表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

603/1122

第596話 剣術対抗戦について総合武術部でミーティング

 関係者が集まっての課外部剣術対抗戦の話し合いが終わったあと、総合武術部の練習に遅れて参加し、終了後に学院生食堂で夕食をいただきミーティングを行った。


「という訳で、総合武術部の第……。第何回だっけ、ソフィくん」

「今年は4回目、昨年から通算すると、確か29回目かと思います、ザック部長。それ以前はわたしがいなかったものですから、回数を把握しておりません」

「おお、ありがとう、ソフィくん。それでは、本年第4回目のミーティングを始めます」


「ザック部長の相手をしてくれる人が出来て、良かったね」

「ソフィちゃんも、貴重な人材になって来ました、です」

「わたしはそこが心配なんだけど」

「そうなんですか?」


 そこの女子部員のみなさん、お食事は終わりましたか? ミーティングを始めますよ。

 女子部員が5名になったので、なにかと喧しい。


「今年も剣術対抗戦の季節がやって参りました」

「去年から始まったんだけどね」


「コホン。それで今年も、我が総合武術部は参加しようと思います。これについては異議ないですよね?」

「異議ないでーす」


「それでは、剣術対抗戦の詳細については、ヴィオ副部長から」

「もう、直ぐにわたしに振る。えーと、今日さっき、関係課外部と剣術学の先生方が集まって話し合いをして、こういう風に決まったわ」


 正確な情報の伝達は、ヴィオ副部長に任せるのがいちばんでありますな。


「開催は昨年と同じく、5月20日から3日間。4時限目が終わったあとに行います。参加する課外部も同じく、総合剣術部と強化剣術研究部、それからうちね。総合剣術部は2チームよ。それで、その4チームが総当たり戦を行うので、合計で6試合。毎日2試合ずつというのは、これも昨年と同じ」


 そこで彼女はひと息ついた。


「えーと、試合形式やルールも前回と同じなんだけど」

「使用武器は木剣で、両手、片手どちらでも可。盾は不可。最低でも訓練用の装備を着用。軽装鎧装備は可だが、重装備は不可。フィールドの全部を使え、5分間の1本勝負。引き分けの場合は延長3分間。基本は寸止め。でも、入ってしまってもペナルティは無し。ただし首から上は厳禁で、入れたら即終了で負け。途中の参ったはあり。審判判断で試合を止めて、判定で勝敗を決めることもあり。審判は主審1名、副審1名。ザックさまは参加不可。こんなところ、です」


「あ、カロちゃん、ありがとう。そうだったわよね」

「カロ先輩、凄いです。秘書としては勉強になります」

「まず、部長秘書が、これぐらい直ぐに言えないとダメ、です」

「はい、精進します」


 カロちゃんもソフィちゃんのロールプレイに混ざって来てるの? それと、俺が参加出来ないのは試合規則じゃないからね。



「それから、新しいこともいくつか決まったわ。まずは団体戦の勝敗なんだけど、前回は順位が決められなかったので、今年は出来れば決めようということになったの。それで、選手ごとの勝者にポイントが与えられることになったわ」


