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第25話 初冒険者ギルドの洗礼ってあるの

 俺たちが暮らしているグリフィン子爵領の領都グリフィニアには、今歩いている大通りのほかに、あとふたつの大通りがある。

 領主館から中央広場に伸びるのが「グリフィン大通り」、そして広場を起点に領都を囲む城壁のふたつの門まで繋がっているのが「ノースウェスト大通り」と「サウス大通り」だ。

 3本の大通りは、中央広場を支点にYの字を描いている。


 領都グリフィニアの全体は、ほぼ円形をしていて、領主館はその東北東の縁に位置している。背後にはアストラル大森林だね。

 領主館から中央広場までのグリフィン大通りは、だいたい300メートルぐらい。

 北西門までのノースウェスト大通り、南門までのサウス大通りは、中央広場からほぼ同じ500メートルで、つまりグリフィニアの直径は約1キロメートルといったところ。


 領都内は大通りで3つの区画に分けられていて、グリフィン大通りとノースウェスト大通りとの間が「北地区」、時計と反対回りに次が「西南地区」、そして「東南地区」と呼ばれている。

 各地区の中ほど、中央広場から300メートルぐらいのところで、3本の大通りを繋いで領主館の正門前まで円を描く道路があり、これは「アナスタシア通り」という名前だ。

 この名称は、アン母さんが嫁いできたときに名付けられたそうだよ。

 これら領都内の配置は、屋敷の図書室にあった地図で見ていたけど、式神のクロウちゃんを上空に飛ばして地図が正しいか確認してある。



 それで今日行く冒険者ギルドは、中央広場まで行って、そこからサウス大通りに入り、アナスタシア通りとぶつかる交差点の角、東南地区の一角にある。交差点を挟んで対角の西南地区側には商業ギルドがあるよ。

 また錬金術ギルドは、アナスタシア通りを北方向に行ってノースウェスト大通りと交わる、北地区側の角にある。


 俺とエステルさんは中央広場まで行ってひと休み。

 いつも出ている常設屋台でジュースをおねだりしたら、エステルさんが買ってくれた。

「ザックさま用のおこづかいを持たされていますから」


 そう、俺は相変わらず自分のお金を持ってないんだよね。そろそろ欲しいな。

 クロウちゃんには、屋敷から持って来た焼き菓子をあげておいた。

 え? 喉が渇いた? 噴水の水でも飲んでなさい。ジュースが欲しいの? エステルちゃん、あげてやって。

「えー、わたしのをですかぁ?」「カァ」「はいどうぞ、クロウちゃん。だから、つつこうとしないでください」



 サウス大通りを南に下って、いよいよ冒険者ギルドだ。

 3階建てか、なかなか立派な建物だね。入口ドアに続くステップを上がり、重厚そうな扉を開ける。

 入ってすぐ大きなホールだ。正面の向うには長いカウンターが横に伸びている。

 カウンターのこちら側のホール内は、酒場……ではなく、ラウンジ風になっていて、ベンチや椅子、テーブルがたくさん置かれている。


 なんだかヒマそうな人たちが何人もたむろって、雑談してる。この人たちが冒険者の人だよね。

 みなさん、思い思いの革鎧や軽装鎧なんかを身につけて、いかにもって感じだ。

 剣とかも乱雑に立てかけていたりするなー。あ、槍はいちおう置き場があるんだね。


 頭の上にクロウちゃんを乗せてホール内をキョロキョロ眺めていると、目敏く俺たちを見つけた女の人がカウンター扉を開けて小走りにやって来た。

 あ、エルミさんだ。美人エルフのお姉さん。

 エルミさんはギルド長のジェラードさんと一緒に、夏至祭と冬至祭のときに領主館で開かれるパーティーに来てくれている。


「ザカリー様、ようこそいらっしゃいました」

 いつも言葉数が少なめのエルミさんが俺に挨拶すると、後ろに付いて来ていた、たぶんギルド職員の男性に「ギルド長を呼んで来て」と指示した。

 エルミさんって偉いのかな。なんだか怒ると怖そうだよね。

「エルミさん、こんにちは。今日はよろしくお願いします」

 俺の後ろでエステルちゃんも頭を下げる。



「おいおいおい、頭にカラスを乗っけた変な子供が来たぞ」

 男性職員がギルド長を呼びに、小走りで奥に行くのを見ていたら、横から何やら声がする。

 前に女神のサクヤに、冒険者ギルドに行けるかもって話したら、「そこで必ず、乱暴で脳筋のイカツイ冒険者に絡まれるのよねー。これってテンプレ?」とか言っていた。

 これ、来たのかー。


 その男の声に、エルミさんがじろっと睨む。

「ヒエっ」ガタイのよい身体に軽装鎧を着込んだ男は、一瞬で口を噤んだ。

 やっぱりエルミさん、怖い。

「ニック、やめなよ。それにその子、見たことないのかい? お祭りのときにステージの上にいた」と男の後ろから、女性冒険者の声。

 おー、猫人の獣人さんの女の人です。身軽でなかなか素早しっこそう。


「なんだマリカ、って、あっ子爵様の……」

「はい、グリフィン子爵の息子のザカリーです。今日はギルドを見学に来ました」

「は、はい。どうもですー」

 ホールにいたほかの冒険者さんたちも「どうもですー」と声を揃えてる。

 テンプレもう終わった。


「ニックよかったな、絡む前に止めて貰って。その子は、()()()の子供じゃないぞ」

 あ、ギルド長のジェラードさん来たんだね。

「あらためて、ようこそザカリー様。よくいらっしゃいました」

「はいジェラードさん、こんにちは。楽しみにしていた冒険者ギルドに、やっと来させて貰いました」

「そうかそうか、うん、今日は楽しんで行ってください。むさ苦しいところだけどな」

「はい」

「あと、今日のお付きはエステルさんか。なるほど。ご苦労さま」

 ジェラードさんとエステルちゃんは顔見知りなんだね。



 それから俺たちは2階の応接室に案内されて、しばし懇談。

 ジェラードさんは、俺が今年から騎士見習いの子たちに混ざって、剣術の訓練を始めているのを知っていた。

「あとで、うちの訓練場も見て貰いましょうかな」

 冒険者ギルドにも訓練場があるんだね。

 冒険者になりたての人が訓練したり、ベテラン冒険者でも上を目指して鍛えるために訓練場を利用するとのこと。

 ただし街中だし、それほど広くないので、攻撃系の魔法の使用は禁じているらしい。


 クロウちゃんは、エルミさんからお許しをいただき、テーブルに出されたお菓子をエステルちゃんに食べさせて貰ってご満悦だ。

 エステルちゃんは、俺のっていうよりクロウちゃんのお世話係? どちらかというと。

「カァ」

お読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語りにお付き合いいただき、応援してやってください。

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