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渡辺邸で


 目が覚めた玲奈は、突然目の前に現れた茂を見て驚いた。

「あれ?おじいちゃんどうしてここに居るの…?」

「玲奈ちゃんは狂気に陥ってたのよ?」

「覚えてない…」

玲奈は先程狂気に陥っていた事を覚えていない。梨乃は、覚えていない方が玲奈にとっては幸せだろうと思っていた。




 玲奈達は茂に連れられて、渡辺邸に向かった。茂によると、卓達が今遊びに来ているそうだ。かつての探偵団に会えると思った玲奈は、卓達に会えるのを喜んだ。

「それにしても、どうして玲奈ちゃんは狂気に陥ったんだろ…?」

「ごめんな…、ひょっとしたら私のせいかもしれない」

「どうしておじいちゃんが謝るの?」

「ひょっとしたら、玲奈が作家になりたいと思ったからなんだ…。優太の時にはそうならなかったから…」

茂は何度謝っても、謝り足りないと頭を下げていたが、玲奈は何故茂が謝るのか分からなかった。

「あの時は、瞬君の力があったから私は目が覚めたんだ。それなのに、玲奈が狂気に陥ってしまった。あれはまだ終わっていなかったんだ…」

「おじいちゃん…」

玲奈は、茂にどういうふうに声を掛ければいいのか分からなくなった。





 渡辺邸に辿り着くと、先に来ていた風見卓と篠原優月、影山亮也が待っていた。かつて玲奈達と同じように探偵団をやっていた三人は、玲奈達が探偵団をしていると聞くと、嬉しそうにしていた。

「こんにちは、みんな」

「玲奈ちゃん、会いたかったよ」

「お久し振りです!」

梨乃は、久々に三人に会えて、嬉しくなった。すると、卓が一歩前に出て、こう言った。

「梨乃、ちょっといいか?」

「卓兄さん…?」

梨乃は卓に呼ばれ、縁側に座った。



 卓は瞬の息子で、梨乃にとっては従兄弟にあたる。梨乃は昔から、卓の事を本当の兄のように慕っていた。

「最近、自分の力が強くなっている気がするんです。そして、前世の記憶みたいなのも見えるようになっていまして…。」

梨乃は交差点で少女を助けた時、過去の自分と重ね合わせていた。産まれる以前に、似た光景を見た事がある。梨乃はそう思いながら、少女を助けたのだ。



 そんな事を考えていると、梨乃の目が青く光った。強い力を持つ者は、力を放つ時に目の色がその力の色に変わる事がある。風見の力は青色で、瞬や卓も同じ色に輝いた事があった。

「目が青く光っている…。俺も昔、力を使う時にそうなっていた。梨乃なら、ひょっとして『風見の始祖』以上の力を使えるかもしれない。」

「『風見の始祖』以上の…?」

卓は頷いた。

「近いうちに死出山に行った方がいいかもしれない。山の力が弱まっている。清蓮の力があるのも今のうちだろうから…。」

「そうなんですか…?」

それから梨乃は、卓から今の死出山の事や自分の力について話を聞いていた。すると、死出山について話しているのを聞いた玲奈と優月がやって来て、四人でずっと話し込んでいた。





 同じ頃、勤と智は、亮也と一緒に茂の書斎に居た。勤は、壁が埋め尽くされる程にある茂の本や資料をじっと見つめていた。

「勤君、どうしたの?」

「玲奈の言う『死神』の情報がこの本棚にある気がしたんです。」

それを聞いて、智は顔をしかめた。

「勤、狂人が言っている事を信じるのかよ?」

「玲奈はほんの一瞬狂気に陥ってただけだ!それに、俺は友達が言った事を信じてやりたいんだよ」

「死神なんて狂人の妄言かもしれないし、死出山の事も本当かどうか確証ないだろ?」

「智はそういう話信じてないんだな」

勤は茂の本棚を漁り、一つの本を手に取った。

「『世界の伝承』、これかな?」

勤はその本を捲り、あるページで手を止めた。

「死神…、死を司る存在と言われる。姿形は様々だが、骸骨の姿とも、老人の姿ともされる。」

「有力な情報は手に入ったか?」

「いや、何も…」

勤は本をしまい、亮也の所に戻った。



 亮也は、昔のアルバムを見ている。どうやら、かつて玲奈達と同じように探偵団をしていた頃の事を思いだしていたのだそうだ。

「それにしても、玲奈と集まって僕達と同じように探偵団をやっているなんて、凄いね」

「はい!俺の推理力見せつけてますよ!」

勤が自信満々に語る中、智はずっと話を聞いている。そんな智を見て、亮也は話を振った。

「君は僕と似た気を感じるね」

智はどういうふうに答えたら良いのか分からないようだった。

「こういう時は、嘘でもありがとうございますって言って笑えばいいだろ?なっ、そうだろ?」

勤はそう言って智の肩を叩こうとした。すると、智にその手を掴まれる。その力は、白くて細い腕からは想像つかない程に強く、振り解けなかった。

「お前…、気安く触るな」

智は普段の物静かな声とは異なる、淡々として、しかも怒りが含まれた声を上げた。そして、鋭い眼光で睨みつける。

 勤は、そんな智を見て、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなった。

「智君、どうしたの?」

智は我に返って、勤から目を逸した。

「いや、何でもありません…」

智はそれっきり、亮也の前で声を上げる事はなかった。


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