消えた本と記憶
学校で目を覚ました玲奈は、自分の身体なのに、そうではない感覚がした。何かやらなければならない事があったはずなのに、それが何か思い出せない。
玲奈は、まず勤に話し掛けた。話を聞くと、勤も同じような感覚になっているらしい。
「何か…、重大な事を忘れているような気がするの」
「それは俺もだ、今まで色々やっていたはずなのに、それをすっかり忘れているんだよ」
すると、二人の間に愛花が入ってきた。
「おはよう、玲奈ちゃん」
「おはよう」
玲奈は愛花と話していた。こんなに話したのは久し振りだった。どうしてそうなのかは分からない。
玲奈は自分の席を見た。すると、一番後ろの一席だったはずなのに、隣に席が出来ていて、誰かが座っている。
「愛花ちゃん、あの子は?」
「玲奈ちゃん知らなかったの?!転校生の剣崎智君だよ、玲奈ちゃんの隣にいつも座っているのに…」
「智君…?」
玲奈は智の事を見た、智は玲奈に気づいて振り向いたが、
「おはよう、智君」
「忘れたはずなのに、どうして僕に親しく話しかけるんだ?」
「忘れた…、ってどういう事?」
智はそれ以降、玲奈に話す事はなかった。玲奈は何度も話し掛けたが、智は応えてくれない。
結局、智は玲奈とまともに話す事もなく、帰りも一人で帰ってしまった。玲奈と勤は、二人で話しながら帰って行った。
「俺達、何を忘れているんだろう…」
「分からない…、でも、梨乃姉ちゃんだったら何か知ってるのかな…」
「どうして、今梨乃さんの所に行くんだ…?」
勤は、何故玲奈が梨乃の所に行くのか分からなかった。玲奈も、どうして梨乃の所に行こうと言ったのか、分かっていないようだった。
そして、二人は梨乃の家に辿り着いた。梨乃は、二人が何かを思い出せないという話を聞くと、どういう訳か頷き、こう答えた。
「二人は何かの術を掛けられている。私も掛けられたけど、格下の相手だから掛からなかった。」
「術…?」
術、霊術や魔術の類いだろうと梨乃は言った。だが、探偵団の今までの記憶が無い二人は、術の事が信じられない。
「記憶を取り戻すには何かきっかけが必要なんだけど…」
二人と違って記憶がある梨乃は、自分の力で二人の記憶を思い出させようとした。
だが、今の梨乃には記憶に関する術はない。それに、記憶を取り戻すきっかけになりそうなものも持っていない。
二人はずっとこのままなのだろうか。霊術を使えるようになった梨乃だが、二人を助ける術は持っておらず、自分の無力さを悔いた。




