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第71話 主要ギルド会合から大森林探索の提案が来た

 エステルちゃんの攻撃魔法の遠隔発動にどうやら目処がついたので、今後は威力や精度、安定性の向上のため訓練を続けることにした。

 あと、今やってるウィンドカッターよりももっと高度な魔法、例えば竜巻魔法なんかが遠隔で使えるようになるといいんだよね。

 特に多数が相手になった場合、集まっているところに直接竜巻をぶち込めるとかいいよね。


 エステルちゃんは、俺との剣術稽古で直接戦闘力も上がってきている筈なので、これからは彼女の良さを活かしながら、剣と魔法で充分に闘えるようになって行くんじゃないかな。



 そんなエステルちゃん強化計画の訓練を続けていたある日、主要4ギルド長が例のギルド会合で決まった件の報告と提案に、領主館にやって来ることになった。


「今日の午後ギルド長たちが来るが、ギルド会合の結果の件だというので、会合に出席したおまえも同席しなさい」

 ヴィンス父さんが、俺にも同席するように言う。


 ということで、ギルド長たちが来訪した知らせを受けて領主執務室に行く。

 エステルちゃんとクロウちゃんも一緒だよ。ギルド会合に行ったしね。



 いつもの冒険者ギルド、商業ギルドのおっさんふたりに、鍊金術ギルドのじいさん、それから今日は鍛冶職工ギルドのドワーフのボジェクさんも来ている。

 ボジェクさんは領主館の屋敷に来るのは、ほぼ初めてなんじゃないかな。

 こちらはヴィンス父さんとアン母さんに家令のウォルターさん、クレイグ騎士団長とネイサン副騎士団長に筆頭内政官のオスニエルさんという、いつものメンバーが揃っている。

 うーん、オスニエルさんはともかく、おっさん密度が高い。


「子爵様、今日はお時間をいただき、ありがとう。先日、ザカリー様に出席いただいたギルド会合の報告と、それからひとつ提案を持って来た」

「ジェラード、それからみなさん、ようこそ。提案があるというのは楽しみだな」

「あぁ、その前にあらためてだが、今回からギルド会合に鍛冶職工ギルドが加わることになった。それでボジェクも一緒に来てくれたんだ」


「子爵様、奥様、みなさん、ご無沙汰していて申し訳ない。どうも俺たちは出不精でな。これからはなるべく顔を出すようにするよ。あとザカリー様、また会えたな」

「よく来てくれた、ボジェク。あらためてよろしくな。ギルド会合に参加したと聞いて、こちらも嬉しいよ」



 そんな挨拶が交わされ、各ギルドからの定期報告なんかがされたあと、例の提案の件だ。


「さて、会合に同席してくれた従騎士、ジェルメールさんだったかな、彼女から既に報告が上がっているのかも知れないが、これは俺からの発案で3ギルドが同意してくれた提案だ」

 冒険者ギルド長のジェラードさんが話始める。


「単刀直入に言うと、アラストル大森林に凶悪魔獣のカプロス出現して以降、俺たちは大森林での活動を慎重に行っているが、今回、活動範囲を元に戻し、更に拡げられないか、冒険者ギルドで探索チームを出したい、ということだ」

「具体的には、どのぐらい奥まで探索したいのかね?」

 クレイグ騎士団長が具体的なプランを求める。

 冒険者チームが大森林を探索したいという話は、既に共有されているのだろうね。


「あぁ、ギルド会合で同意を得たあと、冒険者ギルドで具体的な活動案を検討した。今日はその提案だよ」

 ジェラードさんはそこでひと呼吸置いて、領主側の出席者を見渡した。



「まず探索の範囲だが、あれからは現状、冒険者が大森林に入る場合は日帰りであることを条件にしている。それで今回の探索は、1日かけてこれまで入ったことのある最も奥のキャンプ地に到達し、そこをベースに日帰り探索を3方向に計3日、行いたいと考えている」

「つまり、大森林の入口から1日半以内の距離の範囲、ということだな」

「そうだ」


 ベースキャンプまで7、8時間の徒歩移動として、慎重に探索しながらだから20キロメートルぐらいだろうか。

 そこを拠点に3日間、およそ10キロ程度の距離の範囲の探索を、3方向に行う計画のようだ。

 3年前に騎士見習いの特別訓練で入ったときは、騎士団が設定した第1地点まででおよそ3キロ弱だったから、それよりもかなり奥に入ることになる。


「それで探索チームの人員だが、経験豊富な冒険者パーティから2つ選んで、10名程度の合同チームを編成しようと考えている。あまり人数が多くなると、行動に支障が起きるからな」

 冒険者は通常、少人数のパーティ単位で行動するから、大人数での行動は苦手なのだそうだ。

 その点は、現在18名で小隊を編成している騎士団とは違うんだよね。


「それで、これは俺から騎士団へのお願いなんだが、そちらで今、従士になっているブルーノを今回の探索に貸してほしいんだよ」



 ジェラードさんのお願いは、この場でOKということにはならなかった。

 たしかに元トップ冒険者で、疾風はやてのブルーノなどという異名もある、斥候職のエキスパートのブルーノさんが加われば、相当の戦力アップになるだろう。

 しかし、直接的に騎士団の任務ではないので、本人の意思確認も必要だよね。

 あの会合のとき、旧パーティのメンバーと話すのが迷惑そうだったしなぁ。


 それから更にジェラードさんから探索計画の詳細や他のギルド長からの意見も聞き、領主側としては検討して承認の可否を決めることになった。

 ギルドは独立した民間組織だから、その行動について領主の承認をいちいち取る必要はないのだが、領主と騎士団が防御に責任を負っているアラストル大森林の探索だけに、了解が重要になってくる。


 さて、ギルド長たちの報告と提案の場には同席させて貰った俺だが、その後の検討の場には混ぜてくれないよね。

 おそらく探索は承認されるが、ブルーノさんの件はどうなるのかなと、考えを巡らせていた。

 エステルちゃんなんかは、「ブルーノさんは、お断りになられるんじゃないですか」とか言っている。


 それから数日が経過し、俺は父さんから領主執務室に来るように言われた。

 はて、なんでしょう。



 執務室に行くと、父さん母さんと、ウォルターさん、クレイグ騎士団長がいる。


「えーとザック、おまえに相談があるんだけど。先日の冒険者ギルドの大森林探索の件で」

 父さんがなんだか歯切れが悪い。

 母さんはなぜだかニコニコしていて、わが領のくせ者ふたりは無表情を保っている。


「あーと、この前、ジェラードから大森林探索の提案があったよな」

 ありましたね。

「それで、冒険者チームが探索するのは、われわれとしては承認することになるのだが」

 はい良かったです、それで?

「あのとき、騎士団のブルーノを貸してほしいと要請があった訳だ」

 お願いされてました。


「それでブルーノ本人の意向も確認したのだが」

 そうでしょうね。

「ブルーノが言うにはだな」

 父さん、話のテンポがのろいですよ。

「ザカリー様と一緒なら、配下として自分は喜んで参加します、だと。ブルーノって、おまえの配下になってたんだっけ」


 ブルーノさん、またなに言ってるですか。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。


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エステルちゃんが主人公の短編「時空渡りクロニクル余話 〜エステルちゃんの冒険①境界の洞穴のドラゴン」を投稿しました。

彼女が隠れ里にいた、少女の時代の物語です。


ザックがザックになる前の1回目の過去転生のとき。その少年時代のひとコマを題材にした短編「時空渡りクロニクル外伝(1)〜定めは斬れないとしても、俺は斬る」もぜひお読みいただければ。


それぞれのリンクはこの下段にあります。

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