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第633話 グリフィン子爵家からの出席者や護衛体制が決まりました

「それで本題の護衛及び警備体制ですが」

「そうだな。だがその前に、出席者についてはまとまったか、ウォルター」

「はい、ほぼ予定通り、決まりました」


 結婚披露のうたげに出る、グリフィン子爵家からの出席者ですね。


「まずグリフィン子爵家のご家族とお身内ですが、子爵様に奥様、アビゲイル様、ザカリー様、エステル様のご家族に加えまして、先代様と大奥様、ジルベール・ブライアント男爵様とフランカ様。そしてシルフェ様、シフォニナ様、アル殿の12名です」


「父上と母上は、来られるのだな」

「はい。ファータの連絡網経由で、ご出席いただけるとの連絡が届きました。こちらを立つ数日前にはグリフィニアにご到着になられるかと」


 先代様と大奥様とはカートお爺ちゃんとエリお婆ちゃんのことだ。

 来てくれるんだね。良かった。


「あの、ザカリー様。アル殿につきましては、お名前はアル殿でよろしいのでしょうか」

「あー、正式の名前はあるんだけど、あまり気軽に人の口に乗せてはいけないみたいなんだ。ああいう方たちの場合」

「なるほど、そうなのですか。では、アル殿ということで」


 まあアルさんの場合、アルノガータという名が知られてもあまり気に留めないだろうけどね。



「続いて、結婚披露の宴への着席出席者15名です。クレイグ・ベネット準男爵と奥様、モーリス・オルティス準男爵とカルメーラさん。屋敷からは私とコーデリア家政婦長。騎士団からはネイサン副騎士団長。調査探索部からはミルカ副部長。内政官からはオスニエル筆頭内政官となります」


 騎士団と調査探索部と内政官から、それぞれひとりずつ加わる訳だ。

 特にミルカさんは、今回の結婚式関係でずいぶんと働いていただいているからね。

 これで9人か。あとの6人は?


「民間からですが、子爵様のご意向通り四大ギルドから出席者をと依頼しました。ですが、鍛冶職工ギルド長は、俺らはそういう場は苦手だ、と辞退されまして、他の3つのギルドからふたりずつとなりました。冒険者ギルド長のジェラードさんとエルミさん。商業ギルド長のグエルリーノさんと奥様のラウレッタさん、錬金術ギルド長のグットルムさんとマグダレーナさん。以上の6名を加えまして15名となります」


 ああ、そういう顔ぶれね。

 民間からもというのは父さんらしいが、鍛冶職工ギルド長のボジェクさんや副ギルド長のチェスラフさんは辞退するだろうな。


 ともかくもこれで結婚披露のうたげの着席出席者は決まった。

 あとは、グリフィニアからエールデシュタットへの移動だな。


「移動には当初、民間の方々はそれぞれでとしていましたが、王太子様のご一行来訪にともなう警備の関係上、全員が騎士団の出す馬車に乗っていただきます。台数としては、13日にヴァネッサ様方に1台。これは子爵様専用馬車を使用いたします。ご乗車なられるのは、ヴァネッサ様、奥様、コーデリアさん。加えてお屋敷の予備の馬車にウォルターさん、ミルカさん、お付きのリーザさんとフラヴィさんが乗車し、先行して向かわれます」


 やはり、ウォルターさんとミルカさんは直前の打合せと準備のため先行するんだね。

 あと、民間からの出席者がバラバラに行くのではなく、14日に集中して警備をする方向に急遽、変更した訳だ。


「翌14日は、ザカリー様の馬車とモーリス・オルティス準男爵が乗って来られる馬車に加え、騎士団から2台か3台出す予定でしたが、どういう組み合わせでご乗車されるかは、ザカリー様にご意見をお聞きしようかと」


「僕の意見ですか?」

「ええ、その、畏れながらシルフェ様方がどの馬車に乗られるとか……」


 ああ、そういうことか。

 えーと、俺が王都でいつも使っている馬車がある訳だけど、乗車の該当者としては父さんにアビー姉ちゃん、シルフェ様、シフォニナさん、アルさん、エステルちゃん、俺でもう7人か。

