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第220話 レイヴンミーティングと夏休み終盤予定

 7月はあっと言う間で、8月に入った。夏休みはもう半分以上過ぎちゃったよ。


 あれから聖なる光魔法の訓練はだいぶ進んで、パワーセイクリッドライトまでは安定した発動が可能だ。

 この魔法は比較的強力な聖なる光を、細く絞り込んで照射することが出来る。まあ、レーザー兵器の聖なる光版と思えばいいか。


 ただし、出力をかなり抑えて訓練をしているので、どのぐらいの出力が出せるかは確実に把握できていない。

 どうも聖なる光魔法の場合、アマラ様のお力と関係があるらしく、シミュレーション発動が難しいんだよね。


 一方、エステルちゃんの方は、まだ苦労している。相変わらず発動が出来ないのだ。

 普通の光魔法は随分と上達したんだけどね。何かキッカケが必要だな、たぶん。



 8月に入り王都に戻るにあたって、レイヴンミーティングをすることにした。


 ジェルさんたちも休暇を終えて戻って来ている。

 ティモさんはアルポさんとエルノさんに捕まって、騎士団で戦闘訓練をしたり、大森林の浅いエリアに入って狩りに付き合わされたりしてたようだね。

 ブルーノさんも同行してくれたのですか。ご苦労さまです。


 と言うことで、騎士団の会議室を借りてレイヴンメンバー全員が久しぶりに顔を合わせた。


「まずはティモさん、いろいろとご苦労さまでした。王都で何か新しい情報はある?」

「それが、王宮騎士団の副騎士団長一派に関しての調査を進めていたのですが、まだあまり進展がないのです。すみません、ザカリー様」

「いやいや、そうそう辿り着けるとは思ってないから、謝ることはないよ」


「はい。どうもあの一派の情報に接触出来るルートが少なくて。ただ、王宮騎士団の事情に詳しい筋から聞いた話では、副騎士団長を始めとするその一派は、単にエリートの若手というだけではなく、かなり強硬な考えを持った主戦論者なのだとか」


「主戦論者? つまり、戦争を起こしたいということか、ティモさん」

「はい、ジェルさん。いや、ジェルメール騎士殿」

「仲間なんだから、前と同じようにジェルでいい。なんだかそう呼ばれると、恥ずかしい」


「ジェルちゃんは、騎士サマ慣れしてないのよねー」

「ジェル姉さん、村では騎士様とか当主殿とか呼ばれて、大変だったんですよね」

「ライナ、オネル、うるさいぞ」


 久しぶりの賑やかなレイヴンミーティングで、仲間が集まったって感じだよね。

 こういう雰囲気は、いつまでも大切にしたい。



「話を戻しますと、今直ぐに戦争を望んでいる訳ではないのですが、現在も続いているリガニア地方の紛争には積極的に介入すべきだとか、北方帝国に対しては強硬に対応するべきだとか、そういった主張をしているようです」

「なるほどね。でも少数派なんでしょ」


「はい。だから、きっかけがほしいのでは、とも思われます」

「きっかけ?」

「王都で何か騒ぎが起こって、それが外部からのしわざや影響で、とかってやつでやすか?」

「ええ、ブルーノさん。王都や王宮に対する危機を見つけ出し、それを自分たちが対処して勢力を増すとともに、外部への強硬論を主流にしたい、という感じでしょうか。これは私の推測ですけれど」