 ヴィオちゃんは、先ほど暫定で決められた勝者ポイント制を皆に説明した。


「つまりさ、5人のうち何人勝つのかが重要になったってこと?」

「そうそうルアちゃん。ひとつの団体戦で同じ勝利でも、3勝2敗よりも4勝1敗の方が上ってことね。もちろん5勝なら満点」


「でも、2勝3敗以下でチームが負けちまったら、意味は無いんだろ?」

「そうだけど、3戦ぜんぶのポイントを合算するから、チームが負けた試合でも勝者にはポイントが与えられて、それが左右するかも知れないのよ」

「てことは?」


「団体戦が同じ2勝1敗でも、その1敗の勝者がふたりかひとりか、それともゼロかで、大きく左右する、です」

「なるほどなあ。ところでこんなこと、誰が考えたんだ? って聞くだけ野暮か」

「そんなの、ザックくんに決まってるじゃない」


「ザック部長って、凄いんですね」

「うちの部長には、妙な才能、あるです。ヘルミちゃん」

「よおし、これは負けられない対抗戦になって来たよ」

「だな」


「あの、去年のうちの部の成績は、どうだったんですか?」

「団体戦3戦3敗、です」

「あ、聞いちゃいけなかったですか」


 いやいやヘルミちゃん。昨年のうちの部は、2年生と1年生だけのチームだったんだよ。

 それで個人の成績は、えーと。


「うちはチームとしては3敗だったけど、2年生と1年生だけだったんだ」

「そうっすよ、ヘルミちゃん。ブルク先輩の言う通り、去年はソフィちゃんと僕が1年生なのに出たんだから」

「へぇー、凄いですソフィ先輩とカシュ先輩」

「いや、それほどでも」


「でもさ、ソフィちゃんは1勝したけど、カシュは全敗だったよな」

「なんでザック部長は、いままで静かにしていて、ここでそういうこと言うっすか」

「ふははは。みんなの個人成績もついでに、ヘルミちゃんに教えてあげたまえ、ソフィくん」


「はい。ルア先輩が2勝、ブルク先輩とカロ先輩とわたしが1勝、カシュくんがゼロ、です」

「ルア先輩は、3戦で2勝したんですか、凄いです」

「もっと褒めて褒めて」


「はい、さすがルア先輩です。それで、そうすると、さっきのポイントを付けると、去年は5ポイントを獲得ということになるんですね」

「その通りよヘルミちゃん。理解が早いわね、あなた」


 そんな感じで、剣術対抗戦の話は賑やかに盛り上がる。




「そうそう、あと今日決まったこととしては、もうふたつあるのよ」

「なになに」

「まだ新しいことがあるんですか?」


「ひとつはね、今年出場した選手で3勝した人が出たら、ザックくんが対戦するっていうの。もちろん模範試合だけど」

「おおー」

「それって」

「そう言えば、去年の閉会式で、ザックさま、そんなこと言った、です」


「それを言い出したのは、おそらくエイディさんだろ、ザック」

「ブルク、その通りだよ」

「あの人なら、今年はぜったいに全勝するつもりだろうな」

「エックさんとかが卒業しちゃったもんね。エイディさんがたぶん、4年生で最強だよ」


 まあ、ブルクくんやルアちゃんの言う通りだね。

 昨年は、出場しなかったアビー姉ちゃんは論外として、4年生に総合剣術部部長のエックさんがいた。

 エイディさんは初戦でエックさんと闘い、延長戦まで行って僅かに判定負けしたんだよな。


 今年4年生となったエイディさんに、おそらく同じ4年生で負けるような敵はいないだろう。

 もしいるとすれば4年生ではなく、そこでわちゃわちゃ話している3年生の男女ふたりだ。


「あたしがエイディさんの全勝を阻んで、3つ勝ってザック部長と闘うよ」

「エイディさんの相手は僕だろ。だから僕が勝って、ついでに全勝もする」

「だめ。あたし。譲りなさいね、ブルクくん」

「いいや、こればっかりは譲れない」

「頑固者」

「どっちが」


 ほらほら、ブルクくんとルアちゃんは喧嘩しない。

 普段はだいたいブルクくんの方が折れるのだが、さすがにこれについては折れないね。



「どちらがエイディさんと対戦するかは、僕が決めます」

「ほら。ザック部長がああ言ってるよ。だからあたしだよね、ザック部長」

「まだルアちゃんに決めたとか、ザックは言ってないから」


「もう静かにしなさい。どちらが対戦するかを決めるのは直前にします」

