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第269話 学院祭2日目

 翌朝、昨夜に来たばかりなのに、クロウちゃんがちゃんとエステルちゃん朝食弁当を運んで来てくれた。

 いつものように早起きして作ってくれたようだ。

 感謝しかない。エステルちゃんは許嫁いいなづけの鑑、キミは式神の鑑ですね。カァ。


「カァカァ」

「ああ、これから屋敷に戻ると、また直ぐに来ることになるから、こっちに居ていいって、エステルちゃんに言われたんだ」


 屋敷ではこれから支度をして、また揃って学院祭に来ることになるからな。

 それじゃ俺はこれから日課の早駈けに出るから、キミも来る? カァ。


 俺は、まだ今日の準備が始まっていない学院構内のいつものコースを、上空にクロウちゃんを飛ばしながら走り、寮の部屋に戻って朝食をいただいたあと、魔法侍女カフェへと向かった。



「おはよう」

「カァ」


「あ、クロウちゃん、です」

「今朝は一緒なのね」

「クロウちゃんを頭に乗せてる姿、なんだか学院だと、新鮮、です」


 頭の上にクロウちゃんが乗っているままで魔法侍女カフェに入ると、ヴィオちゃんやカロちゃんをはじめ、開店準備をしていた魔法侍女制服姿の女子たちが集まって来た。


「えー、その子がウワサの、ザックくんのペット?」

「きゃー、可愛いカラスさん」

「カァ」


「クロウちゃんは、クロウのクロウちゃんですから、そう呼ばないと怒られます、です」

「カァ」


 あ、カロちゃん、ありがとう。

 でも正しくは、クロウの九郎で、クロウちゃんなんだよ。こっちの世界で九郎の表現が難しいのだが。これ、懐かしいな。



「みんな、おはよう。今日は魔法侍女カフェ2日目だね。それではヴィオ店長より、朝の挨拶を」

「はい、オーナー。みなさん、おはようございます」

「おはようございます」「カァ」


「今日の2日目は、昨日よりも混雑が予想されます。新規のお客さまはもちろん、リピーターさんもいらっしゃる筈だからね。でも、昨日と同じように、魔法侍女らしい丁寧な接客に心掛けてください」

「はーい」「カァ」


「それから、明日は、13時から総合戦技大会応援のため臨時閉店となるので、明日も来てくれそうなお客さまには、それとなく伝えて、早めにいらしていただけるよう、お願いするのよ」

「はーい」「カァ」


「それじゃ、今日もグリフィンマカロンセットの完売と、ほかのセットも沢山出るように、1日頑張りましょう。よろしくお願いしますっ」

「よろしくお願いしまーす」「カァ」


 こうして、魔法侍女カフェの2日目が始まった。

 開店と同時に、お客さんが次々に入店してくるよ。

 どうやら、ピンクの可愛らしい制服姿の魔法侍女の噂が広がっているらしく、それに加えて数量限定のグリフィンマカロンも評判のようだ。

 どこの世界でも、可愛い女の子と数量限定商品は鉄板ですな。



「あ、オネルさんたち、です」


「ふー、やっとお店に入れたわ」

「あら、可愛いお店と店員さんですねえ」

「ティモさんも、早く入ってー」


 開店して暫くして、お店に入って来たのはオネルさんとライナさん、それからティモさんのレイヴンメンバーとエディットちゃん。そして母さん付き侍女のリーザさんがフォルくんとユディちゃんを連れて入って来た。

 おや、後ろからコソコソ付いて来るのはトビーくんじゃないですか。あと、ブルーノさんは?


