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第208話 初めての夏休み帰省

 予定どおり王都屋敷を20日の朝に出発した俺たちは、お爺ちゃんのブライアント男爵領で旅程2日目の宿泊を終えた後、領都グリフィニアに向かった。


 心配していたアビー姉ちゃんは、前日19日の朝に王都屋敷に現れて一緒に出発することができた。

 なんでも、夏休み開始直ぐに学院で部活の短期集中訓練を行っていたとかで、終盤は俺の課外部と同様にまた集中訓練を行う予定だそうだ。



 ブライアント男爵のお爺ちゃんとお婆ちゃんはいつも通り大歓迎で、俺と姉ちゃんの学院生活の様子やエステルちゃんの王都屋敷での生活を聞きたがった。

 まあ、当たり障りの無い範囲で話しておきました。

 俺が魔法学と剣術学の特待生になったことや、1年生だけで新しい課外部を創部したのには吃驚していたけどね。


「そうかそうか、ふたつの特待生とは、おまえはアンを超えたのじゃな。さすがわが孫。これでグリフィン家も安泰じゃ。あとは、そうじゃな。エステルをうちの養子にするのはどうじゃ。そうすれば二代続けてで、当家との繋がりもより一層強固になるというものじゃわい」

「あなた、ザックは今年学院に入ったばかりなんですよ。もう、いつも気が早い」


 天才魔法・元少女のアン母さんは魔法学特待生だったので、俺が剣術学の方も特待生になったからそんな言い方をしたのだろうね。

 でも、相変わらずの早とちりというか先走りお爺ちゃんだった。



 そして馬車は22日の午後、グリフィニアの南門を他の馬車と同じようにきちんと並んで通過し、サウス大通りへと入る。

 事前に帰省予定は報せてあったから、門を護る衛兵さんたちが全員出て来て笑顔で敬礼をしてくれた。そこに居合わせた一般の人びとも手を振ってくれる。

 ああ、グリフィニアに帰って来たんだな。自慢じゃないけど、グリフィニアの人たちはみんな温かい。


 サウス大通りから中央広場を回り込んでグリフィン大通りを進むと、正面が領主館だ。

 正門から馬車が入り、表庭園に沿って半円を描くようにゆっくりと走って行くと、屋敷玄関前に多くの人が待っていた。

 俺、アビー姉ちゃん、エステルちゃんが馬車を降り、後ろにジェルさん、オネルさん、ブルーノさん、ライナさんが並ぶ。クロウちゃんは俺の頭の上。



「皆揃って元気に帰ったよー。皆さん、お出迎えありがとうございます。」


 俺が代表して挨拶し、揃って頭を下げる。

 ヴィンス父さん、アン母さん、ヴァニー姉さんをはじめ、家令のウォルターさんや家政婦長のコーデリアさんほか屋敷で働く皆さん、クレイグ騎士団長以下の多くの騎士団員の皆さん、筆頭内政官のオスニエルさんら内政官の人たちも集まっていた。


