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第243話 選抜メンバー選定調査に動く

「それじゃ、明日の4時限目が終わったら、そのあとクラス企画会議をするわよ。だから、申し訳ないけど、明日は課外部はお休みにしてね。それまでにみんな、企画を考えて来ること。いいかしら?」

「おう」「はーい」


「あ、あとそれから、ザックくんもそれまでに選抜メンバーを決めるのよ、いい?」

「へーい」


 いつの間にかヴィオちゃんが仕切っていて、さすが伯爵令嬢だ。

 って、クラス委員はもう、ヴィオちゃんでいいんじゃないのかなー。



 その日の昼休み、学院生食堂に久しぶりに総合武術部の部員が集まった。

 そして当然ながら、話題は学院祭と中でもクラス対抗の総合戦技大会のことだ。


「ねえねえ、ブルクくんのB組とルアちゃんのE組は、選抜メンバーって決めたの?」

「うちのクラスはまだだね。5人を選ぶとなると難しくて、今日は取りあえず保留」

「うちもまだ。紛糾するよね、きっと。A組は?」

「A組は、ザックさま一任、です」


 ブルクくんとルアちゃんが俺の顔を見る。


「でもさ、ザックくんが出たら、もう誰も敵わないじゃん」

「そうですよ。その時点で大会は終了だよ」


「そこは安心しなさい。この先生は、出場禁止だ」

「それでうちらA組も、選抜メンバーで悩み中」

「です」

「悩み中って、それ僕だけですよ。ヴィオちゃんが僕に決めろって言ったからでしょ」

「てへ」



「問題は剣術、つまり接近戦担当なんだよな」

「だな」「です」「てへ」


「B組はブルクが出るだろ。E組は、ルアちゃんは決まりだよね」

「だな」「です」「てへ」


 もういいです。俺だけ悩めばいいんでしょ。



「なあ、剣術学初級の講義って、A組は誰が取ってるんだっけ」


 そこでキミたち3人が手を挙げても、しょうがないんだけど。

 キミたち以外でって話なのですけど。


「僕らが取ってるフィロメナ先生の講義には、あとはバルだな」

「わたしが出てるディルク先生の講義で一緒は、ぺルちゃん、です」


 バルトロメ・イダルゴくんとペルラ・エルコラーニさんだな。

 どちらも領主貴族に所属している騎士爵の息子さん娘さんで、小さい頃から剣術に親しんでいる筈だけど。


「例の剣術学中級、諦め組よ」

「ああ、講義初日のフィランダー先生の犠牲者か」

「正確には、フィランダー先生とザックくんの犠牲者ね」


 俺は直接的には関係ないんだと思うけどなー。あれは、いきなりの長時間打込み稽古でしごかれたせいだよ。


「強烈にしごかれたうえに、最後の最後でザックがフィランダー先生を倒したのが、凄くショックだったって、バルが言ってたぜ」

「ぺルちゃんも、同じこと言ってました。だから、初級からやり直したいって、です」


 いや、初心に帰るのはいいことじゃないですか。え、きっかけがちょっと、ですか?



「で、ふたりの技量はどうなのかな?」

「わたしらから見ると、バルくんはうまいなって思うよ」

「ぺルちゃんも、なかなか、です」

「ふたりとも総合剣術部に入ってるよな」


「ああ、なるほど。よしっ、見に行こう。次はフィロメナ先生の講義だよね」

「えっ、初等魔法学は、どうするんですか?」

「初日だから初めだけ出て、あとは僕の担当は自習」

「えーっ」



 秋学期初日3時限目は、ジュディス先生の初等魔法学だ。

 カロちゃんも一緒だけど、俺は講義アシスタントだからね。担当は相変わらず風魔法組だ。

 ジュディス先生の講義冒頭のお話があった後、それぞれの魔法適正に分かれて訓練が始まる。


「それでは、今日は夏休み中にみんながどれだけ成長したかを、まず見せていただきましょうかな。順番にひとりづつ、風魔法の成果を披露してください」


 それで風魔法組の5人が、的に目がけてウィンドカッターを撃つ。

 威力の差は多少あるものの、5人全員がウィンドカッターを短縮詠唱で発動出来るようになってるんだよ。

 よしよし、だいぶ安定して来ているな。


「はい、よろしい。お見事です。素晴らしいです。攻撃魔法は練習出来る場が少ないと思いますが、夏休み中も努力されたことが良く分かります。みなさんを尊敬します。感激です。涙が出ます」


