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第275話 治療室へお見舞いに

 1年生の決勝トーナメントが終了した。

 A組とB組の選手たちはそれぞれ控室へと戻り、ブルクくんは念のために治療室へと向かった。

 本日後半戦の2年生決勝トーナメントの開始までは、30分間のインターバルがある。


 観客席の貴賓席の方を見ると、エステルちゃんやレイヴンの女子メンバーが席を離れているので、たぶん治療室にお見舞いに行ったようだね。


「(ザックさん、エステルたちは治療室に行きましたよ)」

「(もし顔が出せるようなら、ザックさまも少しでもと、エステルさまがおっしゃっていました)」

「(シルフェ様、シフォニナさん、了解です。ちょっと僕も行ってきますよ)」

「(そうね、そうしてあげなさい)」

「(はい)」



 それで俺は、審判員の先生方に断って治療室へとカロちゃんやルアちゃんの様子を見に行った。


 総合競技場に設置されている治療室は、なかなかに広くて設備も整っている。

 総合戦技大会開催中は、学院の治療担当員であるクロディーヌ先生と看護員さんがこの部屋に控えていて、例年はフィールドから運ばれた選手を回復治療し、フィールドで応急的に回復魔法を施されても治り切らない怪我の治療を行ったりする。

 クロディーヌ先生も、回復魔法はなかなかの使い手だそうだ。


「あら、ザカリー君ね。今年はあなたがいるから、先生とってもヒマで良かったのに、今日は忙しいこと」

「すみません。それも僕の関係者ばかりで」


「いいのよ。はい、ブルクハルト君。あなたは大丈夫よ。応急処置の回復魔法でちゃんと元どおりに治っていたわ。よっぽど強力な回復魔法を掛けて貰ったのね。ね、ザカリー君」



 ちょうど治療室では、先ほどまでフィールドにいたブルクくんが、フローズンウィンドの魔法が当たってしまった左肩と腕をクロディーヌ先生に診察して貰っているところだった。


「少々強めのを施しておきましたから」

「ブルクハルト君の前に診察した、雷撃が直撃した子も大丈夫だったわ。あれもあなたでしょ。あとは、向うの部屋に寝かせている女の子ふたりね」

「ルアちゃんとカロちゃん、具合はどうですか? 大丈夫なんですか?」


「あ、そうか。ブルクハルト君も同じ課外部なのよね。で、どっちの子の方が心配なのかな?」

「先生っ、どっちもですよっ」


「あらあら、その赤くなった顔を見るとね。まあ今日のところはいいでしょ」


 クロディーヌ先生、ブルクくんは剣術一筋の真面目な子ですから、からかわないでくださいね。


「あの子たちも、身体的にはザカリー君の回復魔法のおかげで、何も心配はいらないわ。でも、至近距離の魔法の爆発と地面に叩き付けられたのとで、連続して身体の前後から強い衝撃を受けてるから、直ぐには動かさずに、夕方ぐらいまでは様子を見るために寝て貰っているのよ。成長期の女の子ですしね。あとは、気持ちの回復の問題ね。いま、ザカリー君のところの方たちがいらしてるわ」



