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第381話 特別訓練に部員たちが屋敷に来ました

 第1回セルティア王立学院課外部剣術対抗戦への参戦が決まり、出場選手も決定した。

 2年生はブルクくんにルアちゃん、カロちゃん。そして1年生のソフィちゃんとカシュくんだ。

 カシュくんはまだ戸惑っているようだが、何ごとも経験ですから。


 それで特訓の計画だが、試合まではあと1ヶ月。毎日の練習をすべて剣術に充ててしまえば、というところだが、それでは我が総合武術部らしくない。

 現状は10日間のうち剣術を4日、魔法を4日、身体づくりを2日としているのだが、剣術を6日、魔法と身体づくりをそれぞれ2日にして、それに加えて丸1日の剣術特訓を行うことにした。


 丸1日というと講義のある日にはもちろん出来ないので、休日に行いますよ。場所は当然に、俺の王都屋敷の訓練場に来て貰います。

 実際は、対抗戦までの2日休日は3回しかない。

 また2日休日の両日、丸1日特訓を行うのは辛いだろうし、対抗戦直前の休日はしっかり休んで貰いたいので、特訓が出来るのは2回だけということになるね。

 特別講師は? それはジェルさんとオネルさんの現役騎士と従騎士のお姉さんですよ。


 ミーティングの最後にこの計画を話し、部員たち全員の合意を得た。

 2年生たちはうちに来るのが嫌いじゃないし、1年生のふたりは興味津々だった。




 この剣術対抗戦開催の件と、次の休日の1日目に部員たちが特訓で屋敷を訪れる件をエステルちゃん宛の手紙に書いて、ミーティングの翌日の朝にクロウちゃんに持って帰って貰った。


 そして、ゆるゆると部活時間での剣術練習を強化して行く。

 具体的には、打ち込み稽古のひとりあたりの時間と内容を充実させることに専念した。


 受け手は俺とブルクくん、ルアちゃんが引受け、残りの5人に集中的に打ち込みをさせる。

 また、ブルクくんとルアちゃんが打ち込む場合には、俺が一手に引き受ける。

 まあ剣術の練習時は通常のことではあるんだけど、俺が休み無く受け続ける訳だ。


 こうしてあっという間に3日間が過ぎ、明日は休日ということでいつもの様に前日の晩に屋敷へと帰った。



「お帰りなさい、ザックさま」

「お帰りなさいませ」


 屋敷の玄関ホールで俺を出迎えてくれたエステルちゃんと、少年少女の4人。ん? 4人?

 シルフェ様とシフォニナさんは、先日に風の妖精の森にいったん帰ったんだよね。どうしてシモーネちゃんがまだ居るのかな?


「社会見学だから、シモーネちゃんは残しておくって、そう言ってお帰りになったんですよぅ」

「え、そうなの? お部屋とかはどうしたの?」


 シモーネちゃんのベッドは、シフォニナさんの部屋に設えてあるのだけど、彼女も一緒に妖精の森に帰ったとしたらどうしているんだろう。

 見た目6、7歳の女の子を、そのまま独りで部屋に置いているんじゃないよね。


「ああ、そのことなら、エディットちゃんのお部屋に移って貰いましたよ。お姉ちゃんが、それがいいって言うものですから」


 グリフィニアの屋敷も同じだけど、うちの場合、侍女さんの部屋は二人部屋が基本でベッドも2台置かれている。

 部屋の広さはわりと余裕を取っているから、2名で居住しても決して狭くは感じない。

 エステルちゃんも侍女時代は、グリフィニアの屋敷で二人部屋に住んでいたんだよね。


 エディットちゃんは、昨年中はアデーレさんと二人部屋を使って貰っていたが、今年に正式な雇用となってアデーレさんが王都屋敷料理長に就任したことから、それぞれ別々の部屋をひとりで使って貰っていた。