 それにカートお爺ちゃんとエリお婆ちゃんもいるし、セリヤさんも来るだろう。


 多いな。定員的には1台で6人だ。これ以上はかなり窮屈になる。

 あと、カリちゃんは今回エディットちゃんもいるし、彼女と一緒なら大丈夫かな。

 いずれにしてもこんなメンバーをどういう風に馬車に振り分けて乗せるか、それはネイサン副騎士団長は悩むよね。



「あの、それでアビゲイル様なのですが」

「姉ちゃん?」


「アビゲイル様につきましては、ご本人のたっての希望で、13日の先行組を護衛する騎士として、騎乗で行かれることになりました」

「えへへ」


「父さんも許可したの?」

「アビーがどうしてもと言うし、ほとんどは領内だから大丈夫かとな」


 父さんは心配性だが、娘にせがまれるととても甘い。


「姉ちゃん。半日も騎馬で、大丈夫なのか?」

「あんた。私がこの夏までに、どれだけ馬に乗っていると思ってるのよ。あんたよりよっぽど騎馬に習熟してるわ」


「だけど姉ちゃん」

「ザック。あなた、ほんとうに心配性が進んで来たわよ」

「そうなんですよ、お母さま」


「アビーはね、どうしてもわたしと一緒に行きたいんだって。でも、騎士になったのだから、馬に乗って馬車の横に付いて、わたしを護るって。だから、わたしからもお願いしたの。ザックも許してあげて」


 ヴァニー姉さんが、そう経緯を説明してくれた。

 そうか。小さいときはいつも、姉さんの後ろを付いて廻っていた泣き虫のアビー姉ちゃんが、騎士になって初めて遠出する仕事が、姉さんの嫁入りの護衛ということなんだな。


「それに昨日ご説明しました通り、アビゲイル様はラハトマー騎士小隊の騎士として兼任されることになりました。従いまして、13日の護衛はラハトマー騎士小隊となります」


 ああ、そういうことか。

 隊長はオネルさんの父上で、姉さんたちや俺が騎士団見習いで剣術の訓練をしていた頃から良く指導してくれていたメルヴィン騎士も先輩騎士として在籍している。

 メルヴィンさんはナイアの森でのテウメー討伐のときに、同じ小隊の従士で騎士団見習いの先輩だったイェルゲンくんと共に、アビー姉ちゃんと一緒に闘ったしね。


「わかった。アビー姉ちゃん。ヴァニー姉さんをしっかりエールデシュタットまで送り届けてくれ」

「当たり前よ。でも、了解。ザックの分まで、しっかりと姉さんを護るわ」



「そうすると、14日に行くのは」と、俺は声を出して名前を挙げた。


「それほどの距離ではないとは言っても、半日の馬車旅だから、あまり窮屈にしない方がいいね。なので、王都で使っている馬車には、父さんとカートお爺ちゃん、エリお婆ちゃんとセリヤさんに乗って貰おうかな。それで、騎士団のいちばん大きな馬車に、シルフェ様とシフォニナさん、アルさん、エステルちゃんと僕が乗るよ。シモーネちゃんも一緒に乗せるかな。うちのカリちゃんとエディットちゃんは、別の馬車で大丈夫だと思う。エステルちゃんはどう思う?」


「そうですね。フォルくんとユディちゃんはどうしますか?」

「彼らには、僕らが乗る馬車の御者をして貰おう。以前に馬車に乗って行ってるけど、御者としては初めてだから勉強になるだろうし」


「そうしたら、カリちゃんとエディットちゃんは、14日に行く侍女ふたりとあとトビーくんも行くから、その3人と一緒に乗って貰いましょうか」と、母さんが言った。


 え、トビーくんも行くの? ああ、結婚披露のうたげに出すデザートをトビーくんが作るのですか。


 彼が昨日、「なんで、アデーレさんを連れて来てくれなかったすか」とか文句を言っていたのは、もしアデーレさんが来たら、宴のデザート作りを手伝って貰おうと考えていたからなんだな。甘いですぞ、トビー選手。