「おい、ザック先生、ちょっとおかしくねーか」

「夏休み中に、何かあったか」

「でも、すっごく褒められてるよ、わたしたち」

「感激で涙が出る、だって」

「あれ、泣き真似じゃない?」


 何かな、素直に評価して褒めてるんですけど。



「と言うことで、今日これからの時間は自主練習に励みましょう。君たちなら出来ます。先生はちょっとご用があるので、席を外しますが。ではでは」


「あれ、行っちゃうよ」

「どいうこと?」

「ご用があるって、何かしら」

「自主練習って、自分たちでやれってことよね」

「でも、そもそも今ってジュディス先生の講義よね。それで自主練習て、意味が分からない」


 まだ聞こえてますよ。それにちゃんと、ジュディス先生にお願いしときますから。


「と言うわけで、本日はこれで。後はお願いします」

「ちょ、ちょっと、何がと言うわけでか、ぜんぜん分かんないんだけど。あなた、欠席扱いに……て、特待生だから関係ないのか……」



 俺は魔法訓練場を急いで出ると、隣接する剣術訓練場へと走った。

 そう言えば剣術学初級の講義って、初めて見るよね。お、やってるやってる。

 今、素振りが終わったところだな。フィロメナ先生が何か話しているぞ。


 俺は離れてその講義の様子を見ていたが、あ、フィロメナ先生に気づかれた。

 先生が手招きして俺を呼び、受講生たちが振り返って見ている。

 ヴィオちゃんとライくんは、やれやれという呆れ顔だ。


「ザック君、ここで何してるの? あなた自分の講義は? たしか初等魔法学だったわよね」

「本日は自主練習にして来たので、大丈夫です」

「自主練習って、そうか、あなた先生側か。で、わたしの講義に何しに来たの? こっちでも先生してくれるってこと」


「いえ、ちょっと見学という訳でして」

「見学、ね。まあいいわ。あとでジュディちゃんに怒られそうだけど」


 それでフィロメナ先生は、何で俺に予備の木剣を渡すのでしょうか。

 俺、普通の制服姿で、訓練着とか着てないんですけど。まあいいけど、ちょっと素振りするかな。

 あ、こちらは気にしないで、講義の続きをどうぞ。



「なんだか理由は分からないけど、剣術学特待生のザック君が見学に来たから。じゃあこれから、夏休みの成果を見せて貰うわよ。それでは、ふたりづつで組んで打込み稽古ね」


 皆から離れて軽く素振りをしながら、受講生の様子を伺う。

 えーと、バルくん、バルくんはと。お、ライくんと組んで打込み稽古をするんだな。

 よしよし、見せていただきましょう。


 フィロメナ先生の「始めっ」の声で、打込み稽古が始まる。

 ライくんとヴィオちゃんには俺の部の方針で最初から両手剣を持たせているが、バルくんも両手剣ですな。

 まずはライくんが打込んで、バルくんが受けますか。なかなかうまく捌いてますぞ。


「ははーん、先生、なんだか分かっちゃったわよ。ザック君がここに来た訳が」


 俺が素振りを止めて打込み稽古の様子を眺めていると、フィロメナ先生が隣にやって来た。


「え、なんのことかな?」

「総合武技大会でしょ。はい、当たりっ」

「えーとですね」


「ずっと、自分のA組の男子ふたりを見てたわよね。ライ君はあなたの部の部員だから、ここで見る必要はないし。と言うことは、バル君か。選抜メンバーの選定かしら。あなたは出られないものね」


 もうバレバレですな。まあ分かっちゃったなら仕方ないか。



「もう仕方ないなぁ。先生のご推察通りですよ。僕のクラスで剣術学初級の講義を取っているのは、うちの部員以外ではあと2名だけなんで」

「もうひとりは、ディルク先生の講義ね」


「ええ。それでバルはどうですか? 先生から見て」

「うん、かなり上手よ。彼なら中級でも良かったんじゃない。まあ諦め組らしいけど」

「そうですか。たしかに上手く受けてますよね」

「じゃ、そろそろ攻守交替をさせましょうか。サービスよ」


 サービスって何ですか。普通、交替するでしょ。ちょうどそろそろ頃合いだし。


「はいっ、では交替っ。まずは息を整えて。いいかしら? よしっ、始めっ」


 今度はバルくんの打込みだ。さて、どうでしょうかね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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