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第301話 学院長の了解、そして4年生の卒業

 学年末試験も終わり、あと残していることと言えばあれだね。

 そのためにも、オイリ学院長には会っておかなければならないということで、俺の選択科目講義の無い日時にお会いしたいと学院の職員さんを通じてお願いしていたら、了解の返事が来た。


 それでこれから会うために、学院長室のある教授棟に来ました。

「ザカリー様、オイリ学院長がお待ちかねです」と、学院長秘書の職員さんが案内してくれる。

 ドアをノックして部屋の中に入ると、ニコニコ顔の学院長とそれからイラリ先生も待っていた。

 日程的に例のことだと分かったんだね。



「学年末試験はどうだった? って、ザックくんに聞くのは野暮かしらー」

「まあ、それぞれ楽しかったですよ」

「試験が楽しかったなんて、そう言って貰えるのは、あなたぐらいのものよね」


 前々世の大学以来、50年近く振りですからとかは、勿論言えません。


「それで今日いらしたのは、夏の終わりにその、シルフェ様に貼っていただいた魔法障壁のことでしょ。100日もあっと言う間よねー。お陰さまで、学院祭も無事に終えることが出来たし」


「ええ、その通りです。日数を数えると16日には100日となり、そこから徐々に魔法の効力が落ちて行くそうですので」

「そうなのね。そうすると卒業式は大丈夫なのねー、良かった。もうすぐ100日の筈だから、きっとザックくんたちが何とかしてくれるって、そう思ってたけど」


「それで、16日以降はどうするのでしょうか。また魔法障壁を張り直していただける、とかでしょうか」

「はい、イラリ先生。今日は、そのことでお話があって来たんです。まあお話というか、学院長にご了解をいただこうと思いまして」


「わたしに了解?」

「はい。18日予定で、地下洞窟に潜ろうかと思います」



「そ、それは、探索をするということ?」

「探索もですが、ある程度、片をつけようかと」

「片を?」

「アンデッドを片付ける、ということですか?」

「はい」


 オイリ学院長とイラリ先生は、ふたりとも俺の返答に大きく目を見開いた。

 魔法障壁を張り直すために、またシルフェ様たちがいらっしゃるのではと予想していたみたいだが、片をつけるという俺の言葉にはかなり驚いたようだ。


「ザックくんたちが?」

「そんなことが、可能なのですか?」


「まあ、ある程度正しく言うと、力の強い方々で、ということですね」

「シルフェ様や、夏前に魔法障壁を張っていただいた方、ですか?」

「そうですね。その方たちのパーティと僕のパーティとの合同で、地下洞窟、いや地下墓所の奥にまで行こうと考えています」


「ザックくんのパーティというと、エステルさんやジェルメール騎士たちのパーティよね」

「確かに、あのみなさんは並外れてお強いですが」



「いえ、当初は、その強い方々と僕とエステルちゃんでパーティを組んでと思っていたのですが、ジェルさんたちは僕とエステルちゃんの護衛なものですから」

「あなたとエステルさんの護衛だからというのは、立場的にはわかるけど」


「4月の時にように、私ども教授が同行するというのは?」

「ダメです」

「ダメですか……」


 俺の即答に、イラリ先生は全身で落胆したように座っていたソファに沈み込んだ。

 もしかしたら、自分も更に奥に行けるのではと期待をしたのかも知れないが、今回ばかりはいいですよとは言えない。


「あの3本の通路の奥を塞ぐ魔法と思われる壁の向うは、相当な危険が待っている筈です。僕が今回、そこに行くと決めたのは、シルフェ様に加えてほぼ同格の方々が行っていただけるという話になったからです。僕でさえ、同行させていただくようなものですから」


「シルフェ様とほぼ同格、つまり真性の精霊様と同格というと、人やファータ、エルフとかじゃないということ? そ、そういう方たちのパーティということでしょ。そうなのよね」

「まあ、そういうことになりますね」



「許可します。18日よね。ええ、その日に、ザックくんたちが地下洞窟に潜るのを、学院長として許可します。……でも」

「でも、何ですか?」


「でも、条件があります。その方たちに、ご挨拶をさせてください。だって、シルフェ様にはお会いしてるし、学院祭にも来ていただいたんだし、ねえ、いいでしょ、ザックくん」

「それは、是非、私もお願いします」


 はい、目の前のエルフのおふたりさん。学院長と教授なんだから、学院生にそう神妙に頭とか下げないんですよ。

 これは仕方がないか。学院長だし顧問の先生だし、精霊族だし、あと3年はこの学院にお世話になるからね。


「まあまあ、わかりましたよ。地下洞窟の入口まで行く段取りもお願いしなければですから、当然その時にご紹介しないとですね。ただし、おふたりだけですよ。ウィルフレッド先生やフィランダー先生、それに他のどこの誰にも絶対に言ってはいけません。例え王家の者であろうとです」

