荒れ狂う竜神様
玲奈は、奈々と一緒に攫われた人を探していた。小さい山であるはずなのに、普段より広く感じる。空間がねじ曲がったようだった。
玲奈達は、その中で人の気配を探した。だが、気味が悪い程に誰も居らず、辺りはしんとしている。
「誰が攫われたのか分かる?」
「分からない…」
奈々はそう言って首を振った。同じように連れ去られた人が居る事は知っているようだが、誰が連れ去られたかは知らないようだった。
玲奈は更に山の奥へ進んでいった。森はだんだん深く暗くなっていく。
玲奈は、隣に居た智がどういう訳か青褪めた顔をしている事に気づき、声を掛けた。
「智君、どうしたの?」
「なんでもない!」
智はそう強く言った後、玲奈達から身を離すようにスタスタと歩いていく。
「待って!」
玲奈は慌てて智を追い掛けた。智は何故か目元を押さえ、下を向いている。
「智君が感情的になったの、初めて見たなぁ」
「そうか…?」
智は一度歩くのを止めて、玲奈の方を向く。
「私、智君の笑顔が見てみたいんだ。でも…、感情表すのが苦手なら、仕方ないよね」
智は顔をしかめて、玲奈から目を背けた。
しばらく歩いていると、開けた場所に出た。そこには連れ去られたと思われる人々が、大勢集まっている。
「連れ去られた人はここに居たんだ、でも…」
人々は皆眠ったように意識がなかった。そして、玲奈が揺さぶっても起きる気配がない。
「この人達を起こして、町に帰さないと…」
梨乃が眠っている人にお札を貼ると、どういう訳か目を覚ました。どうやら、梨乃の霊力が効くらしい。
そして、梨乃の力によって目を覚ました人々は、無事に山を降りていった。それを見た玲奈達も、山を降りていく。奈々は同じように攫われていた両親と再会し、帰って行った。
玲奈達も家に帰ろうとすると、空に竜を見つけた。平穏な日常の中の異物のように、竜はそこに居る。
「あれが…、竜神?」
竜は空中を何回も回った後、何処かへ飛んでいく。その方向には、香澄が入院している病院があった。
「香澄さん?!」
智は急に顔を真っ青にして、慌てて走ってしまった。そんな智を、玲奈達は必死に追い掛けた。




