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第170話 王都の冒険者ギルドからの依頼

 王都屋敷に訪ねて来た、ニックさんたちサンダーソードのメンバー。

 グリフィニアからわざわざこの王都まで、いったい何しに来たんだろうね。

 ニックさんは「それがですねぇ」と、おずおず話を始めた。


「王都の冒険者ギルドから、うちのギルド経由で依頼が来ましてね」

「へぇー、そうなんだ。良かったじゃない。でも、なんでグリフィニアの冒険者に?」

「それが、ちょっと特殊な討伐依頼でして」

「特殊な?」

「アンデッドなんで」


 アンデッドの討伐依頼か。そう言えば、ついこないだアンデッドの話を聞いたような。

 それにしても特殊なって、どういうことだろうね。



「王都の冒険者に出せない依頼ってこと?」

「どうやら、いくつか理由があるようなんですがね。まあ俺たちは、アラストル大森林での経験が豊富なんで、それがひとつ」

「まあ、そうだよね。王都周辺に危険な討伐案件が、普段からそれほどあるとも思えないし」

「そりゃ同じ冒険者といっても、この辺のやつらは闘いを含む仕事と言えば、商人の護衛なんかが主ですから。危険度で言えば、俺たちには敵いませんぜ」


 冒険者でひと括りにされるけど、採取系とか町中での仕事とかもある何でも屋さんだから、所属するギルドの場所によって危険度は随分と違うのだろう。

 その点では、領都がアラストル大森林に隣接していて、魔物や魔獣なんかも直ぐ近くにいるグリフィニアの冒険者は、対危険度ナンバーワンだよな。


「理由がいくつかって言ったけど、それ以外には?」

「じつは、それが今日、雁首揃えてザカリー様をお訪ねした理由でもあるんですよ」


 それまで黙っていたマリカさんが、そう口を開いた。



 あ、あらためてサンダーソードのメンバーを紹介すると、リーダーは人族の大男の大剣使いのニックさん。マリカさんは猫人族で、身のこなしが素早い斥候職の女性ね。

 あとは、狼犬人族の男性で珍しい細剣使い剣士のエスピノさん、人族の男性剣士のロブさんに、人族で魔法職の女性のセルマさんの5人だ。


「ふーん、つまり僕に何か相談があるってことかな」

「そ、そうです。そうなんですぜ」

「ニック、わたしが順を追って説明するわよ」

「お、おう。マリカにまかせた」


「えーとですね。王都の冒険者ギルド長から、うちのギルド長に依頼が来まして。それが、王都内でアンデッドを討伐する必要があるので、大森林で経験を積んだ腕利きのパーティを、王都に寄越してほしいというものだったそうです」

「なるほど」

「それで声が掛かったのが、ブルーストームとうちで」


 ブルーストームはグリフィニアのトップパーティで、一緒にアラストル大森林探索にも行ったよね。

 ブルーノさんが以前に所属していたパーティでもある。



「ブルーストームにはアウニさんがいますから、アンデッド対策もできますしね」

「そうか、エルフさんで長い経験があるアウニさんがいれば、心強いよね」

「そうなんですよ。でもブルーストームには、かなり前から入っていた他領からの護衛仕事の予約がありまして。なんでも、以前にとてもお世話になった相手ということで、結局そっちのキャンセルができなかったんだとか」


「それで、サンダーソードだけが王都に来たってこと?」

「そうなりまして。で、うちとしては、アンデッド討伐はほとんど経験がないし、人数も半分になっちゃうので、別のパーティを加えて貰えないかって、ギルド長に言ったんですがね。そしたら」

