風見の始祖
梨乃と卓は、山の中腹に辿り着いた。目の前には、崩れ掛かった建造物がある。二人がその中に入ると、眩しい光に包まれた。
梨乃と卓は先程の世界とは異なる世界に辿り着いた。そこは、清蓮が造り出した亜空間だった。陰陽師を象った対の銅像は輝いていて、柱の一つ一つも光を放っている。
その建物の奥に、風見清蓮が居た。清蓮は奈良時代の陰陽師で、死出山を護り、都の妖を退治した言い伝えが残っている。
そして、清蓮は、自らが魂になる際に、死出山にこの空間を造り出し、『風の神殿』とともに転移させた。
清蓮は、生前と同じ姿で、梨乃と卓に話し掛けた。
「久しいな、卓…。そして、『風縛』の能力を持つ者、梨乃よ」
「『風縛』の能力…?」
『風縛』の能力とは、魂や力の流れである『風』を縛り、自分の意思で操る事が出来るというものだった。その力を使えば、梨乃も清蓮と同じように霊術を使えるらしい。
清蓮も、梨乃の力の強さには驚いていた。そして、それに警告するようにこう言い放った。
「強い力を持つものは、害悪を呼び寄せる事がある。また技によってはとてつもない負荷がかかり、自らを蝕んでしまうんだ。」
更に清蓮はこう続けた。
「後は…卓は知ってると思うが、この力は目を背けてしまうような真実を見てしまうかも知れない。力は自分の意思で使ってこそだ。決して、それに飲まれたり、力に使われたりしてはいけない。」
そこまで言って清蓮は、梨乃の手の平に水晶で出来た数珠を載せた。
「これは…?」
「これは我の力で造った霊水晶だ。霊力を封じた水晶で、風見の力を増幅し、抑制する力を持っている。今はまだ出来ないが、強い力を持つ梨乃も、きっと自分の力で霊水晶を造る事が出来るさ」
「ありがとうございます」
梨乃はそれを受け取って、お辞儀をした。
そして、清蓮は二人の前から立ち去ろうとした。去り際に、梨乃は清蓮にこんな事を聞いた。
「清蓮さん、あなたは死神について何かご存知ですか…?」
清蓮は少し考えてこう答えた。
「我は知らない…、ただ、彼奴なら何か知っているかもしれない。」
「彼奴って…?」
「いや、こちらの話だ。気にしないでくれないか…?」
清蓮はその言葉を言い切る直前に、空間ごと消えてしまった。二人は光に包まれ、元の世界に戻っていく。
梨乃の手には霊水晶の数珠が握られたままだった。それを見て梨乃は、何かを思い出したように勢いよく山を駆け下り、玲奈達の所に戻って来た。