 そうクロディーヌ先生と話していると、ヴィオちゃんたちA組の選手4人が治療室に入って来た。


「ザックくんとブルクくんも来てたのね。ふたりは、どう?」

「ブルクは診察な。いま、エステルちゃんたちがお見舞いに来てるんだ。僕らはまだ」

「エステルさんたち、いらしていただいたんだ。先生、わたしたちもお見舞いに入っていいですか?」

「ええ、もちろんよ。さあいらっしゃい」


 それで俺たちはクロディーヌ先生に案内されて、治療室の隣にある看護室に向かった。


 ドアを開けると何床かのベッドが並んでいる。

 そのひとつのベッドでは、カロちゃんがベッドに座ったエステルちゃんに抱きついて泣いており、反対側にはライナさんが座っていた。

 そしてその横にあるもうひとつのベッドでは、同じようにルアちゃんが隣に座ったジェルさんに手を握られながら泣いているようで、オネルさんが心配顔で付いていた。



「(エステルちゃん、大丈夫かな?)」

「(あ、ザックさま)ほら、ザックさまやクラスの方たちも来てくれましたよ」


 エステルちゃんが看護室に入って来た俺たちの姿を確認して、カロちゃんに優しくそう声を掛けた。

 直ぐにヴィオちゃんとペルちゃんも、カロちゃんのベッドの側に行く。


「おい、ライとバルも行ってやれ。それからブルクは、あっちだな」

「え? 僕はルアちゃんの方?」

「ブルクひとりじゃ恥ずかしいだろうから、ザック先生も付いて行ってやれよ」

「そうか、そうだな。行くぞ、ブルク」

「え? えーと。うん」


 ほらさっさと前に進みたまえ、ブルクくん。

 ライくんとバルくんは、カロちゃんのベッドの方へと行った。



「あ、ザカリー様、ブルク君も来ましたね」

「どうかな、オネルさん」

「もう落ち着いたわよね、ルアちゃん」

「私たちが来たら、こっちとあっちで同時に泣き出してな。でも、もう大丈夫だぞ、ルアちゃん」


「すみません、ジェルさん、オネルさん。おふたりの顔を見たら、あたし、涙がどんどん出て来ちゃって」

「E組の選手たちと、私たちとで入れ替わりだったんですよ。でもE組の選手の前では、泣かなかったのよね」

「逆に、泣いている子を慰めていたな」


 E組は、ルアちゃんの欠場で2位決定戦を辞退した。

 あの子たちもかなり悔しかったのだろうけど、その時のルアちゃんは気丈にも選手たちを慰めていたんだね。



「ル、ルアちゃん、具合はどう? 大丈夫?」

「あっ、ブルクくん……。あたし、あなたと闘いたかったんだからねっ」

「ぼ、僕だって」

「次は待ってなさいよ」

「ああ、ちゃんと待ってるよ」


「それから、明後日は……。あたしの分も頑張って……」

「もちろんだよ。ルアちゃんと、その、一緒に闘ってるつもりで、頑張るよ」

「うん」


 もう大丈夫ですね。それでは、ブルクくんはここに残して、カロちゃんのベッドの方に行きましょうか。



 こっちのベッドも、ヴィオちゃんたちが来たので大丈夫そうだった。


「どうだ、カロちゃん」

「あ、ザックさま。その、ごめんなさい、です」

「ザックさまに謝る必要はないですよ。カロちゃんは一生懸命に闘った。それで充分よ」

「はい、エステルさん」


「そうよ、カロちゃんは何も悪くなんかないわ。しっかり闘って、凄く痛い思いをして、悔しい思いもして、それでまた前に進みましょ」

「ヴィオちゃん、それって僕がキミに言ったことと……」

「うるさいです。いいんです。わたしが替わりに言ってあげたの」


「ザック、いいから黙ってろ」

「はい」


 ようやく笑い声が上がって、カロちゃんの気持ちも元に戻って来たようだ。



「あっちでは、明後日はブルクがルアちゃんの分まで闘うって言ってたよ」

「ルアちゃんの分は、わたしが闘います、です。ねっ、ルアちゃん」


「え? あ、あたし。えーと」

「いい、です。じゃ、4分の3ぐらいはブルクくんとで。わたしは、4分の1ぐらいをルアちゃんと一緒に、闘います、です」

「カロちゃん、なにそれ。いいから、ぜんぶブルクくんにあげちゃいなさい」

「むー、ちょっと悔しい、です」


 看護室にまた大きな笑い声が起こり、ルアちゃんとブルクくんは顔を真っ赤にしていた。

 ベッドに寝かされているふたりは、このあとクロディーヌ先生の診察をもう1回受けて、それで問題が無ければ帰っていいそうだ。

 さてそろそろ俺は、審判員としてフィールドに戻らないとだね。



「じゃエステルちゃん、僕はまた審判員をやって来るよ。ジェルさんたちもありがとう」

「はい、頑張って来てください」


「頑張るのは、回復魔法だけにしてほしいがな」

「でもさっきの、ライナ姉さんとのフィールド修復ですか、あれは面白かったですよ」

「ライナも調子に乗って手を振ってたな」

「ザカリー様が一緒に振れって、言うもんだからー」


「ところで、クロウちゃんは?」

「クロウちゃんなら、たぶん今は、お姉ちゃんのお膝の上」

「あいつ、シルフェお姉ちゃんに取られちゃいそうだな」

「そうかも知れませんね。わたしが叱ると、直ぐにお姉ちゃんとこに行きますから」



 看護室はヴィオちゃんたちに任せて、俺とエステルちゃんたちは治療室を出た。


 さあ、あともうひと仕事だな。

 俺の回復魔法の出番が無いに越したことはないが、まあ頑張りますか。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

ーーーーーーーーーーーー

2021年2月21日付記

本編余話の新作、「時空クロニクル余話 〜魔法少女のライナ」を投稿しました。

タイトルからお察しの通り、あのライナさんの少女時代の物語です。作者としては、どうしても書きたかったというのもありまして。

とりあえず第1章ということで、今回は数話の中編で連載を予定しています。

リンクはこの下の方にありますので、そこからお飛びください。

ライナさんを密かに応援してくれている人も、そうでない人も、どうかお読みいただけますと幸いです。

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