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第18話 夏至祭事件報告会その後

 主要3ギルドの長を招いての報告会から1ヶ月余りが過ぎた。

 夏も終わり、急ぎ足で秋の気配がやってくる。


 俺の暮らす領主館には表の庭園の左右方向に果樹園があって、向かって右手の果樹園は裏手の方まで広がっている。

 その面積は領主館の敷地の半分近くを占めるほどで、特に夏の終わりから秋にかけて収穫できる果樹が多い。今は桃で、そのあと秋になれば栗、マルメロ、りんごにル・レクチェに似た洋梨など、種類もいろいろで楽しい。

 収穫時には、うちの10人ほどの侍女さんたちが総出だ。

 総指揮はアン母さんで、もちろん庭師のダレルさんが全体に目を配り、かつ誰よりも働いている。あと、アシスタントコックのトビーくんもこき使われているよ。

 姉さんたちも参加するし、今年からは俺もお手伝いだ。


 果実の収穫が始まると、お昼は果樹園の収穫エリアでみんなでランチを囲む。

 料理長のレジナルドさん謹製のピクニックランチが届けられ、トビーくんはアシスタントコックだから、この時もこき使われる。

 うちは男性の使用人さんが少ないから大変だよね。頑張れトビーくん。

 あと、クロウちゃんは式神のくせに、収穫したばかりの桃をこっそり食べようとするんじゃありません。あとでちゃんとあげるから。


 これらの果物は、うちで消費したりお菓子などに加工されたりするほかは、騎士団にお裾分けされたり、収穫量が多い時には商業ギルドを通じて、街のお店の店頭に領主館産として並ぶそうだ。値段は他で収穫されたものと変わらないようだよ。



 さて、この前こっそり盗み聞きした、夏至祭での魔人事件後の対策の件だけど、先日再び3ギルド長が招かれて、領内への公布の前に事前説明があった。

 このときも、センサー兼中継アンテナ・クロウちゃんを潜ませて内容を盗み聞きした。

 3ギルドのおっさん、じいさんたちは、具体策の検討の際にその都度個々に相談されていたらしく、特に内容に異議はないらしい。


 今回説明されたのは、グリフィン子爵領の騎士団と領兵の再編・整備計画だ。

 簡単にまとめると、これまでその都度運用されていた騎士団と領兵の指揮系統や部隊編成を再整理し、近い将来に予想される何らかの動乱に、出来る限り対応できるようにするというもの。

 具体的には、領兵を20名の小隊を最小単位として、6個小隊で1中隊、合計3個中隊をもって領兵大隊を編成するという計画だ。総兵数は、全18小隊360名。


 また騎士団は、4人の騎士、2人の従騎士、12人の従士をもって騎士小隊とし、これを5個編成する。騎士小隊の総人数は90名。

 この騎士団90名と領兵大隊360名の合計450名が、グリフィン子爵領の基本的な兵力となる。

 つまり騎士団と領兵大隊による連隊というわけで、騎士団長のクレイグさんが領兵大隊長も兼任し、指揮系統を一本化するというものだ。


 このほかに、領都グリフィニアには3小隊計60名の領都警備兵部隊があって、これは警察部隊ということだね。領都警備兵部隊のトップは騎士団副団長のネイサンさんだ。



 ここで、俺が今のところ理解しているこの世界の騎士や騎士団について、いちおう整理しておくか。

 グリフィン子爵領の騎士のトップはもちろんクレイグさんだね。

 クレイグさんは騎士だけど準男爵の爵位を持っていて、正式にはクレイグ・ベネット準男爵というんだよ。

 グリフィン子爵家は準男爵位の権利を2つ持っているから、そのうちのひとり。もうひとりは、まぁまた紹介する機会があるでしょ。話が逸れるしね。


 そしてクレイグさんの下に、副騎士団長のネイサンさん以下21人の騎士がいて、この人たちがわが領における騎士爵位持ちの人というわけだ。

 準男爵と騎士爵の家は、子爵領内に村単位の領地を与えられ任されている。


 騎士の下にいるのが従騎士エスクワイア。14、5歳ぐらいから20代初めの年齢で現在12名が在籍の若者たちだ。

 彼らは騎士になることを目指して戦う若き戦士で、実力や功績が認められると騎士に叙任される可能性があるが、なかなか狭き門だよね。だから一般出身者もいるけど、騎士爵家の息子さんや娘さんもいる。

 そう、この世界では女子でも騎士になれるんだよ。


 その下の従士は、本来は騎士爵家の家人や使用人が主だったけど、どの家にも属さない腕の立つ戦士が志願して従士としてけっこう就職していたりする。

 年長の従士は若い従騎士より遥かに経験や実績があって、ベテラン下士官、鬼軍曹といった感じなのだそうだ。

 この従士にも、もちろん女性がいるよ。


 あと、今回編成の騎士小隊には属さないけど、騎士見習いの子たちが現在8人ほどいる。

 騎士見習いはいわゆる小姓ペイジだね。この世界では8歳から12、3歳くらい。

 ただし、前いた世界の小姓と違うのは、主君である子爵や子爵家に直接仕えて働くのではなく、騎士団に所属して雑用をこなしながら勉学と訓練にも励み、騎士を目指しているということだ。



 今回のグリフィン子爵領の兵制整備の主眼は、精鋭兵部隊の騎士団と常備兵の領兵部隊を系統化すると共に訓練を強化し、小規模でもより強い軍団を作るというものなのだそうだ。

 あと、アン母さんも検討に加わって力を入れたのが、魔法の使える兵を各小隊に数人ずつ配属するというもの。

 それもできれば、その中に回復魔法が使える兵をなるべく入れたいとのこと。


 それから、グリフィン子爵領で忘れてはいけないのが、背後のアストラル大森林の奥からときどき彷徨い出て来る魔物への対応。

 これまでは騎士団が主に討伐にあたり、あとは冒険者ギルドに所属する冒険者が森に入ったときに始末していたが、行く行くは領兵も小隊単位で訓練がてらこれに充てるそうだ。

 この辺は、冒険者ギルドとの連携や調整も必要なので、ギルド長のジェラードさんも加わって引き続き検討するみたいだ。


 それから錬金術ギルドには傷薬や回復薬などの調達協力を、また商業ギルドには食料や資材の調達など兵站の支援をお願いしていた。


 説明が長くなっちゃったけど、今回盗み聞いた整備計画はこんな感じ。


 俺の前世では、数千人から万人規模の軍団がぶつかるいくさがいくらでもあったから、450名程度の常設軍が、今後起きるかも知れない動乱でどれほど機能するのかはわからない。

 でも小規模の子爵領だし、先んじてできる範囲で兵力を精鋭化しようとしている父さんたちの考えには、俺も賛成だよ。

 幼児が密かに賛成しても、役に立たないかもだけど。

お読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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