「ヴィオちゃん、カロちゃん、来たわよー」

「いらっしゃいませ、オネルさん、ライナさん。それからティモさんとエディットちゃんも」

「あ、フォルくんとユディちゃん、です。いらっしゃい」


「え、誰だれ?」

「ザックくんのところの方々よ」

「わたしたちの、剣術と魔法の先生、です」

「こちらの方たちは?」

「きゃー、カワイイ子たちなんですけど」

「えーと、獣人族さんの子よね。でも何族なのかしら」


 また魔法侍女たちが集まって来てしまったので、仕方なく俺もそのテーブルに行く。



「あら、ザカリー様。来たわよー」

「お邪魔します、ザカリー様」


「えーとね。このテーブルの4人が、王都屋敷に常駐してるメンバーね。ジェルさんは昨日来たから、今日は来なかったんだ。ブルーノさんは?」

「ブルーノさんは、自分は遠慮しときやす、と言って逃げました」

「ティモさんは、逃げられなかったんだね」

「はい」


「こっちのテーブルの4人は、グリフィニアから来たうちの屋敷の人たち。リーザさんは、僕の母さん付きの侍女さん」

「リーザです。いつもはわたしも、その制服を着てるんですよ。皆さん良くお似合いです」


「それでね。このふたりは、グリフィニアで僕とエステルちゃん付きをして貰っているフォルくんとユディちゃん。ここだけの話だけど、ドラゴニュートなんだよ」

「フォルです、こんにちは」「ユディです。わたしもその制服、いつも着てます」


「それから、そこでおとなしくしているのが、なんと今回のお菓子をすべて作ってくれている、コックのトビーくんです」

「こんちはっす」


「おおーっ」



 俺がそう紹介すると、「あのグリフィンマカロンて、どうやって作るんですか」から始まって、わーわーと魔法侍女たちがテーブルを囲んで話し出してしまった。

 これは昨日に続いていかんですな。


「はいはい、ほかのお客様に迷惑になるから、ここはヴィオちゃんとカロちゃんに任せて、お仕事に戻ってね」

「はーい、オーナー」

「ザカリー様のご級友方って、可愛い子たちが沢山いるんですね。エステルちゃん大丈夫かしら」


 何を言ってるですか、リーザさん。エステルちゃんは昨日来てるし、大丈夫かとか、大丈夫に決まってますよ。



「それよりザカリー様。売れ行きはどうっすか?」

「うん、さすがはトビー選手のお菓子。昨日は、グリフィンマカロン限定80セットは完売で、ほかのセットも結構出たよ」

「ほー、それは良かったす。安心しました」


「それでさ、トビーくん。明日からの3日分なんだけど、グリフィンマカロンの数を少し増やせないかな?」

「増産すか。じつはもう、昨日に仕込みの量を増やしておいてますから、今日帰ったら、頑張って作るっすよ。1日分100セットでどうっすか」


「おお、それはありがたい。頼むよトビーくん」

「はい、まかせるっす。リーザさんも手伝ってくれるって言うし」


 おや、そこで顔を火照らして、どうしましたかトビーくん。

 まあ、おとなをからかうのは止めておきますけどね。




 午後から昨日と同じように総合競技場に向かう。


 クロウちゃんは、オネルさんたちが店を出たあとも暫く魔法侍女カフェに居座っていたが、お昼近くになるとお腹が空いたと言って、エステルちゃんたちを探しに飛んで行った。

 キミはホント自由でいいよね。カァ。


 さて今日は3年生と4年生の1回戦だ。

 つまり、アビー姉ちゃんのクラスチームが出場する。また4年生の試合では、総合剣術部部長のレオポルドさんや総合魔導研究部部長のロズリーヌさんが出るんだよね。


 姉ちゃんのクラスは昨年は最終日の学年無差別戦で、2年生ながら決勝戦まで進んで惜しくも破れているそうだから、今年は雪辱を期している筈だ。

 あいつ、人一倍に悔しがりだからな。



 試合開始前にフィールドに出てみると、おお、今日も昨日に増して観客席は満員ですな。

 俺がフィールドに姿を現すと、なぜか競技場内から大拍手が起こった。


「ザック、今日は手を振ってもいいんじゃないか」

「どうやらお主が魔法と剣術の特待生で、素早い回復魔法使いであるのが知れ渡ったようじゃぞ」


 ふーん、そうなんだ。

 剣術審判部長と魔法審判部長の言葉に、それでは遠慮なくと手を振りながら観客席中央の貴賓席を見ると、エステルちゃんをはじめうちの家族や身内の一団が大きく手を振っていた。


「(ザックさまー。今日も頑張ってくださーい)」

「(みなさん、ザックさんのことを知って、凄い人気みたいですよ。ちょっと派手なのを一発、して差し上げたら)」

「(また、おひいさまは)」

「(ダメですよ、お姉ちゃん。せっかくの人気が帳消しになりますよー)」


 また風の精霊様が勝手なことを言っている。人気があるとかは別にいいけど、帳消しにはならないと思うんだけどな。



「いやー、それではこの歓声に応えて、ひとつ派手な魔法を」

「だから、試合前にそれは止めて貰えんかのう」

「おまえがそれをすると、なんだか怖いことが起きる気がするからな」


 そうかなあ。精霊様のリクエストでとかは言えないけど、でも盛り上がると思うんだけどなー。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

ーーーーーーーーーーーー

2021年2月21日付記

本編余話の新作、「時空クロニクル余話 〜魔法少女のライナ」を投稿しました。

タイトルからお察しの通り、あのライナさんの少女時代の物語です。作者としては、どうしても書きたかったというのもありまして。

とりあえず第1章ということで、今回は数話の中編で連載を予定しています。

リンクはこの下の方にありますので、そこからお飛びください。

ライナさんを密かに応援してくれている人も、そうでない人も、どうかお読みいただけますと幸いです。

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