「おお、無事に帰って来たな。良かった良かった。皆心配で待っていたんだ」

「お帰り、ザック、アビー。エステルさんお帰りなさい、大変だったでしょ。ジェルメールさんたちもご苦労さま。クロウちゃんもお帰りね」


 どうやら、予定通り帰って来るか顔を見るまで心配で、大勢で出迎えることになったみたいだな。主に俺に対して心配で。


 侍女さんたちが並ぶ列から女の子が尻尾を振り振り飛び出して、エステルちゃんに抱きついた。竜人の双子の妹のユディちゃんだ。

 こらっユディ、と言いながら兄のフォルくんも出て来る。トビーくんも慌てて前に来た。


「ユディちゃん、お元気でしたか? 帰って来ましたよ」

「はい、えと、あの、お帰りなさい」

「フォルくん、ユディちゃん、ただいま。元気そうだね」

「お帰りなさい、ザカリー様、アビゲイル様、エステルさん」


「ところでトビー選手は、何泣いてるの」

「カァ」

「泣いてなんかいないっすよー。ザカリー様でも、しっかり帰って来るものなんすね」

「それは、ここが僕の家だからね」


 4ヶ月振りの故郷ふるさと。初夏の日差しが眩しく、でも風は爽やかだ。



 ひとしきり集まってくれた皆と言葉を交わしてから屋敷に入り、2階の家族用ラウンジに落ち着く。

 父さんたちは、俺の学院生活や王都屋敷の様子を聞きたがった。まあだいたいは話しておこうかな。

 でもアンデッド大掃除の件は、ウォルターさんに相談してからだ。以前にミルカさんから、探索者チームが多少把握しているようなことを聞いているからね。


「まあとにかくだ、王都や学院が大騒ぎになるようなことは、起きてないということだな」

「今のところはそうみたい。あなた、心配し過ぎよ。それより、オイリ学院長やウィルフレッド先生たちとは親しくさせて貰ってるみたいね」

「ザック、ちゃんとお友だちもできたようで、安心したわ」


「うん、先生たちにも気にかけて貰ってるし、そうだ、総合魔導研究部のロズリーヌ部長がヴァニー姉さんによろしくって」

「あら、今はロズちゃんが部長なのね。まああの子、姉御肌だし」

「始まって最初の週に、総合剣術部と総合魔導研究部がザックを取り合って、大変だったんだから。両方の部長が父さんや母さん、姉さんの名前を出してさ」


「あの時は、姉ちゃんがふたりの部長に話をつけてくれたんだったな」

「あらあら、ヴィンスとアビーの剣術組対、わたしとヴァニーの魔法組ってこと? それで、どっちも出来るザックを取り合ったって訳ね」

「そうなのよ母さん。で、この子、どちらにも入らず、入学して直ぐに友だちだけで、総合武術部って言う課外部を自分で創っちゃったの」



「その節は、姉ちゃんにもお世話になりました」

「そんなに直ぐに、新しい課外部を一緒にやるような友だちが、ザックに出来たのか」

「うん、男子ふたりに女子は3人で、ひとりはカロちゃん。でも女子組は、今ではエステルちゃんの方が仲がいいかも」


「あの女子たち、休日ごとにうちの王都屋敷に遊びに来て、エステルちゃんに懐いてるわ」

「そんなこと無いですよ、アビーさま」

「あいつら、姉ちゃんよりは屋敷に来る頻度が高いけど」

「こらザック、しーっ」


「話を聞いていると、当然だが、うちの王都屋敷も随分と雰囲気が変わったみたいだ。エステルさん、ありがとう」

「そうね。ザックは、休日にちゃんと屋敷に戻ってるみたいだし、お友だちが遊びにくるなんてね。ねえヴィンス、わたし、久しぶりに王都屋敷に行ってみたいわ」

「そうだな、母さん。学院が始まったら秋にでも行くか。そう言えば10月の初めに学院祭があるな」

「そう、それ。みんなで久しぶりに学院祭に行きましょ。はい、けってーい」


 アン母さんが片手を高々と挙げて決定を宣言し、父さんと姉さんが拍手で応えてるよ。

 俺とアビー姉ちゃん、エステルちゃんは、顔を見合わせて苦笑いをするしかなかった。



「あ、そうそう。エステルさんが今まで使っていた侍女用の2人部屋は、新しい子が入って塞がっちゃったから、別の部屋を用意したわよー。残してあったあなたの持ち物は、運んでおいたわ」

「え? はい?」

「こっちよ。いらっしゃい」


 母さんがエステルちゃんを連れてラウンジを出るので、俺も付いて行った。


「はい、ここね。今日からここがあなたのお部屋よ」

「えー、だめですよ奥さま。お2階のこちらの方はご家族の場所で」

「いいのいいの、ここしか空いてなかったんだから。反対側は客室だし、もうあなたの荷物を運んじゃってるし、ね」

「えと、はい、わかりました」


 うちの屋敷は、左右にほぼ対称形でウィングが伸びるつくりだが、2階は領主家族用とゲスト用のふたつのラウンジをセンターに、向かって右側のウィングが客室エリア、左側ウィングが領主家族用のエリアになっている。

 エステルちゃんの新しい部屋は、その家族用エリアの中の1室だった。

 王都屋敷の部屋よりは狭いけど、この屋敷では俺の部屋と同じぐらいの広さだから充分だよね。


「もう少ししたら夕ご飯だから、落ち着いたら食堂にね」


 母さんはひらひらと手を振って出て行った。



「あのあの、ザックさま。このお部屋でわたし、いいんでしょうか」

「母さんがそう言ってるから、いいんだよ。この屋敷の法律は母さんだし」

「それはそうですけど」

「いいっていいって。それより、荷物を片付けて食堂に行くよ。みんなにお土産も渡さなきゃだしね」

「はい、お土産出しますね」

「あ、クロウちゃんはここに寝床作るんだ」

「カァ」



 それから、「わたしは使用人食堂に」と言うエステルちゃんの手を引っ張って、家族用の食堂に連れて行った。

 今年の冬までは、長年に渡ってお世話係として配膳の手伝いをしていたので戸惑ってるけど、王都屋敷では一緒にテーブルを囲んでいたんだからさ。


「来たわね。エステルさんはそこよ。ザックの隣。さあお座りなさい」

「え? 奥さま、わたしは立ってお世話を」

「いいの、いいの。早く座って」


 エステルちゃんは、控えているウォルターさんとコーデリアさんの顔を恐る恐る見る。

 するとウォルターさんは大きく頷き、コーデリアさんは彼女に珍しく満面の笑顔を浮かべた。


「エステルちゃん、遠慮しなくていいのよ。あなたはそこね」

「ほらほら、エステルちゃん。あなたは王都屋敷でもザックの隣の席なんだから」

「あ、はい。ありがとうございます、ヴァニーさま、アビーさま」


「よし、揃ったな。では乾杯だ。ザック、アビー、エステルさん、クロウちゃんの無事の帰省を祝して、乾杯っ」

「カンパーイ」「カァ」



 再び王都の話題で盛り上がりながら、楽しく夕ご飯をいただく。

 食後には、王都のお土産を父さん母さんヴァニー姉さんに渡した。


「ぜんぶ、エステルちゃんが選んで用意してくれたんだよ」

「ザック、わたしには?」

「なんで、一緒に王都に行ってる姉ちゃんにお土産が。ある筈ないだろ」

「だよねー」

「じつはありますよ。はいどうぞ。わたしとお揃いですけど」

「えーっ、ありがとー。さすがはエステルちゃん、ザックとは違うわー」


 なんだかアクセサリーみたいなのを渡していた。そんなのも用意してたんだな。

 父さんも母さんもニコニコしてる。父さんはどちらかと言うと主に安心顔だけど。

 俺はなんとなく立っているウォルターさんの顔を見た。え、ウィンク?? 生まれて初めて見たんですけど、ウォルターさんのウィンクなんて。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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