「だから、地下洞窟やアンデッドの増加に関心がある訳か」

「そこにどう繋がるのか、繋げようとしているのかは、まだ情報不足ではありますが」



「うちの子爵家や僕に関心が向いているのは?」

「それは、戦力じゃないのー。王宮騎士団なんて大した戦力もないわよ。その中でも少数派なんでしょ。強いと評判のグリフィン子爵家を引込みたいのよー、きっと」

「だから、王都にいる私たちと関係を持ちたいということか」

「そのターゲットが、ザカリー様とジェルちゃんねー」

「むう、ザカリー様と私か」


「これはますます、あちらからの接触を防がないとですね。ジェル姉さんにデートのお誘いとか来たら、大変ですよ」

「そんなもの、来る訳ないではないか」

「わからないわよー。ジェルちゃん、もう2回も顔を合わせてるんだから、二度あることは三度ある、って言うわよー」


「そんな三度めなど、叩っ斬る」

「王都でいきなり剣を抜いちゃダメですよ、ジェルさん」

「いやすまない、これは言葉の綾だ、エステルさん」


 少しずつだが、サディアス・オールストンという王宮騎士団副騎士団長の思惑が見えて来た気がする。

 しかし、彼が何を知っているのか、何をしようとしているのか、本当のところはまだ分からない。



「それで、王都に戻る予定は決まりましたかな」

「うん、まだアビー姉ちゃんと調整してないんだけど、8日に出発して10日着かな」

「わかりました。では正式な指示を待つことにします。皆はその予定で準備してくれ」

「はーい」


「ねえ、ところでさっきから気になってるんだけど、ザカリー様とエステルさん、同じブレスレットをしてるわよねー」

「私も気になってました。おふたりで、お揃いを買われたんですか?」

「お、そうなのか、ホントだな」

「ジェルちゃんは、そういうの鈍いのよ」


「これは、ザカリー様が買ってくださいましたですぅ。呼び寄せの腕輪っていう魔導具なんですよ。それにこのトゲトゲも」


 なぜか持っている忍び武器の角指かくしをバッグから取り出して、指に嵌める。

 普段からバックに入れてるのですか、エステルちゃん。


 それから彼女は、呼び寄せの腕輪とトゲトゲ指輪について、皆に説明をしていた。



「エステルさんが万が一の危機に遭った時、ザカリー様が突如現れるという訳か」

「でも、ホントウにそうなるのか、試すと消えちゃうから分からないんですよ」

「それでも、とても稀少な魔導具ですよね」

「わたしはそっちの指輪に興味があるわー。普段、短剣ぐらいしか武器を持ってないし」


 魔法使いのライナさんは、もし敵に接近されてしまって魔法で対処出来ない場合の近接武器に興味があるようだ。


「それって、街の武器屋で買ったのよね。わたしも買おうかしらー」

「そうします? そしたらライナさんとお揃いですぅ」

「それ幾ら? ザカリー様。え、ひとつ400エルね。よし、両手に嵌める分、買おう」


 ライナさんは、エステルちゃんのを貸してもらって、相手の顔を殴るしぐさをしていた。

 こらこら、ティモさんの顔をターゲットにするんじゃありません。

 でも、土魔法で瞬時に相手の足を固定したり、足元を崩してよろめかしたりしながら、あれで顔を殴ると怖いよな。



 ミーティングを終えて屋敷に戻ると、昼間なのに珍しくアビー姉ちゃんが家族用のラウンジにいた。


「お、姉ちゃん。今日は騎士団に行ってないのか」

「わたしだって、たまには休むわよ。それよりザック、あんた出発日を決めたの?」

「うん、8日出発で10日王都着にしたいんだけど、姉ちゃんはそれでいい?」

「いいわよ」


「それであんた、部活はどうするの? 集中訓練とかするんでしょ」

「15日に部員がうちの王都屋敷に集まって、予定を決めることにしたんだ。姉ちゃんとこは?」

「わたしは王都に着いたら、直ぐに学院に戻ってまずは学院の剣術訓練場で毎日集中訓練かな」


「え、アビーさまは、直ぐに学院で訓練なんですか?」

「うちの部員には、12日に集合をかけてるのよ。それでさ、ザック」

「なに?」

「そっちも集中訓練をするなら、うちと合同で合宿訓練とかしない?」



「合宿訓練て、どこかに出掛けてってこと?」

「そうそう、王都の外に行って、近場の森とかでキャンプを張るのよ」

「え、キャンプですか? いいですねー」

「エステルちゃんも来なさい。ね、ザック、どうよどうよ?」


 キャンプで合宿訓練か。王都の騎士団備品にも野営道具はあるし、それもいいかな。

 エステルちゃんはもちろん、レイヴンの皆もどうせ護衛で付いて来るから、大勢だけど楽しそうだ。

 こっちではハイキングとか出来なかったしね。


「いいかもな。うちの部員と相談しなきゃだけど」

「よし、ほぼ決まりね。楽しみっ!」

「楽しみですぅ」


 姉ちゃんは野性の血が騒いでるようだし、エステルちゃんは行く気満々になってるから、あとは部員たちの同意とジェルさんの許可を得るだけだな。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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