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第192話 光魔法

 それから何ごとも無く日にちが経過し、明日はまた2日休日という日の4時限目。中等魔法学の講義だ。

 受講生たちは短縮詠唱や無詠唱魔法の訓練を続け、中でもライくんとヴィオちゃんは、より難しい魔法の無詠唱発動に取組んでいる。


 ウィルフレッド先生は上達が進む受講生を教え、講義アドバイザーの俺は主に短縮詠唱から無詠唱へと移行する受講生を見ている。

 ただ、コツみたいなものは既に教わっているので、あとは実践あるのみだ。

 だから俺はわりとヒマなんだよね。



「むー」とか「うー」とか「ふぉー」とか、なんとか言葉を出さずに魔法発動を頑張っている子たちを眺めながら、俺は光魔法のことを考えていた。

 あれから図書館で、魔法に関する書籍を漁ってみたのだが、基本的なものとしてはライトの魔法、つまり灯明の魔法の光系統版だね。


 これは夜に部屋でこっそり発動させてみたら、直ぐに出来た。

 まあ前々世では、様ざまに発光するものに囲まれた生活をしていた訳だから、発動イメージはし易い。

 問題は、対アンデッドとして有効なものや、より強力なものだよね。


 ライトの魔法を強く照射させるパワーライトの魔法は簡単そうだけど、聖なる光、セイクリッドライトとか、それをより強力に照射するパワーセイクリッドライトとかは、どうも具体的なイメージが掴めないんだよな。

 聖なる光とか、じっさいに見たことないし。



「どうしたのザカリー君。なにか考えごと?」

「あ、すみません。ちょっとぼーっとしてました」


 今日も変わらず、なぜか手伝いと称して参加しているジュディス先生が、そんな俺に声をかけて来た。


「あの、先生は、光魔法って出来ますか?」

「光魔法ねえ。あれは難しいわ。四元素魔法の複合ではないしね」


 俺は思わず、隣に立ったジュディス先生にそう聞いてみた。

 そうなんだよね。アルさんの黒魔法や空間魔法、時間魔法もそうだけど、光魔法は四元素魔法を複合させたものではない。

 だが、黒、空間、時間が人族にはきわめて難しい魔法であるに対して、光魔法は決して不可能なものではない。ただ、出来る人が少ないだけだ。



「なになに、ザカリー君は光魔法に取組んでるの? もう出来るの?」

「えーと、ライトぐらいなら。はいっ」


 俺とジュディス先生の頭の斜め上に、音も無く光が灯った。

 火魔法系統の灯明の魔法と違って、同じく空中に浮いていても炎の揺らめきがない。

 また色も白色で、明るい光を発している。色味は調整出来るけどね。えーと、前々世のLED照明の昼光色とか昼白色的な?


「ほぉー。す、凄いわ」

「でも、今出来るのはライトの魔法ぐらいなんですよね。色の感じは変えられますが」


 俺は浮いているライトを、少し暖かみのある柔らかい色に変化させる。こっちの方が目に優しいですよ。


「そ、そんなこと出来るんだ。文献にあったかしら」

「でも、セイクリッドライトとかが分からないんですよね。先生は知ってます?」



「ふー。セイクリッドライトね。私も文献で読んだことがあるだけよ。実際に見たことはないわ。何でも、神様の恩寵や神意を授けられた人だけが使える魔法、とされているわよね」

「そうですよね」

「古代には、使える魔導師が結構いたらしいけど。現在はどうかしら。大陸のどこかにはいるかもだけど」


 やっぱり神様か、神に近い存在とかに教わらないとダメかな。

 今名前が挙がっているのは、金竜様か神獣フェンリルのルーさんか。

 知り合い的に言うとルーさんかな。でも、アラストル大森林に行かないと会えないよなー。


 ところで、なんだか背中の方向がモゾモゾする。

 今日はクリスティアン先生はいないので、これはウィルフレッド先生が後ろから近づいて来たんだな。



「ザカリー」

「あ、はい」

「お主、今のはライトの魔法じゃな。いつ使えるようになった」

「えーと、2日前、かな」


「2日前じゃとお。なぜ、わしに直ぐに報告せんのじゃ」

「え? 報告義務とか、あるんですか?」

「それは別に無いが、わしも知りたいじゃろが」

「はあ」


 言ってることの意味が分からないんだけど。


「ザカリー君は、セイクリッドライトなんかを目指してるらしいですよ」

「ほぉー、セイクリッドライトか。あれは神様の恩寵が必要な魔法と言われているが、そうか、セイクリッドライトとな」


 そこでウィルフレッド先生は言葉を切った。ああ、アンデッドのことが頭に浮かんだのだろうね。



 講義が終了し、魔法訓練場を出ようとすると、ウィルフレッド先生に呼び止められた。

 あー、さっきの光魔法のことかな。それともまた呼び出し?