「そしたら?」


「ブルーストームの代りになるパーティがいないし、王都にザカリー様がいるから、頼れって」

「はあ」


 あのジェラードのおっさん、いくら俺が王都にいるからって、俺を頼れって無責任なこと言うよな。

 俺って、王立学院1年生なんですけど。入学したばかりなんですけど。



「でも、王都内での特殊なアンデッド討伐って、どんなの? 何か詳しい情報は聞いてるのかな」

「まだ王都のギルドに行ってないので、詳細は聞いてないんですが、なんでも城壁の内側にいるアンデッドなんだとか」


 さっきもふと頭に浮かんだけど、なんだかそんな話を最近聞いたよね。

 学院の敷地の地下に、アンデッドがいるとかなんとか。


「で、王都の城壁の内側には、ザカリー様も、エステルのあねさんも、それにブルーノさんとレイヴンの方々がいるじゃないですか。と言う訳で、是非お助けを」

「はあ」


 何が、と言う訳でか、ぜんぜん分からないんだけど。

 ただ、どうしていいかの策も持たされず、俺を縋ってこの屋敷を訪ねて来たのは分かった。

 我が家の領地の冒険者パーティだから、無碍にする訳にはいかないよなぁ。



「王都に来たんでやすか、御無沙汰でやすな」

「あ、ブルーノさん。お久しぶりです」


 ちょうどその時、ブルーノさんたちレイヴンのメンバーがやって来た。

 ニックさん、マリカさんをはじめサンダーソードの全員が、元トップ冒険者の大ベテランのブルーノさんの顔を見て、ようやくほっとしたようだ。


「どうして王都に来たんでやすか? まさか、ザカリー様を慕って、グリフィニアのギルドを辞めて来たとか」

「いえいえいえ。そういう話も暫く、冒険者連中の話題になってたのは事実ですけど。いや、じつはですねぇ」


 マリカさんがもういちど、さっき聞いた話を皆に説明した。

 ギルド長のジェラードさんが、俺を頼れって言ったという話のところで、ブルーノさんはニヤリとしたけどね。



「なるほどねぇ。経緯は分かりやした。ザカリー様、ニックたちの力になってやっては貰えやせんかね」

「うん、そうだなー。ほかの領地の冒険者ならいざ知らず、うちの身内だからねー。もちろん力になるよ」

「ありがとうございます」「さすが、ザカリー様だ」「勇気を出して来た甲斐があったぜ」


 はいはい、そこで立ち上がって一斉に頭なんか下げなくていいからね。

 お紅茶をいれて運んで来たエディットちゃんが怖がるからね。女性メンバーはともかくとして、あなたたち、見た目が既に怖いんだから。



「でも、もう少し詳しい状況が分からないと、なんとも言えないよなー」

「ニックたちは、まだ王都のギルドに行ってないんでやすか?」

「まずはザカリー様と思って」


「ねえ、ブルーノさん。この人たちと一緒にギルドに行って、説明を聞いてやって貰えない?」

「あー、そうでやすね。そうしましょうか。その方が事情が分かりやすな」

「ブルーノさん、そうしてくれるの? 心強いわ。恩に着るよ。ねえニック、みんな」

「お、おう。助かる」「ありがとうございます」「すみません、ブルーノさん」


 だからそこで、いちいち立ち上がって一斉に頭なんか下げなくていいからね。

 サンダーソードと初対面のオネルさんやティモさんが、吃驚して見てるからさ。



 それから、急遽ブルーノさんが冒険者の面々を引き連れて、冒険者ギルドに行くことになった。

 王都の各ギルドは、外リングと内リングの間の広い市街地の各所に点在してあるらしい。

 一流の冒険者として長い経験を持つブルーノさんは、この王都の冒険者ギルドにも行ったことがあるそうだ。


 俺もちょっと興味があったので一緒に行ってみたかったのだが、「ダメですよ」とエステルちゃんから先に釘を刺されてしまいました。

「子爵家のご長男なのですからね」ですって。

 学院内とかでは自由なんだけど、グリフィニアと違って内リングの外はダメみたいだよね。



「王都にアンデッドとか、いるんですかね」

「それがさ、ついこの間、ライからこんな話を聞いたんだよ」


 ブルーノさんとニックさんたちが出掛けて行った後、エステルちゃんが聞いて来たので、学院の敷地の地下からアンデッドが湧き出るという噂話を話した。


「ほう、地下洞窟があって、彷徨い出て来るアンデッド掃除ですか。面白いですな」

「王都のど真ん中の学院の地下に、迷宮とかあったら面白いわ。ロマンよねー」

「アンデッドて、斬れば倒せるんですかね」

「それは倒せるんじゃないか。あとは燃やすか埋めるか」

「埋めても、また出て来るんじゃないー。手を伸ばしたりなんかして」

「斬って、燃やして、埋めればいいんですよ」


 うちのお姉さん方は、斬って燃やして埋める気満々ですよね。

 確かにライナさんが言うように、この王都のど真ん中の地下に迷宮とかあったら、ロマンかどうかは兎も角、興味は惹かれるよな。



「あ、ザックさま、ご自分でアンデッドとか討伐する気になってませんか? そんなに眼を輝かせてもダメですよ」

「えー、眼が輝いてたかなー」


 えーと、みんなで俺の眼に注目するのは、止めて貰えませんかね。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

よろしかったら、この物語にお付き合いいただき、応援してやってください。

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