「はい」「わかりました」




 学年末試験は終わったし、学院長から地下洞窟に入る了解も得たので、これで冬休みまでにすることはいいかな。

 あとは総合武術部の予定だが、冬休み中は各自で自主訓練にした。これには部員全員が揃って賛成だね。


 部員の皆は、秋学期が終了するとそれぞれ直ぐに帰省する。年末の冬至祭から年明け1月はお休み、そして2月に入ると学院では15日に入学試験があり、3月1日に入学式、そして俺たちの2学年が始まる。


 つまり、夏休みみたいな日程的余裕が意外と少ない。冬期の合宿訓練とかは、まだみんなには厳しそうだし。

 そう言えば、アビー姉ちゃんはアルポさんたちと熊狩りにアラストル大森林に入る約束をしてたな。行くのかね。



 そして残るは、4年生の卒業式だ。

 俺に関わりのある人だと、総合剣術部部長のレオポルドさんや総合魔導研究部部長のロズリーヌさん。

 それから俺がいる第7男子寮のテオさんことテオドゥロ寮長をはじめ、4年生の人たち。

 あ、あと、学院生会のフェリシア会長やエルランド副会長もいるね。


 みなさん、学院を卒業したらどうするのだろうな。領主貴族や地方の準男爵家の子息子女は地元に帰るのだろうけど。


「ロズ姉さんは、うちの伯爵領のオドラン準男爵家の長女だから、実家に帰る筈よ。本人は魔法士部隊を作るとか、領内で魔法士を育成したいとか、いろいろ言ってたけど」


 部員の皆で夕ご飯を食べていると、その伯爵領の伯爵家三女であるヴィオちゃんが、そう教えてくれた。


「レオポルド部長は、王宮騎士爵家の長男ですから、卒業したら直ぐに従騎士になるそうだよ」

「うちの寮長のテオさんちも王宮騎士爵家だけど、あの人は次男だから従士だそうだぜ。て言うか、なんでザックはそういう情報に疎いかな」


 ブルクくんとライくんもそう教えてくれる。

 えーと、いろいろ忙しくて、学院生の情報にまで手が回らないんですよ。



「学院生会関係は、ザックさま、知らないですか?」

「えーと、知らないよカロちゃん」

「ホントに知らないの? ザックくん、会長と仲がいいじゃない」

「仲良くないですよ。あっちが勝手に寄って来るだけですよ」


 三公爵家が、自分のところの娘を王太子の嫁候補にプッシュして争っていて、フェリ会長がその筆頭になっているらしいなんていう、うちの調査探索部が収集した情報、言えないじゃないですか。


「あ、そう。わたしが聞いたところだと、会長はなんでも、王太子のお嫁さん候補のひとりらしいわよ。それで、公爵領に戻らないで王都屋敷に居続けるそうよ」


 おお、さすがは伯爵家の娘であるヴィオちゃんですな。良く知っておられる。


「えー、王太子のお嫁さん候補かぁー。それって、未来の王妃さまになるってこと?」

「そうよ、ルア。あの方なら、たぶん候補の筆頭じゃないかしら」

「王太子て、学院祭の時、魔法侍女カフェに来た、第2王子のお兄さん、です?」

「そうそう。あんな第2王子より、よっぽどましなお方よ」


「ねえねえヴィオ、あんた会ったことあるの?」

「ちょこっと紹介されたことは、あるけどさ」

「おいくつぐらい、です?」

「たしか、20歳代半ばよね。だから、フェリシア会長から10歳ぐらい上かしら」


 この世界での婚姻では、10歳ぐらいの歳の差は何ら問題はない。と言うか、ほとんど気にされない。

 うちの父さんと母さんが結婚したのも、父さんが23で母さんが17の時だし、ヴァニー姉さんは直ぐに生まれてるからね。


 女子たちは、王太子のお嫁さん選びの話で盛り上がっていた。

 彼女たちにすればそれほど遠くない将来に、自分にもそんな話が来ないとも限らないからね。

 ライくんとブルクくんは? あ、この男子ふたりはそんなこと、ひとかけらも考えてない顔してますね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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2021年2月20日付記

本編余話の新作、「時空クロニクル余話 〜魔法少女のライナ」を投稿しました。

タイトルからお察しの通り、あのライナさんの少女時代の物語です。作者としては、どうしても書きたかったというのもありまして。

とりあえず第1章ということで、今回は数話の中編で連載を予定しています。

リンクはこの下の方にありますので、そこからお飛びください。

ライナさんを密かに応援してくれている人も、そうでない人も、どうかお読みいただけますと幸いです。

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