「はーい」

「わかったよ、ザック」


「それはそうとして、あたしが全勝したら、ザック部長とその模範試合が出来るんだよね」

「わたしが出るなら、わたしもですよね」

「うーん、それはどこの部とか関係ないからなー。それにチームの大将とかそうじゃないとかも関係ないだろうし」


 それはそうなんだよな。

 だから全勝者がたくさん出たら、その全員と模範試合をしなくてはならない。

 その確率や最大数は……。えーと、計算が面倒くさいから、まあいいや。


「とにかく、そうなりそうだから、掛かって来なさい」


「ザックのやつ、何か考えてたけど、あれは面倒くさくなったんだな」

「うん、たぶんそうだと思う」


 魔法少年と魔法少女の場合、剣術対抗戦はどうせ出場しないと高をくくってるから、余裕ですな。

 このふたり、出場させちゃおうかな。



「はいっ」

「はい、なにかな、ソフィちゃん」

「あの、うちの部から誰が出場するのかの話は、まだ出てませんでしたよね」

「あー、そうだね」


 当然に話の流れでそう聞いて来るよな。

 まあ、ライくんとヴィオちゃんをエントリーするのはやめておこう。それから、ヘルミちゃんもだね。

 昨年は魔法少年魔法少女か1年生かという選択肢だったが、今年のヘルミちゃんにはもう暫くは練習をしっかり続けさせたい。


「そこんところは、ザックくんはもう決めてるんでしょ」

「そうですなぁ。やはり昨年と同じ布陣で行きますか。成長度合いも見たいし、何よりも昨年出たみんなが悔しいだろうから。なあカシュ」

「おうっす」


「わたしも部長秘書として頑張りますよ」

「あ、はいです」


 出場選手は、ブルクくん、ルアちゃん、カロちゃん、ソフィちゃん、カシュくんの5人だ。まあ現状としては順当なメンバーだろう。




「それで、さっきヴィオ副部長が、新しいことがふたつあるって言ってましたけど、もうひとつは何ですか?」

「ええ、そのことよね、ソフィちゃん。あのね、今年は1年生になるべくたくさん観戦に来て欲しいから、その方策を検討するってことになったの」


「あー、なるほど。そうなんですね」

「え? どうして1年生なんですか? なにかあるんですか?」

「それはね、ヘルミちゃん。この話、ザックくんの提言なんだから、あなたが説明して」


 まあそうですな。ヘルミちゃんはどうして? と疑問顔だ。


「新しく入学したなるべく多くの1年生に、セルティア王立学院ではこんな活動をしてますよと、見て貰いたいのが基本なんだけど。それ以上になによりも、剣術や魔法に関心を持って貰いたいんだ。それからその課外部にもね」


「ああー、今年は剣術学と魔法学の講義受講生が例年より少ないって、つい最近知りました。それから課外部への入部者の数も」

「そうなんだよね。うちにはヘルミちゃんが入ってくれたけど、まあうちは変な課外部だからいいとして」


「自分で変な課外部とか言っちゃったよ」

「自覚はあったのね」

「あれで、わりと冷静に、周囲からの評判は気にかけてる、です」

「ぜんぜん変じゃないと、わたしは思いますけど」


「うちはいいとして、学院の名門課外部である総合剣術部とかは、例年の半分以下なんだよね。そういうこともあって、是非とも1年生には、日頃真剣に剣術の練習に取組むそれぞれの課外部の姿を、この機会に見て貰えないかと思ってさ。まあそれで、剣術に関心を持ってくれるかどうかは、観戦した1年生自身の問題なんだけどね」


「そうなんですね、なんとなくわかりました。わたしも、クラスの子たちに見に来るように声を掛けます」

「うん、ありがとう、ヘルミちゃん」


 全員がどうなのかは分からないけど、今年の1年生ってこのヘルミちゃんみたいに、話せばわりと素直な子が多そうな気がするんだよな。

 一方でなんだか、やんちゃそうなタイプがいなさそうな。

 まあ、あまりちゃんと知っている訳ではないけどね。


 ともかく総合武術部も、剣術対抗戦に向けて動き出し始めました。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

引き続きこの物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