が変化するみたいね」

「そうなの?」

梨乃がその本を玲奈に渡すと、本の見た目は元に戻った。

「初めて見た時からこの世界のものじゃない気配を感じた。死神に渡されたのなら、どうしてその死神は、玲奈ちゃんにこれを手渡したんだろう。」

確かにそうだ。死神は、玲奈に対してこの本を渡して、事件を解決してほしいと言ったのだ。具体的な理由は分からないが、きっと何かあるに違いない。

「私達が会った死神は三人居る。一人は玲奈ちゃんに本を手渡した死神、もう一人は私を助けてくれた死神、あと一人は、玲奈ちゃんが見た智君を攫った死神ね。」

その三人にどのような関係があるのかは分からないが、少なくとも、この世界に死神は複数人居るという事だ。

 その中の一人が、玲奈に対して何かやろうとしている。梨乃は、その死神に対して話をつけたいと考えていた。





 その日の放課後、梨乃は一人で帰っていた。その時、周囲の『風』に運ばれて何処からか声が聞こえる。

「言ってくれたな?こっちに来い」

梨乃はその『風』を追って、町外れに向かった。すると、待ち構えていたかのように誰かが立っている。その人物は黒いパーカーのフードを被り、梨乃の方を向いていた。

「あなたが、玲奈ちゃんを襲った死神ね」

「そうだ」

その死神は、半分が白、もう半分が黒の仮面を被り、鎌を向けていた。そして、ゆっくりと梨乃に近づいて来る。

「危害を与えるなら、容赦しないから」

梨乃は死神に向けてお札を持った。

「人間の力で俺に敵うと思ってるのか?」

死神は一旦その場を離れると、梨乃の周囲を炎で焼き尽くした。

「地獄の炎に焼かれろ、俺に逆らった罰だ」

梨乃の周囲は火で包まれている。梨乃は周囲の『風』を巻き上げ、一気に放出した。

「『旋風砲』!」

梨乃が技を放つと、爆風が吹いて火が消し飛んだ。

「お前…、ただじゃおけないな。」

すると死神は手を真上にかざした。

「『怨念の雷』!」

雷の衝撃で梨乃は飛ばされ、壁に当たった。


 死神はこっちに向かってくる気配を見せない。それに気づいた梨乃は死神の方へと一直線に走っていった。

「近づいてところで勝てるものか!」

「一体、何かしたいの?!」

「俺の邪魔をするな」

死神は鎌を振り上げたが、間一髪で避けられた。

「『疾風刃』!」

梨乃は、その場から一旦下がって風刃を食らわせた。

「別に私はあなたをどうしようとは思ってない。」

「ならば何故ここまでやろうとする?!」

「さぁ…玲奈ちゃんに危害を加えようとしたからかな。」

死神は梨乃から離れて鎌を構えた。

「『風』なら俺も使えるさ、『風集の鎌』!」

鎌は『風』を帯び、それを持った死神は梨乃の方に突進して来る。

「『霊封鎖』!」

梨乃が放った『風』の鎖が死神の足に巻き付き、その衝撃で死神は倒れた。仮面が外れ、地面に転がる。



 梨乃はそれを拾い、死神の方を向いた。

「返せ、その仮面を返せ!」

死神は顔を隠すようにフードを押さえ、ふらつきながらも立ち上がった。 

 戦いに夢中で気づかなかったが、死神の身長は梨乃の肩にやっと来るくらいだった。

「あなたは霊力を消耗している。今の状態では私は倒せない。」

「どうしてそれを…」

梨乃に仮面を取られた死神は、何処か弱々しく見えた。半ズボンで剥き出しの膝は傷だらけで、痛々しい。

「人間なんて…、所詮脆い存在なんだよ、俺達には敵わない」

死神は梨乃の両肩を掴み、首筋を噛んだ。その衝撃で、梨乃の手から仮面が落ち、死神がそれを拾う。

「お前の血を吸ったんだよ、痛いだろ?」

梨乃は噛まれた首元に触れた。確かに、そこから血が滲んでいる。

 だが、不思議と梨乃は痛いとも、その死神が怖いとも思わなかった。それを見て、逆に死神が恐れを見せる。

「何故だ…、どうして怖がらないんだ?」

梨乃は死神を睨んでいると、死神は梨乃から目を逸した。

「『風見』の話は本当だったんだな。陰陽師と死神の血を引いているだけはある。」

そして、死神が梨乃から立ち去ろうとした時、梨乃はその腕を掴み、無理やり自分の方を向かせた。

「ねぇ、あなたはどうしてこんな事をしたの?」

「その様子だと、正体も知られているようだな…、あいつらには絶対に言うなよ。言ったら承知はしない。」

死神はそう吐き捨てると、足を引き摺って何処かに言ってしまった。その様子を梨乃は何処か哀れみの目で見ていた。




 梨乃から立ち去った死神は、誰も居ない事を確認し、公園の茂みの中に隠れて仮面を外した。

 仮面の奥に見せたその顔は、智のものだった。智は俯きながらポツリと呟く。

「梨乃さんに正体知られていた…、二人に暴かれるのも時間の問題か…?」

そういった後、智は胸を抑えて苦しんだ様子を見せた。その原因は、どうやら先程取り込んだ梨乃の血のようだった。



 梨乃の血を吸った智だが、本来死神は血を吸う事は絶対にない。智は、死神の中でも“奇形”と呼ばれる存在で、怪や妖の性質を持ち合わせている。

 血筋と、奇形の影響で強い力を持つ智だったが、蓄えられる霊力が少なく、すぐに切れてしまう。今回梨乃の血を吸ったのは、霊力切れを起こしていたからだったが、それが、逆に霊力を削いでしまう原因になってしまった。



 霊力は、同じ種族や属性だとしても、人それぞれ種類が異なり、相性がある。その為、他人の霊力を奪うには、それを見極めながら取り込まなければならない。それは、妖や怪も同様だった。


 強い霊力は薬になるが、相性が悪ければ毒にもなり得る。特に、元々の霊力が少なく、人の霊力を取り込む事が多い智にとっては、対象の霊力の相性は重要だった。

「解毒に時間が掛かる…、この様子だと、しばらく戦えそうにないな」

智は吐き気を抑えながら、誰も居ない事を確認して、自分の家に帰っていった。


 智は梨乃に負けた後、ずっと梨乃達の事を考えている。どうやら、胸が痛むのは血のせいだけではないようだった。




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