 ライくんとヴィオちゃんの方を見ると、どうぞどうぞと手で合図をし、小さく手を振って訓練場を出て行った。


「このあと、ちょっと学院長室に一緒に行って貰えんかの」

「何かありましたか?」

「あった」


 まだ近くにジュディス先生と若干の受講生が残っているので、ウィルフレッド先生は具体的な言葉には出さなかった。

 地下洞窟とアンデッドの件だろうけどね。



 教授棟に行く道すがら、どうやって発動させたとか、発動させるには何が必要だとか、ライトの魔法のことを煩くウィルフレッド先生に聞かれたけど、適当曖昧に答えるしかないよね。

 前々世で照明とか毎日見ていたので、発光のイメージが記憶にしっかりありますから、とか言えないし。


 学院長室に入ると、今日はフィランダー先生も来ていてフルメンバーだ。


「あ、ザックくん、ウィルフレッド先生、いらっしゃい」

「ども、です」

「こやつ、ライトの魔法を発動しおった」

「えー、そうなの? 凄いけど、それって」


「セイクリッドライトを目指しておるそうじゃ」

「なんだ、そのセイクリッドライトてえのは」

「アンデッドを滅する、聖なる光じゃよ。じゃが、現状わが国で発動出来る者はおらんと思う」



「昨日、王宮から地下洞窟内を見てみたいと、急遽、人が学院にいらしてね。それで、先生方3人に付いて貰ったのよ」

「王宮騎士団の副騎士団長が、従騎士をひとり連れて来やがった。まあ俺の後輩だがよ」

「それで、わしとイラリ先生も付いて、5人であの岩の裂け目から入った訳じゃ」


 王宮騎士団の副騎士団長が、わざわざ来たんですね。

 地下洞窟の内部を見たいとね。それって、あっ。


「そしたらよ、始まりの広間に入れないじゃねえか」

「あれは、とてつもなく強力な魔法障壁じゃ。それが広間の入口に貼られていて、通れないどころか、魔法も剣も何も効かんかった」

「暫くいろいろ試してみましたが、私たちでは何も出来ませんでした。それで仕方なく諦めた訳ですが。ザカリー君は何かご存知ではないですか?」


「えーと、僕がですか? それは、どうしてかなー。不思議だなー」

「ザック、何か知ってやがるな」

「これは怪しいの」

「ご存知なら、話していただきたいのですが」



「ザックくん。あなたは先日、自分でも調べるって言ってたわよね。聞かない方がいいってことだから、あの時はあなたにお任せしようと思ったけど。でも、王宮騎士団のそれも副騎士団長が来ちゃって。この異変はどういうことですかって聞かれても、わたしたちも分かりませんって言うしかなかったのよ」


「でも、もしザックくんが何か知ってるのなら、わたしたちに少しでも教えてほしいの。お願いします」

「わしらからもどうか頼む。いや頼みますじゃ」

「学院を任されている以上、俺たちが何も知らないとかだとマズいんだ。頼む」


 オイリ学院長と3人の教授は、立ち上がって揃って頭を下げた。

 おいおい、先生方が1年生に頭を下げないでよ。困ったなぁ。



 高速で俺は考えを巡らす。大きなウソはつかないで、ある程度作って話をするしかないか。


「頭を上げてください。少しお話しますから座って」

「はい」


「これは言うまでもありませんが、絶対の秘密です。僕の許可が無い限り誰にも話してはいけません。いいですか? もし、許可無くここにいる4人以外の人に洩れていたら、そうですね、フレイムメテオの雨が学院に降ります」


「ひょーっ」

「フレイムメテオってなんだ?」

「黙っておれ。燃えた隕石が幾つも、天から落ちて来る魔法じゃそうじゃ」

「お、おまえ」



「それは冗談です。でもそのぐらい、僕も困ると言うことです」

「ふー」

「冗談でも、よしてくれ」


「では、お話しましょうか」


 そこで俺は大きく息を吸い込んだ。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公凄い性格悪いよね。流石にここまでかな。
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