 14日に同行する侍女さんは、父さんのお世話というよりそのデザート作りの手伝い要員らしい。


「そうしたら、エディットちゃんたちにも、トビーくんの手伝いをさせますよ。王都屋敷でうちの子たちは、良くアデーレさんの助手でお菓子作りをしていますから」


 エステルちゃんがそう提案し、母さんとウォルターさんも賛成してくれた。



「14日の馬車はこれで3台か。あとは」

「私と妻は、モーリスの馬車に同乗する予定になっておりますよ」


 クレイグ騎士団長夫妻はモーリス・オルティス準男爵とカルメーラさんが乗って来る馬車に同乗が決まっているのか。準男爵同士だしね。


 あとは、ネイサン副騎士団長に筆頭内政官のオスニエルさんと民間からの出席者6人の計8名が、2台の馬車に分乗して行く。

 これでうちから14日に行く馬車は、合計で6台となった。なかなかの車列ですな。


「はい、それで承知いたしました。よろしいでしょうか、子爵様」

「おお、それでいいぞ、ネイサン」


「そうしましたら護衛部隊ですが、まず13日につきましては、アビゲイル様を筆頭にラハトマー騎士小隊の18名となります。もちろん、全員が騎馬です」


 これは、ヴァネッサ姉さんの領内への結婚お披露目とお別れに従う隊列となる。

 おそらくは全員が、準礼装に着飾っての騎乗となるのだろう。

 あと、調査探索部から陰護衛が数名、道中を固めて同行する筈だ。


「14日は、ザカリー様の独立小隊7名が騎乗で従うことになりますね。この部隊には主に子爵様の馬車とザカリー様の馬車の護衛をして貰い、あともう1小隊を出す予定です」


 うちのジェルさんたち7名に騎士小隊をもう1隊だから、14日は25名の部隊か。

 領内から辺境伯領への街道は治安が良いから、グリフィン子爵家にしては多過ぎるぐらいだが、まあ威儀を整えるということだろうな。


 馬車列を護衛する騎士団以外では、領都グリフィニア内は領都警備兵が、それ以外の領内では街道筋を中心に、他の騎士小隊と歩兵である領兵部隊が各所を警備する体制だ。

 グリフィン子爵家の騎士団以外の常備兵は、領兵が3個中隊360名ほどしかいないから、まあ総動員となるのだろうね。


 なお、3個中隊で1個大隊としている領兵部隊の大隊長はクレイグ騎士団長が兼任し、警察部隊と言える領都警備兵の3個小隊は、ネイサン副騎士団長が兼任して統括するという、極めてスリムな組織だ。



「当家としては以上ですが、これにブライアント男爵家の馬車1台と護衛部隊が加わるかと思います。それで問題は、王家やその他の貴族家からのご出席の方々なのですが」


 そうか。王太子の一行だけでなく、他の貴族家からの出席者も来るんだよな。

 アラストル大森林があることもあって、地理的な意味合いで王国内のどこからでも辺境伯領に行くには、船を除いて陸路では必ずグリフィン子爵領を通らなければならない。


「王家以外の貴族家はどうなっているんだ、ウォルター」

「はい。現在のところ、当家に立ち寄り、1泊したいと打診が来ているのは、エイデン伯爵家とデルクセン子爵家の2家です。あとオデアン男爵家は、アプサラに立ち寄った後に兄夫婦と一緒にこちらにいらして1泊になるかと」


 そうなんだね。エイデン伯爵家とデルクセン子爵家の北辺の2家からは、もう打診があった訳か。伯爵と子爵本人が来るのかな。


 オデアン男爵家はうちの南隣で、港町アプサラと交易で繋がりが深いから、アプサラを治めるウォルターさんのお兄さん、つまりモーリス・オルティス準男爵のところに立寄り、前日の12日にいらっしゃるということですね。


「エイデン伯爵家とデルクセン子爵家は、どなたがいらっしゃるのだ。ご本人か?」

「それが、まだお名前はいただいておりません。どうやら検討中らしく」

「なるほどな」


「それから、ブライアント男爵家からはジルベール様が7月早々にいらっしゃるというお話がありましたが」

「もう、父さんたら。それがダメになって、ザックに八つ当たりしたんでしょ」

「あははは」


「残念ながら、王太子様をお出迎えするということで、ご一行は12日にいらっしゃるご予定となりました」


 まあ、残念でしたな、男爵お爺ちゃん。



 しかし、いま名前が挙がっただけでも、いったい何人がうちに泊まるんだ。

 王太子に、王宮内務部のブランドン長官と王宮騎士団のランドルフ騎士団長。男爵お爺ちゃんの一行が5人。この人たちが2泊か。


 あと少なくともいまのところ、エイデン伯爵家、デルクセン子爵家、オデアン男爵家からそれぞれふたり。それにアプサラからモーリスさんご夫妻が1泊だね。


 シルフェ様たちも客室に宿泊予定だし、屋敷の客室は足りるのかな。

 いちおう9部屋あるから、これでぎりぎりという感じだろうか。

 ウォルターさんとしてはこれよりも増える可能性も考慮して、グリフィニアにあるいくつかの宿屋で良い部屋をかなり押さえたようだ。お供や護衛の宿泊場所も必要だしね。


 いやあ前世での大名とかもそうだったし、いまさらだけど領主貴族家の婚礼って、なかなかに大変ですぞ。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

引き続きこの物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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