 あと、フォルくんとユディちゃんの双子兄妹で、もうひとつ別の部屋を使っている。


 なので二人部屋にひとりで居たエディットちゃんの部屋に、シモーネちゃんが入ったということか。


「シルフェ様とシフォニナさんが居なくて、寂しくないですか?」

「はいザックさま。お兄ちゃんお姉ちゃんたちがいるから、寂しくないです」


「そうかそうか。シモーネちゃんは偉いですね」

「シモーネは、偉くないです。まだ半人前の精霊です」

「そうですか。うーんと、そういう意味じゃないけど。でも、良かった良かった」


 シモーネちゃんがニッコリ笑う。

 思わず抱っこしようかと思ったけど、やめておきました。




 翌朝、朝食をいただいてから部員たちが来るのを待ちます。

 どうやらどこかで待ち合わせて、全員で揃って来ると言ってたな。今年は7人だから、まとめて来て貰うと助かる。


 ジェルさんたちには事前にエステルちゃんが伝えておいてくれていたので、朝食の席で確認だけしておいた。

 朝食後、彼女らは訓練場の準備をしておいてくれている。


「ザカリー様、お出でになりましたぞ」とエルノさんが報せに走って来てくれたので、玄関前の馬車寄せにエステルちゃんとクロウちゃん、それから少年少女4名も連れて待つ。


「あら、いらっしゃいましたね」

「カァ」


 女子4人に男子3人が、屋敷正面の庭の間の通路を歩いてやって来た。みんな訓練着などを入れたバッグを持ってますね。

 俺とエステルちゃん待っているのを見つけると、パラパラと小走りに走って来た。


「やあ、良く来たね」

「みなさん、いらっしゃい」

「いらっしゃいませ」

「カァ」


「あれ? なんだか増えてるわよね。あら、こちらのふたりは学院祭のときにいらしてた」

「クロウちゃん、こんにちは。この子たちは、フォルくんとユディちゃん、です。こっちに来てた、ですか」


 ヴィオちゃんたちは昨年の学院祭で会っているし、カロちゃんはグリフィニアで以前から良く知っている。

 1年生のふたりは初めましてだけどね。


「この女の子は、初めて会います、ですよ」

「シモーネ、です」

「あらー、可愛い子。こんなにちっちゃいのに、魔法侍女服を着て。もうお仕事なの?」


「うちの親戚の子を少しの間、預かってるのよ。侍女じゃないのだけど、ちょうど良いサイズの服があったので」


 シモーネちゃんはいちおう、エステルちゃんの親戚の子の設定だ。

 昨晩そういう風にすることを相談して、本人にも良く言い聞かせてある。精霊というのはナイショだからね。

「人間のひとに言っていいこととダメなことがあるって、シルフェさまから言われてます。だからシモーネは、黙ってます」と、聞き分けがいい。


「エステルさまのご親戚の子なんですね」

従姉妹いとこさん? それとも、従表姉妹はとこさん、です?」

「イト子? ハト子?」


 シモーネちゃんは首を傾げてるが、まあ深く突っ込まないように。

 それよりも屋敷に入って、まずはラウンジに行きましょうか。



 ジェルさんとオネルさん、それからライナさんも来たのであらためて新入部員のふたりを紹介する。

 ちなみにブルーノさんとティモさんは、朝食後にナイアの森に馬を飛ばして行っている。


「こちらがソフィちゃんで、こっちはカシュくんね」

「初めまして、ソフィーナ・グスマンです。いつもザック部長にはお世話になっています」

「カシュパル・メリライネンです。よろしくお願いします」


「ソフィちゃんにカシュくんね。わたしはエステル。あなたたちのお話は伺っていますよ。ここは遠慮しなくていいお屋敷ですから、楽にしてくださいな。あと、訓練を頑張ってね」

