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第75話 冒険者探索チームとの顔合わせ

 冒険者ギルドに到着すると、ブルーノさんたちが馬と馬車を留置きに行ったので、エステルちゃんとふたりで先に中に入る。


 玄関ホールでは、いつものようにエルミさんが待っていた。

 ホールから続くラウンジには、これもいつものごとく冒険者たちがたむろしている。

 なんだか今日は人数が多いよね。昼間の仕事とかないのかなぁ。

 ギルド職員がギルド長のジェラードさんを呼びに行き、俺たちはホールにある椅子に腰掛けてブルーノさんたちが合流するのをしばし待つ。



「お、ザカリー様だぜ」

「やっぱり頭の上にカラスだよな」

「首ちょんぱの姉御も一緒だね」

「きゃっザカリー様、可愛いわー」

「今日はなんなんだ?」

「知らねーのか、例のほら、大森林探索メンバーの顔合わせだとよ」

「くそっ、俺たちも立候補したのによ。落とされちまった」

「俺たちも」

「おめーらのパーティじゃまだ無理だよ」

「だってよ、俺たちでザカリー様と姉御を護りたいじゃねーかよ」

「あんたたちじゃ、逆に護られちゃうわよ」

「え、そんなに強ぇーのか」

「おまえ、3年前のこと知らないのか」

「3年前? 去年こっちに来たからな。で、3年前ってなんなんだ」

「そりゃおめぇ、わずか5歳のザカリー様がよ……」

「あんた、それ、こんなとこで話すと、首ちょんぱよ」

「おっ、疾風はやてのブルーノが来たぜ」

「騎士団の姉さんたちも一緒だ。ふたりともいい女だなー」

「でもよ、可愛さじゃエステルの姉御には敵わねぇよ」


 もう、うるさい。今日はヒマ人冒険者の人数が多いから、耳に入る会話が多いし。



「やあザカリー様、ご足労いただいてすまないな」

 ギルド長がやっと出迎えに来た。


「ささ、早速だがこちらに」

 俺たちは、ジェラードさんとエルミさんに先導されて、夏にギルド会合でも使われた広い会議室に案内された。

 さて、探索メンバーはどんな人たちなんだろうね。



 会議室に入ると、10名の男女が立って待っていた。

 おやおやっ、あの人たちは。


「えーとだな、結局、探索メンバーの人選はこうなった。それじゃ、あらためて紹介するぞ。初めて顔を合わすやつらもいるだろうしな」


「まずは、ブルーストームのメンバー5人だ。クリストフェルとメラニーは知ってるよな。クリストフェルが戦士で、メラニーは魔法職だ」

 この前の会合で会ったとき、たしか獅子人のクリストフェルさんは、剣だけじゃなくてメイスや素手の格闘なんかもこなす、万能型の戦士だって言ってたな。

 メラニーさんは攻撃特化の魔法職だ。どんな魔法を使うんだろう。


「それから、この前の会合にはいなかったメンバーだ。まずドナテーラ、彼女は斥候職だ。そのデカイのがラインマーで盾使い。最後が魔法と弓を使うアウニ。彼女は回復魔法ができる」


 ドナテーラさんは斥候職ということだから、ブルーノさんが抜けた後に入ったのかな。

 ラインマーさんはでかいな。うちの父さんやウォルターさん、クレイグ騎士団長よりも背が高いんじゃないかな。

 そして回復魔法ができるというアウニさんは、エルフさんだ。ギルドの女性エルフのエルミさんと名前の語感がなんとなく似てるけど、関係があるのだろうか。



「次にもうひとつのパーティだが、こっちはまぁいいか。ザカリー様もご存知だろうし」

「おいおい、ギルド長。初対面の騎士団の方もいるんだから、いちおう紹介してくれよ」

「わかったわかった。ザカリー様よ、先日も申し上げたように選定に難航したんだが、結局こいつらの熱意に負けちまってよ。もちろん実力はあるがな」

 はい、この人たちは良く知ってますよ。


「それじゃ、あらためて紹介するぞ。サンダーソードの5人だ。これがニックで剣士、次がロブでこいつも剣士、それであいつがエスピノでやつも剣士だ。それから、こっちの姉さんがマリカで斥候職。最後の女性がセルマで魔法職だ。おいニック、今さらで聞くが、剣士が3人もいるからサンダーソードってパーティ名なのか?」


 5歳で初めて冒険者ギルドを訪問した際、お試しの模擬戦闘の相手だったのがニックさんだ。

 あの時は壁に吹っ飛ばしちゃって、ホント悪かったね。

 俺が冒険者の連中から密かに首ちょんぱ様とか言われたり、エステルちゃんが首ちょんぱの姉御とか呼ばれるのも、あの時のことがあったからだよ。

 でもそれ以来、夏至祭や冬至祭でこの人たちと出会うと、妙に懐いてくるんだよね。


 ギルド長も言っていたように、このパーティは男性剣士が3人もいて、ニックさんとロブさんはガタイの良いロングソード使い。

 エスピノさんは細身の狼犬人で、たしか細剣使いじゃなかったかな。実際に剣を振るうのは、まだ見たことがないけど。

 それでマリカさんは、いかにも敏捷そうな猫人の斥候職。

 セルマさんは人族の若い女性で、攻撃魔法職だよね。



 それから、こちらのメンバーの紹介をした。

 現在絶賛上機嫌中で、「監視役で将来の愛人」とか言い出しかねないエステルちゃん、「ザカリー様の配下でやす」とか言いそうなブルーノさんがいるので、俺から紹介しました。


