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友達と恋


 H県N市白浜町青波台、そこは海と山に挟まれた長閑な町だ。そこにある一人の少女が暮らしている。


 名前は渡辺玲奈(わたなべれいな)、巷では少し名が知られている怪奇小説家、闇深太郎こと、渡辺茂の孫娘だった。その影響もあって、玲奈は話を考えるのが好きだった。


 玲奈は、明るくて優しい子だが、気が触れていて、人とズレた考えを持っていた。その為、同級生で、玲奈と友達になりたいという人は、幼稚園や小学生の最初の頃は中々現れなかった。



 その頃の玲奈は、孤独で、ずっと教室の隅の方で本を読んでいた。生まれつき何故か霊感があった玲奈は、何もない所を指差しては怖かっていた。その為、玲奈も、周囲の子供も、お互いの事を怖がって、近づきもしなかったのだ。



 玲奈は幼馴染で二つ年上の風見梨乃(かざみりの)と遊ぶ事が多かった。梨乃は、茂の知人である風見友也の娘で、玲奈と同じように霊感があった。その為、玲奈が言う事も信じてくれた。

 玲奈にとって、梨乃は血が繋がっていないが、姉のような存在で、年上の人には敬語を使いなさいと注意深く言われていた玲奈も、梨乃に対しては敬語を使わなかった。




 学校では孤独だった玲奈、そんな日々が続いた三年生の時、玲奈に話してくれた人が居た。名前は加藤愛花(かとうまなか)、玲奈が通う美容室の主人の娘だった。愛花は、玲奈に興味をもってくれていて、一緒に物語について話し、遊ぶようになった。



 そして、同じ頃にもう一人玲奈に話し掛けてくれた人が居た。名前は荒川勤(あらかわつとむ)、親が茂や友也と同じ志手山町出身だった。玲奈が、茂の孫娘だというのを知ると、驚き話し掛けてくれたのだ。玲奈と勤は、茂の話で盛り上がり、毎日遊ぶようになった。


 

 友達が二人になった玲奈は、それをきっかけに他の子供達と話すようになった。一人じゃなくなった玲奈は、一人だった時よりも笑う事が多くなり、毎日を楽しく過ごしていた。




 玲奈と愛花は、物語の話だけでなく、年頃の女の子らしく、恋の話もしていた。今はそうでもないが、愛花はよく男子に可愛いと言われて、本人曰く、モテていたらしい。

「思えば、私のモテ期は保育園の時だったよ」

「そうなんだ…」

考えてみれば、幼稚園の時ずっと一人ぼっちだった玲奈だ。男の子どころか、女の子とも親しく話した覚えがない。

 だが、今の自分だったら、ひょっとしたら恋もするかも知れない。そう思った玲奈は、愛花にこう呟いた。

「私、恋をしてみたいな」

「へぇ、そうなの」

愛花は、玲奈がそんな事を言うのが意外だというふうにそう言った。

「私は、どんな子を好きになるんだろう…」

「好きになるのは何も同級生の男の子とも限らないよ?女の子を好きになる事だってあるし、大人かもしれないし」

「そっか…」

今は、どんな恋人が良いのかイメージが沸かない玲奈。だが、いつか、きっと自分が好きになって、自分の事も好きになってくれる、そんな存在が現れると信じている。それがいつになるかは自分でも分からないが、一生に一度は何処かで会えるような気がした。




 玲奈と愛花、それから勤は強い絆で結ばれ、学校の中でも、外でも仲良くしていた。そして、その中に梨乃も加わり、四人は近所に住むもの同士、一緒に遊んでいた。


 そんな日々がずっと続くと思っていた玲奈だった。だが、二年後、五年生に進級した玲奈の前に、平穏な日常を大きく変える出来事が訪れるのだった。


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