「はい、ありがとうございます、エステルさま」


「それから、今日の特訓を手伝ってくれるジェルさんとオネルさんね。あと、ライナさんは見学?」

「いちおう、お手伝いと言ってよねー」

「あ、そうなんだ。ちなみにライナさんは格闘魔導士ね」

「なによそれー」


「ライナさんは、格闘魔導士になったんですか?」

「なんだか、強そう」

「ヴィオちゃんも、それ目指すべき。でも、初めて聞いた名前」

「そんなの、ザカリーさまがいま考えたのに決まってるじゃない」



「ほら、ライナは黙っとけ。あ、失礼したな。わたしは、グリフィン子爵家騎士団王都屋敷分隊、ジェルメール・バリエ騎士だ。今日はよろしくお願いする」

「わたしは、同じくオネルヴァ・ラハトマー従騎士です。よろしくお願いしますね」


「騎士さんと従騎士さんなんですね。よろしくお願いします。おふたりともお若くて、とてもお美しい方。ね、カシュくん」

「あ、うん、そう、ですね。こんにちは。よろしく、お願いいたします、です」


 カシュくんはもう、うちのお姉さん方に当てられてしまいましたか。ほんのり頬を赤らめた彼を見ると、去年のライくんとブルクくんを思い出しますな。

 ほれ、ライとブルク、彼を回収して。



 それぞれの紹介も終わり、部員の皆を騎士団分隊本部に案内してそこの部屋で訓練着に着替えて貰ったあと、訓練場に集合する。

 俺は戦闘用の本格装備ね。

「どうして、それ着るですか?」ってエステルちゃんに聞かれたけど、気合いですよ気合い。


 その彼女も「じゃ、わたしも」と、ほぼお揃いの黒い装備を身に纏っている。

 それから、フォルくんとユディちゃんも訓練装備を着て従っている。エディットちゃんはお昼の用意でアデーレさんの手伝いだね。

 シモーネちゃんは見学かな? ライナさんが手を繋いでいる。


 そして今日の特訓に参加する部員たち7名、うちの屋敷から俺も含めて6名の計13名が訓練場に揃った。


「それでは、総合武術部の剣術対抗戦に向けた特別訓練を始めるよ。今日の主任指導教官はジェルさん、副教官はオネルさんだ。みんな、おふたりの指示に従って今日一日、有意義な訓練をしましょう。それではジェルさん、オネルさん、お願いします」

「お願いします」


「わかりました、ザカリーさま。では、わたしとオネルが指導教官を務めさせていただく。なに、難しいことは何もない。いつも君たちが訓練している通りだ。ただ、ひとつだけ違うのは、今日は最後に試合稽古をして貰うつもりだ。みんなの相手は、わたしとオネル、それからフォルとユディも加わる。あと、エステルさまも加わっていただけるのですか?」

「ええ、そのつもりよ」


 いつもの訓練通りとジェルさんは言うけど、ちゃんとした指導教官がいてそもそも厳しさが違う。


「試合稽古は午後の部の最後に行うが、うちのティモさんも午後には帰って来るので、彼にも加わって貰うつもりだ。なお、ひと言付け加えておくと、このフォルとユディは皆より歳下だが、6歳の時からうちの騎士団見習いと稽古をしていて、なおかつ師匠はザカリーさまだ。強いからな」


 試合稽古の対戦の組み分けは、あとで考えよう。

 2年生は昨年から経験しているが、1年生のふたりは初めてじゃないかな。



「それではまず素振りからだ。準備はいいかな。では、始めっ」

「はいっ」


 え? シモーネちゃんもライナさんの隣で素振りをするの? ライナさんが参加するのは分かるけど。

 そう言えば、ちゃんと訓練着を着させて貰ってるんだね。あれって、ユディちゃんが小さい時に着ていたもののお下がりじゃなくて、彼女用のを作っていたのか。


 と言うか、精霊さんの女の子が剣術とかしてよろしいのでしょうか?

 なになにクロウちゃん。シルフェ様も公認で、うちの少年少女組の稽古に前から参加してるんだって。カァ。

 いいのかな。シルフェ様がいいって言うのなら、いいんだろうけど。


 それはともかくも、こうして特別訓練は始まったのでした。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

引き続きこの物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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