 あ、もちろんクロウちゃんも紹介したよ。

 本名が「九郎」だというのを、こちらの世界の人に理解させられないのがとても残念だけど。カァカァ。



「それじゃお互いの紹介も終わったところで、簡単に確認打合せをするぞ。よろしいですかな、ザカリー様」

「はい、進めてください」


「まず、今回のアラストル大森林探索の目的だ。細かいことは繰返さないが、冒険者の活動領域をカプロス出現以前の状態に戻し、出来れば更に拡大したい。これが冒険者ギルドの、それから主要4ギルドの総意だ」

 ジェラードさんは、表情を確認するように全員を見渡した。


「そのために、以前に冒険者が活動していた最奥エリアの魔獣、魔物の状況を確認すること。それから、できれば足を伸ばし、冒険者が活動できるエリア拡大の可能性を探って来てほしい、ということだ」

「そのために、以前の最奥エリアにベースキャンプを置く、ということだな」

「そうだクリス。そのベースキャンプで4泊野営して、夜間の様子も確認してほしい」

「こりゃ夜の方が、気が抜けなくて大変だ」


「ニック、そういうことだ。それから、そのベースキャンプを拠点に、3方向に対して日帰りできる範囲で、魔獣や魔物の索敵と採取可能な資源の状況を確認してきてほしい。この辺の仕事はドナとマリカ、それに採取資源に詳しいアウニもだな。それからブルーノにもお願いしたい」


 ドナテーラさんとマリカさん、そしてブルーノさんは斥候職だし、アウニさんは大森林の採取資源に詳しいのか。エルフだからかな。


「あと、エステルさんはザカリー様の側を離れちゃいけない立場だが、探索が専門なんだろ? できる範囲でいいので手助けをお願いできるだろうか」


 ジェラードさんの言葉に、エステルちゃんは確認するように俺の顔を見る。

 俺が頷くと、「はい、ザックさまと一緒の行動の範囲であれば、そのようにいたします」と答えた。

「わかった、それで充分だ。あとの戦闘職、魔法職の冒険者メンバーは、探索の補助をお願いしたい」

 全員が静かに頷く。



「それから、魔獣や魔物との遭遇時の対処だが」

 ここでジェラードさんは、もういちど冒険者たちを見渡してひと呼吸置いた。


「これは現場での判断にならざるを得ない。ここにいる全員が経験豊富な冒険者だから、くどくど言うつもりはないが、闘えると判断した相手とは戦闘になっても構わない。だが例のカプロスみたいなやつが現れたら、ベースキャンプを放置してでも逃げてくれ。絶対無理はするなよ。いいな」

「大丈夫だ。その点で判断を間違うようなやつは、ここにはいねぇよ」


「そうだな。戦闘時のリーダーはクリス、おまえに頼む。それでいいな、ニック」

「もちろんです。その時はクリスさんの指示で動きますよ」

「いいだろう。それ以外ではパーティ単位で考えて、クリスとニックが相談して決めてくれ」

「わかった」


 パーティでの行動が原則の冒険者だから、戦闘時以外の時は協調しながらパーティ単位で動き、いざ戦闘の時にはクリストフェルさんが全体を指揮して闘う、ということだね。

 たしかにここに騎士小隊とかを混ぜると、ややこしくなるよね。



「それから、すでにみんなには話してあるが、騎士団からの同行者のうちブルーノは探索を手助けしてくれるが、あとのおふたりは子爵様の名代であるザカリー様の護衛が任務だからな」

「僕も探索をお手伝いしますよ。あれ、僕はエステルちゃんのお手伝いかな。だからうちの騎士団メンバーもそれから僕も、戦闘を手伝うよね」

 俺がそう言うと、全員がざわっとした。


「ザックさま、ザックさまは大人しくしてないと」

「ザカリー様よ、ザカリー様が万一怪我でもした日には、俺の首が飛びかねないんだがな」


 なんか俺、余計なこと言ったかな。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。


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エステルちゃんが主人公の短編「時空渡りクロニクル余話 〜エステルちゃんの冒険①境界の洞穴のドラゴン」を投稿しました。

彼女が隠れ里にいた、少女の時代の物語です。


ザックがザックになる前の1回目の過去転生のとき。その少年時代のひとコマを題材にした短編「時空渡りクロニクル外伝(1)〜定めは斬れないとしても、俺は斬る」もぜひお読みいただければ。


それぞれのリンクはこの下段にあります。

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